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第五十三物語 「」

すごく短いです。

「ガァっ!?」


戻った。


戻った。


もどった?


本当に?


「ここは……?」


そこはもう使われて無い廃屋だった。


確か吸血鬼ちゃんと戦って、俺は勝ったのか?


いや、状況的に見て逃げ切りだろう。


「また、勝てなかったのか……」


別に悔しいわけじゃない。


負けることには慣れている。


だが、あんなギリギリのやり方だったら、失敗したかも知れない。


「やっぱり、無理矢理にでも吸血鬼になってれば、安全だったかな?」


ヒマリちゃんの好意を無にする様で、気がひけるが、そちらのやり方の方が慣れている。


今度同じ場面に遭遇したとして、果たして俺は誰かを救うことが出来るのだろうか?


「考えても、しゃあないか……」


そう思い、辺りを見渡す。


いや、と言うか見渡すまでもないから、黙ってたんだけど。


目の前に気絶したヒマリちゃんがいる。


目の前というか、俺の上にのしかかっているのだが。


いや、まぁ、襲ったて来たまま、気絶したからしょうがないんだけどね?


なんて、気恥ずかしさを誤魔化す様に思考して、ため息をつき、前を向く。


今は現状把握が先決だ。


襲われた時ヒマリちゃんの体は死人の様に冷たかったが、今は、暖かみを取り戻している。


失われていた、血色も元に戻っていき、段々と表情に赤みが付く。


ああ、良かった。


全部元通りだ。


これで、彼女は人間に戻る。


そう思うと何処かホッと安心した。


ゴクリと喉がなり、そう言えば喉が乾いたなんて、呑気にそんなことを考えていた。


気が緩んだからかな?


あ、そっか、ヒマリちゃんに噛まれたから、血が抜けてるんだ。


道理で水分が足りないわけだ。


辺りを見渡しても水は見当たらない。


あるのはヒマリちゃんだけ。


あれ?なんか、おかしいなぁ?


この小屋、こんなに赤かったっけ?


まるで、視界に赤みがかかったみたいだ。


まぁ、いいか。


それより、ヒマリちゃんだ。


ヒマリちゃんの呼吸をもう一度確認して、ちゃんと血が通っていることを確かめる。


うん、大丈夫。


頭を撫でても起きないけれど、可愛らしい寝顔で、眠っているだけだ。


仄かな臭いが鼻を擽る。


鉄分の混じった人の香りだ。


首筋に触れると、折れてしまいそうなほど柔らかで牙をたてたら、すんなり刺さってしまいそうだった。


あれ?なにかおかしくないか?


根本的になにかがおかしい気がして、考える。


口に手をあて、考える人のポーズ。


体が熱い気がするが客観性に欠けるしなぁ。


ふと、ふとだ。


口の中に手をいれてみると、そこには何かがあった。


なんだっけ?これ?


そうだ、牙だ。


そう気付いた。


瞬間。


バキッ!


俺は自身の右腕の骨を容赦なくへし折り、小屋を飛び出した。


そのまま小屋から駆け出す。


痛い、痛い、いたい?


だが、痛みは段々と薄れていく。


くそ、なんで気付かなかった。


今俺は吸血鬼になってしまっている。


後先考えない行動が遥かに裏目に出た。


ヒマリちゃんを救えたのに、このままじゃ、最悪の事態になる。


血を求める疼きが止まらない。


喉が渇いて死にそうだ。


くっそ、血が体で足りてないからだ。


つもりに積もった、考えなしがここに来てしっぺ返ししに来やがった。


とりあえず、崖から飛び降りれば、ヒマリちゃんに危害を加えることはないだろう。


まぁ、飛び降りても大丈夫だろうし、いけるよね?


一回、やってみたかったんだよね。


「せぇの!」


「ユウちゃん!」


「ほえ?」


懐かしい声を聞いた。


いや、あくまでも俺の体感だから、実際には1、2時間くらいかな?


兎に角、久しぶりにその声を聞いた気がしたのだ。


マリ姉の声を。


「あ、マリ姉タイム、それ以上近寄ると危ない」


俺を見つけた途端、瞬歩でも使っうように距離を詰められる。


相変わらず、すご怖いです、マリ姉様。


取り敢えず、俺の声を聞いて、マリ姉は止まってくれた。


良かった、あと、二歩くらい近付かれていたら、血を吸いたくなったのかも知れない。


今はそれだけでありがたいのにマリ姉は俺の様子と歯から生やした牙を見ただけで、ため息をつくまでしてくれた。


状況把握が早いのはありがたいけど、流石マリ姉と、さすまりを使わなければならないくらいのイベントをスルーしても良いのかどうか。


「あ、マリ姉、ヒマリちゃんはそっちの小屋にいるから」


「そのまま、飛び降りる気なの?」


「え?駄目かな?」


「はぁ、しょうがないわね。ユウちゃんは、後始末しておくから良いわよ」


「ありがと、マリ姉」


さて、ヒマリちゃんは大丈夫そうだし、この後は飛び降りて、人間に戻る方法を探すとするか。


そこそこ高い崖を見ながら、飛び降りようと下を見る。


うへぇ、高い。


そう思いながら、足を踏み出すと。


「駄目に決まってるでしょ……?」


「マリ、姉!?」


飛び降りる俺に気配を悟らせることなく、マリ姉は俺に抱きついたのだった。


やられた、と思ってももう遅い。


俺はマリ姉を道連れにして落下しはじめていた。





前回長かったので、区切りが見つからず、閑話回です。

次回も少し長くなるかもです。

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