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If start story (イフ・スタート・ストーリー) ~ボッチな問題児は異世界で大暴れするようですよ?~  作者: 過ち凪
短編章 「VS hero story」~俺と雷神の承認試験~
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閑話 夢は夢のまま

トオルは地面に着地した瞬間、直ぐにユウトの方を向いた。


やれるかどうかは分からない。


なんせ、始めてやることだからだ…。


「(磁力場を形成!出力は全快!)」


電気を操る能力の応用で、磁力を操るトオルは、今までに無い規模で全力を出し始める。


細かい設定など決めずに乱雑に力強く。


崩壊した学校の瓦礫から鉄が浮かび上がり、トオルの目の前に、時に並び、時に集合して、一つの物を造り上げる。


磁力によって規則正しく並んだそれは、銃口の用な形を造り上げていた。


発射口はドでかくそれには一つの弾丸がセットされている。


これら全てが鉄の塊で造り上げられている。


磁力を操り、そこまでのことを為し遂げる力など、本来のトオルの力の限界を大きく上回っている。


その力はいったいどこから沸き上がるのか…。


見るとユウトも自信満々の表情で準備満タンといった様子だった。


それならば、遠慮無く行かせて貰おう。


手元にミョルニルを引き寄せ、両手で持つ。


それを肩に担ぐようにして、振りかぶり構えるトオル。


「サンダーセット……」


そのまま、ミョルニルと自身に最大出力の電気を流す。


そして……、


ハンマーが振るわれた。


野球の打者のバットスイングを彷彿させるようなフォーム。


そのハンマーは狙い違わずに銃口内の弾丸へと向けられている。


「これが、俺の…全力だぁああ!」


 そのまま……衝突。


 激しい爆音と轟音が鳴り響き、トオルは3つのことを同時に為し遂げる…。


 一つ目は、ミョルニルによる重量操作で弾丸の重さを変化させること。


 二つ目は、ミョルニルに込められた雷を全て弾丸につぎ込むこと。


 三つ目は…、銃口の磁力を瞬時に切り替えながら、リニアモーターの様に、『レールガン(・・・・・)』の様に、弾丸を打ち出すこと…。


 直後、オレンジ色に空気が焼けて、弾丸が音速を越えて発射される…。


 閃光、爆発、轟音、色々な物を全て混ぜた事象が同時に起こり、そのレールガンは空気を焼ききり…、


 そんな中トオルは笑っていた…。






 プールにたどり着いた、ユウトは着地が上手くいかずにプールの中にダイブしかけたが、直ぐに飛び出す。


 頭には水を被り、何時もの癖毛の髪型が無理やり飛び出たことにより、オールバックとなってしまったが、相も変わらず天辺のアホ毛は存在を主張し続ける。


 ユウトはそのままその右手に『相反する酷薄刀』(ライトニングイレイザー)を造り上げる。


 そのまま、背中に蒼の薄い妖精のような翼を展開して、水の中に先を浸し始めるユウト。


 おこなっているのは急速な水の電気分解。


 これからの過程で必要となるからだ。


 ユウトは『相反する酷薄刀ライトニングイレイザー』を上段に構えて意識を集中させる。


 全出力を込める為に…。


 剣は力を込める毎に、存在感と力強さを増していく。


 ユウトがやろうとしていることは、白の翼『翼雷兎よくらいう』と同じ様に『相反する酷薄刀ライトニングイレイザー』をバッテリーとすることだ。


 その後、羽を放った時のように溜めた力を一気にトオルに向かって放出させる為に。


 力を振り絞り完成した、『相反する酷薄刀ライトニングイレイザー』はバチバチと空気を燃やしていた…。


 その力は絶大。


 いける…。


 そう、ユウトが確信できるほどに…。


 見るとトオルは準備万端そうな態度でこちらを挑発するように笑っていた。


 ならば、その誘い乗らねばなかろうて…。


 ユウトは上に構えた剣を降り下ろす。


 同時に、一気に全ての力をトオルに向かって解放した。


「『雷覇消失イレイザーブラスト!』」


 光も音も消え去るような威力の黒と白の力の氾流が大地を削り取る。


 だが、まだ、足りない、後、もう一段階…。


 放出の余波で火花が飛び散り、後方の電気分解によって出来た、水素と酸素が背後で派手に爆発しようとする。


 その爆発する瞬間、その力を、爆発力をユウトは…。


 自身のもう一つの力…。


 共有する力を使い…、


 無理やり黒と白の雷の力の濁流に混ぜ混んだ。


「『威力共有バーストリンク!』」


 直後、スピードと破壊力を大幅に増して、増長、轟音をたて、全てを葬ろうとする光。


「『(抹殺雷共覇イレイザーエクスプロージョン』!!」


白と黒と青と赤。


四つの色がお互いを食い合いながら、我先にと前へ破壊をもたらしながら進んでいく。


その光景を目の当たりにして、ユウトは満足そうに笑った…。






「はぁああああああ!」「おらぁあああああ!」


激しくぶつかり合い、互いの存在を主張する、トオルのレールガンとユウトの光線。


既にトオルのレールガンの媒体となった金属は消滅してしまったが威力も雷も衰えること無く、そこに存在している。


ユウトの光線は、色が代わる代わる入れ替わり、様々な存在主張で壊すだけではなく、周りをみせる花火のように光っていた。


両者の威力は拮抗している…。


ぶつかり合った部分は、お互いがお互いを押しては引いてを繰り返し、どちらも一歩も引く気は無いらしい。


中心部の地面は砕け、散り、あるいは熱によって溶けてしまっている。


いや、中心部だけでは無い。


辺り一面が災害が通った後のように荒れ果て、崩壊して、更に被害を拡大させ続けているのだ。


最早、ここには、学校であった面影など、残ってはいなかった。


しかし、どんなに激しい嵐もいつかは過ぎ去るもの…。


次第に次第に、常人の分からない範囲で威力は落ちていく。


だが、それを双方は…、トオルとユウトは…許さない。


「「第二波ぁああああ!」」


そう叫びながら、トオルは先程銃口だったものを磁力を操り潰し、弾丸へと昇格させ、もう一度ミョルニルの準備を…、


ユウトは次に放つために、バッテリーとなる翼を『翼雷兎よくらいう』今度は右は黒の雷、左は白の雷で形成していく…。


トオルは二発目を放つことで、ユウトはバッテリーの役割をする翼の力を剣に込めることで…次がある。


一発目よりは威力の劣るものの互いに勝負を決めるための第二波の準備は万端。


後は、双方ぶちかますだけとなった。


 その時、物語は第三者の登場を許してしまう。


 かつて別の世界……、シャルローラで雷神と呼ばれた者の仕掛けた罠。


 雷を司る者達の中の頂点に君臨する3つの派閥の会議に彼はいなかったが、彼によって手引きされた主人公。


 三つ目の派閥の一人によって、手引きされた、英雄。


そして、黒石優斗の親友。


「イエェイ!!空気を読まずにじじゃじゃじゃん!ショウタさんの登場だ!」



八橋ショウタがそこに居た。


 その台詞と共に、ユウトとトオルの渾身の攻撃は…。


 突如、全て跡形も無くかき消され凍結されたのだった。







「「…………………」」


 直後、二人は硬直していた…。


 あの威力のあの全力の一撃が、かき消されたこと、凍らされたこと、に関してもそうだが…、それよりも驚いたのは…。


 その人物が二人共の知っている顔だったことだ…。


「あれ?驚き過ぎて声も出ない感じ?いやぁ…、まぁ…常識的に考えたら…、有り得ないんだろうけど…、ほら?常識の範疇におさまる範囲の問題じゃくない?この場合はさ~?」


 ペラペラとまくし立てながら、喋るショウタ。


 その存在感と威圧感は並みのものを圧倒する。


「何で…」


 その人物に先に声をかけたのはトオルだった。


「お前がここにいるんだよ!八橋!」


「ん~、強いて言うなら、ここが夢の中だから?早い話が…ここは俺の作り上げた世界なんだよ~」


 その台詞は案にこいつが黒幕だと言うことをバラす台詞だったが…今の二人には関係ない…。


 そんなことよりも、聞くべき事、聞きたいことがあるからだ…。


八橋 ショウタ。


二人の共通の知り合い。


そして、物語の主人公。


「……お前は…」


「ん!どうした?ユウトっち?」


「お前は!!誰なんだよ!!」


「いや、さっき説明した通りショウタさんだよ~?」


 ユウトのセリフにあくまでも自分はショウタだと説明する。


 だが、そんなことはあり得ない。


「あり得ないことをあり得る様にする…例外的にね~、それが黒石さんのポリシーじゃなかったんだっけ?なら、俺もいけるでしょ!」


 ショウタはお気楽な口調で、そう喋るが…、ユウトとトオルの危険アラートは最高潮である…。


 それほどまでにこいつはヤバイのだ…。


ショウタであって、彼はショウタではない。


姿形は互いの知る者のそれ、だが、ショウタはここまで危険なオーラなど纏わない。


 そして、二人は…。


「トオル…」「ユウト…」


 敵だった過去を水に捨て、声を揃えてお互いを呼び会う二人。


「「殺るぞ…!」」


 その掛け声を合図にそれぞれの雷を出そうとして…。


「『能力打消アンチシックス』」


 パチンっ、と軽い指パッチンの音と共にそれは消えた…。


「嘘だろ………」


 慌てたトオルはもう一度、雷を放とうとするが、それもまた消される…。


「無駄だって、さっきの必殺技を消せたのもこれのお陰の面があるんだよ~『能力打消アンチシックス』効果は自身が確認している能力を全て打ち消すこと…。これで、能力を消して、氷で被害を氷結。弱点は、自分や仲間もその対象になることかな~。」


 余裕綽々でそんな解説をしてくるショウタ…。


「異能無効化スキル…」


 ユウトは思わず呟くが、それまでだった…。


「じゃあ、ユウト♪」


 ニコリと笑いながら、ユウトの方を向くショウタ。


「ごめんけど、この夢は君の中で無かったことになるから…。」


 しかし、告げられた言葉は残酷。


 そのまま、次の瞬間、ユウトは頭をがっしりと片手で押さえられていた。


 そして、ユウトは失うことになる…。


「『初期能力スペックダウン値』指定は夢の始まりまで…」


 命がけでつんだ経験を。


「『記憶欠落メモリーズオフ』夢の中記憶を全て封印する……」


 トオルと出会った、ここでの記憶を…。


「バイバイ…。ごめんね…。『氷結ロック』…」


ここで培った、その全てを失った…。

 そのまま、ユウトは倒れ伏す…。


「さぁて、トオル君……第二ラウンドと行こうか」


 そして、トオルの方へと向き直り…。


「待てよ…」


 聞くはずの無い声を聞いた…。


「まだ…、意識が残って…」


 驚くショウタ。


「…お前多重スキル持ちだろ……。ようやく理解した…、お前が何でここにいて、何でこんなことをするのか……」


「……………………」


 ショウタの姿をした何かは黙りこむ…。


「ようするにあれだろ?僕はトオルには勝てないんだろ…?トオルが全力を隠してることは薄々気付いた」


「気付いていたのか……」


トオルは優斗に見せてない奥の手があることを見抜かれたことに驚く。


だが、優斗はそれよりもショウタに語りかける。


「僕は主人公には…勝てないんだろう?いや…僕もお前もか……偽物だから」


「……………………」


 それに対して、ユウトは一方的に話続けた…。


「でも、止めた…。勿論、僕は負けたとしても、所詮、夢…、止める理由なんてない……」


「……………………」


 何も言わないしょうた、そんな中最後にユウトは…


「でも…負けてほしくなかったんだろ……そこだけは…感謝しといてやる……」


だから、相打ちにしたと。そう告げる。


「トオル後は任せた!」


 ユウトはそう言って意識を完全に手放した…。






「参ったなぁ…ははっ…、まさか、あいつに教えられるとわね…」


「しかも、偽物ってあっさりばれたし、やっぱり口調かねぇ」


 ユウトが完全に倒れた後、ショウタは一人呟いていた…。


「あいつは、ここで得たもの全てを持ち帰れないって言うのに…」


「しかもここでのことを忘れさせた直後にあんなこと言えるのかよ…良くも悪くも例外過ぎるぜ…」


「仕方ねぇな…頼むぜ…『残留思念ハートハード』……」


「今は、無理だけど…いつか思い出せるよ…きっと…、だから、今は思いだけで我慢しとけ…」


「さぁて、トオル君……、もう、偽物だってバレてるんだろうけど、お待たせ…第二ラウンドといこうか…。ここからが君の本当の雷神昇格試験だ」






「うっ………ね、眠い…」


 目を開けると、そこはベッドの上だった…。


 当たり前だ…。僕は寝てたんだから…。


 時計を見ると、調度真夜中だった…。


 夜更かいしさんである…。


 ふと、起きた時、特有の不思議な感覚に襲われる…。


「むぅ……、何かだか夢を見たような……見てないような…」


 何かを忘れている気がするんだよな…。


「あら?起きたの?ユウちゃん…?」


「……いや…、何、普通に俺のベッドに潜り込んでらっしゃるよ…マリ姉…」


 まぁ、そんなことはマリ姉のせいで吹き飛んでしまったけれど…。


「大丈夫よ…ヒマリちゃんも、ちゃんといるから…」


「いや、全然大問題なんだけど……」


 見ると、本当にヒマリちゃんが、隣で寝ていた…。


 相も変わらず、幸せそうである…。


 食べちゃいたいくらいだにゃ~。


 いや、まぁ、後ろのマリ姉の目が死んでるからやらないけれど…。


「それにしてもユウちゃん…。いい夢でも見たの…?」


「ふぇ?何故によ?マリ姉?」


 突如、話題を変えるマリ姉。


「だって、ユウちゃんが落ち込んでないんだもの…」


 そして、その顔は聖母の慈悲に溢れていた…。


「そんなに酷かったの…?」


「ええ…。思わず、調教して全てを忘れさせてあげたいくらいに…」


「それで、幸せになれるわけないよね!?」


 マリ姉はいつものサディスティクな笑みをしながら、最後に一言。


「もう、心配かけないでよね…約束よ…」


 そう言って…、


「勇気のお・ま・じ・な・い」


 俺の右ほっぺにキスをした…。


 …………………。


 その後、俺は真っ赤になった顔を隠すように反対を向いて寝ようとして…。


「ユ・ウ・ト…さん?」


「あ…ら…ヒマリサン?起きていらっしゃったのことよ?」


 反対側にいた天使の悪夢の笑顔をみることになったのだった…。


 響く断末魔の中で、ふと、気付く…。


 いつもの日常に戻っていると…。


 あぁ…、どうやら、いつの間にか、僕はへこんでいた状態から回復したらしい…。


 あの吸血鬼ちゃんとの因縁を忘れた訳じゃない…。


 寧ろ、鮮明に残っている…。


 ただ、次の機会にあの子を救うことを決めただけだ…。


その勇気を誰かから受け取った。


 何てことは無い。


 いつも道理にやるだけなのだ…。




   こうして、黒石ユウトの忘れられた記憶の物語は幕を閉じた

重大発表、その3

新作が始まります。

最後の発表は次回。

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