15、 けんか
クワンチャイのおしえてくれた道を行くと、すんなり水桶の中庭に出ることができた。
来たときのように、水桶の上の枝からこぼれた赤と白の花が、水桶の水面をうめつくしていた。
ピウラがそうじするはずの場所だ。クワンチャイのことばを思い出し、ぼくは水にうかんでいる花をかんたんに拾い集めて、桶のすみにおいた。そうしても何の意味もないだろうけど、そんなことよりも早く帰らなければいけないのだろうけど、そうせずにはいられなかった。
それから、いそいでぬけ道をひき返した。
宮殿にもどって、倉庫のあたりをさがしたが、ピウラのすがたはなかった。
その近くをさがし回ったけれど、どこにもピウラはいない。まさか、ピウラの名前をよぶわけにもいかないし、ましてや女の子の服を着たぼくのすがたを、宮殿の人に見つかってはこまる。
必死になって倉庫のまわりを歩き回っていたとき、ピウラが倉庫のかげから、ゆっくりこちらに向かって来るのが見えた。
ぼくはあわてて、ピウラにかけよった。
「ピウラ! ごめんね。やくそくの時間はとっくにすぎてしまった」
しかし、ピウラはまったく気にしていないようすで言った。
「ああ、もうそんな時間だったのね。わたしのほうこそ、すっかりわすれちゃってたわ。
今ね、オマの家に行っていたの。わたしがこんなかっこうでうろうろしていたから、オマがしんぱいしてくれてね。いろいろ理由があってユタと服をこうかんしていると言ったら、オマが家によんでくれたのよ。
オマの家族はみんないい人で、楽しかったわ。それにユタ、オマの兄さんはね……」
ぼくのしんぱいなどまったく知らないふうに楽しそうに話すピウラに、ぼくはだんだんはらが立ってきた。そのうえ、ぼくが行くことのできないなかよしの友だちの家で、楽しく遊んできたなんて。
ぼくはつい、ピウラにどなってしまった。
「ひどいよ! ぼくはわるいと思ってひっしになって帰ってきたのに!
せっかくアクリャワシに行ったのに、おかあさまらしい人には会えなかったし。大神官さまのお説教の時間に間に合わなくて、ピウラがしかられてしまったらどうしようと、気が気じゃなかったんだぞ!」
すると、ピウラの顔色がみるみるうちに変わっていくのがわかった。
「あんた、なんで大神官さまのお説教の時間だなんて知ってるの?」
ぼくははっとして口をおさえたが、もうおそかった。しかたなく、クワンチャイに見つかって友だちになったことを正直に話した。
「でも、クワンチャイはだれにも言わないよ。ピウラのことも、ママコーナにはうまくごまかしてくれたんだ」
しかし、ピウラはけわしい顔のまま、言った。
「そういうことじゃないのよ! ぜったい見つからないってやくそくしたじゃないの! もうあんたのことなんか知らないわ! さっさと服を返してちょうだい!」
ピウラはぼくの服を乱暴にぬぎ捨てた。
そしてぼくがあわててぬいだ服を取り上げて、がばっと上からかぶると、頭にまいたロープと三つあみはそのままのかっこうで、ぬけ道へと走り去ってしまった。
ぼくはピウラののこした服をこそこそと拾って着たが、何かとてもさびしい気持ちになってそのまま地面にしゃがみこみ、しばらくぼんやりと夕やけの空をながめていた。




