閑話
響く爆音。
勿論、この程度でトオルは倒れない。
ユウトは止めとばかりに翼を展開する。
『翼雷兎』
白の雷で形成されたそれの効果は、言わば電池パック。
普段は一度手に溜めてから放つ電気を、既に形成している羽をに貯めておくことにより、タイムラグ無しで放つ事が出来るという物だが、使い方がもう一つ存在する。
それは、先程の起爆の際に使った時のように、羽を飛ばすこと。
それ一つ一つが威力を持つ羽を相手に振りかざす事が出来ることだ。
そして今は
「フルバースト!」
合計が百枚を越す羽をトオルがいるであろう地点に一気に放った。
様々な起動を描きながら、レーザーの様に飛んでいく翼。
そのタイミングとほぼ同時にトオルは爆発の煙から、飛び出してきた。
そのことに若干驚きつつも冷静に対処しようとするユウトをトオルは更に驚かせる。
何とトオルが二人居たのだ!
「(えぇええ!?)」
これには流石に混乱の色を隠せないユウト。
「(どっちが、本物だよ!)」
近付いてくる二人?に大量の破壊の翼こそ向かっているが、念のため確実に本物を見分けなければならない。
じゃないと何が起こるか分からない…。
こう言うときは、二人の違いを見分けるというセオリーに習って行動しようとして気付く。
「違う!こいつら、どっちも!」
二人ともに一切の外傷が無いことに…。
あの爆発に巻き込まれてそれは無い…。
ならば、双方ともに偽物…。
それに気づいたと共に翼にかきけされる偽物…。
ユウトは本物を捜そうとして、
「こっちだ!」
声に反応した。
見ると磁力を操り地面に刺さった鉄筋コンクリートへと近づくトオルが右手に雷を溜めて、こちらへと放とうとする寸前だった。
呼応するようにユウトも瞬時に右手に白の雷を溜める。
次の瞬間…。
「「くらいやがれぇえええ!!!」」
二人は同時に雷を放った。
激しい轟音
交差することなく二つの雷がお互いに飛んでいきユウトは勝ちを確信する。
双方とも、双方の攻撃をかわすことは不可能。
しかし、自分は雷を跳ね返す技を持っている。
何割かくらってしまうことになるが、トオルは白の雷を全てくらってしまう。
もし生き残っても、ダメージをくらい、弱ったトオルに止めを指す猶予はこちらには存分にあるのだ…。
そんな思考をしている間にも、トオルの雷が目の前に迫る。
それは、今までのどの技よりも威力が高いことに気付き、心の中でトオルを称賛するユウト。
だが、それを心に留め、ユウトはそれを跳ね返すことを諦め、受け流す為に、技を発動させる。
雷を曲げる技を…。
「「反鏡雷反!」」
トオルと共に…。
「(!!??)」
最早、驚き過ぎて言葉にならない…。
トオルに当たる寸前で、ユウトの白い雷は方向を90度変えて、こちら側に向かってくる。
トオルは、一度見たユウトの雷を跳ね返す技を、ユウトの放った白の雷に対して、再現して見せたのだ。
直後、進行方向を変えて、
ユウトに右に受け流されたトオルの雷は、ユウトの後ろの校舎に向かい、
トオルに向かったユウトの白い雷は、狙いが外れてこれまた校舎に向かった。
直後、校舎が崩壊して瓦礫とかすような音が聞こえた気がするが気にしては敗けだろう。
「はっ、反則だろ!」
思わず叫んでしまうユウト。
「いや、お前が言うな!」
トオルの反論はその通りだとしか、言いようがないだろうが…。
「とりあえず、出来そうだったから技と名前、真似してみただけだけど…なにか?」
トオルは顔をドヤッとさせながら、そんなことを言う。
うっざぁ…、とか、ユウトは思うが口にせず、代わりに出てきたのは…。
「くっ、はっはっ!あはははっ!……何だよっ。それぇ」
笑い声だった…。
何だか、分からないが、可笑しくって、可笑しくって堪らない…。
ついさっきまで殺しあってた奴とこんな軽口を叩くのが楽しくって仕方無い…。
お互いに疲れた顔をしているが、全てをまだ燃やしてはおらず、やる気もまだ残っているのだ…。
思わず口に出してしまう。
「楽しいじゃねぇか!こんちくしょう!」
この戦いを肯定する言葉を…。
「そうかぁっ~?」
ユウトの言葉に、そう返事するトオルも、今までとは違うこの戦いを、胸がワクワクするこの戦いを楽しんでいるのかも知れない…。
そう思うと、ユウトはいてもたっても要られなくなった…。
「お互いにずたぼろ…」
突如、語り出すユウト。
「手札はもう全て見せた…」
それに何かを感じたのか、トオルは台詞を続ける。
「絶体絶命…」
「だけど、負けたくない…」
「こう言うときは!」
「あれっきゃない!」
二人はニヤリと笑い、
「「必殺技だろっ!」」
そして同時に叫んだ。
次の瞬間、ユウトはトオルに、トオルはユウトの方向に飛び出す。
トオルは己の肉体を電気操作で操り強化。
ユウトは足元の空気中の水分を電気分解し、爆発させつつ、黒の雷を後方に円状に展開して、爆発を受け止めつつ、その推進力を利用する。
自助に近付くが、双方は交差することなく、お互いがお互いを目で見送る。
そのまま、何のアクションも無しに互いに目的の場所を見定める。
トオルは崩れた学校。
そして、ユウトは屋外のプールだった。
そのまま、双方は互いの能力で、やや雑に着地した。
微妙なところで止まったので明日投稿します。