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第五十物語 「back scene~そもそものために~」

いやぁ、前回の宣言はなんなんだってくらいに遅れました。


これから、都合で話が前後するので読みにくいかもしれません

 ~ヒマリ side~


夢を見てた気がする。


大好きな人に、また、助けられた夢を。


私は昨日、自分が何をしていたのかを良く覚えてない。


そして、ユウトさんやマリナさんは、その事を隠している。


また、私は迷惑をかけてしまったかもしれないみたいだ。


でも、一つだけわかることがある。


記憶があやふやだから、ハッキリとは言えないけれど、胸の中には誰かさんの温かさが残っている。


ふと、手探りでベッドの周囲に手を伸ばしてみる。


だけど、近くに欲しいものは無かった。


「(外に行っちゃったのかな?)」


でも、大丈夫。


ユウトさん達の温もりは、ここにある。


私がピンチの時にいつも駆け付けて来てくれる、優しい温もり。


そして、ラッセルやミカン達の優しさも。


ここにあるから、私は大丈夫。


私は1人じゃない。


「………………」


目を瞑って、私は、私に出来ることを探してみる。






俺の思考は過去へと、ヒマリちゃんが死人(ゾンビ)だった時へと、遡る。


ヒマリちゃんが吸血鬼へと変化し、意識を共有した、あの時、


そして、理想のヒマリちゃんが導いてくれた扉を潜り抜けた時まで。


そこには、先程までのお花畑とはうって変わって、何も無い空間が広がっていた。


あるのは、ゴツゴツとした荒い地面と中央の五メートル程のオブジェクトだけ。


他に見るものも無いままそのオブジェクトに、注意を向けると、それは大きな十字架だった。


紅く染まった十字架は、そこで、唯一の存在感を惜しみ無く見せつける。


そして、その、その中央には、俺の探す相手の姿があった。


「見付けた……ヒマリちゃん……」


ヒマリちゃんは、十字架に張り付けられ、その四肢の関節を枷に封じられている。


その乱暴な様子に、少し苛立ちを感じ、直ぐに解放しようと近付いていき、「ヒマリちゃん」と、声をかけた。


だが、返事はない。


どうやら、完全に意識が無いようだ。


心の中なのに意識が無いって言うのは、普通の状態から離れている気がする。


いや、死人(ゾンビ)化しているから、普通では無いのだけれど。


「ヒマリちゃ……っく!?」


もう一度、話し掛けようとした時だった。


「ここに入ってこれるとはな……」


俺の横から、獣のように、風のように、襲いかかって来た影を全力で避ける嵌めになったのは。


「居たのかよ……」


そこには、予想道理、吸血鬼ちゃんが居て、俺を見下すように赤い目を光らせていた。


良くみると、綺麗な青髪の毛にも少し赤い光が混ざっている。


ああいうのをメッシュって言うのだろうか?


何にせよちょっと格好いい。


「やっほぉ!吸血鬼ちゃん!ヒマリちゃん返してくんない?」


女の子を前にすると、たとえ敵でも、おちゃらけるのは悪い癖だな~。


悪癖石さん。


「馴れ馴れしい……」


うわっ!?うっとおしそうな顔された!?ショック!


ショック死で死んじゃうぜ。


まぁ、おふざけはある程度で押さえといて。


「そっちこそ、ある程度喋ってくれるようで、何よりだぜ」


「………………」


あり?今度は黙りだぜ。


やっぱり、そこら辺にポイントがあるのかなぁ?


なんて、ただ無視されただけだろうけれど。


さて、おちゃらけているから分からないかも知れないけれど、俺と吸血鬼ちゃんとは、本気(マジ)で向かい合ってる。


どのくらいかと言うと、本気と書いて、マジと読んでるくらい。


まぁ、出会ってそうそう殴られそうになってるから、仕方ない。


「さてと……」


最初に断っておくと、張り付けられたヒマリちゃんは、現実のヒマリちゃんの心みたいなものだけれど、ここにいる吸血鬼ちゃんはただの残留思念である。


何故かと言うと、ここの吸血鬼ちゃんは独立した個体なのだ。


そもそも、こんな風景ですら、ある種の幻みたいなものだ。


ヒマリちゃんと心を繋げた俺だが、心なんて曖昧な物、通常の人間の思考回路じゃ理解できない。


それを分かりやすいような形にして、理解する為に、俺自身が作り上げたイメージみたいなものだ。


何だろう?小さい頃見た、体の仕組みを覚える時の、体の細胞を擬人化させて、ウイルスと戦う教育ビデオみたいな?


やべぇ、自分でも何を言ってるやら。


まぁ、結論何が言いたいかと言うと。


「ここで、女の子殴ってもノーカウント!」


吸血鬼ちゃんと戦う為の理由付。


吸血鬼ちゃんの隙を付き、ヒマリちゃんを助けるためにそちらに突っ込む。


何も、吸血鬼ちゃんを相手にする必要は無いのだ


あれ?結局、戦ってなくね?


「させると思うか?」


しかし、そんな台詞と共に、俺の目の前には瞬時に移動したであろう吸血鬼ちゃんが居て、その拳を横に振るっていた。


「っ!?」


速いと理解するよりも早く、体が反応していなければ骨が持っていかれたかも知れない。


俺は咄嗟に左手でガードしながら、体を剃らしていた。


たが、この行動は幾らか良好ではあっても最善ではない。


ひびが入る音ような嫌な音がして、投げられたように飛んでいきそうになる、左腕。


その勢いになるべく逆らわず、それでいて、身を任せないようにして、続く吸血鬼ちゃんの攻撃を回避する。


どうでも良いけど、戦闘始まったら、大体、左腕を生け贄にしてる気がする。


続けてやってきた、吸血鬼ちゃんの蹴りに合わせて、盾を呼び(コール)し、ガード、わざと後方へ吹き飛ばされる。


受け身をとり、体制を立て直し、距離を開けたところで、一泊、呼吸をする。


吸血鬼ちゃんも後ろを守るのが最優先らしく近付いて来なければ、襲う気は無いらしい。


さて、結論から言おう。


駄目だ、これ。


無理、勝てない。


以上。


いや、うん、まぁ言いたいことは色々あるけど、まず、分かったのは、圧倒的な実力差。


一撃で左手を持っていかれそうになった相手に今の俺、単体じゃ勝ち目が無い。


「まぁ、だからといって」


諦めるような黒石さんでもない。


やりようなら、いくらでもある。


「……共有(リンク)!今、行くぜ?ヒマリちゃん!」


共有を発動させ、声を張り上げながら、意思を明確に吸血鬼ちゃんに近付いて行く。


小細工なんか必要ない!


正々堂々と大細工だぜ!


吸血鬼ちゃんに向かって、右から沈むように体制を低く、距離をつめる。


吸血鬼ちゃんは、それに応対するように余裕だが、隙の無い構えを見せ、迎撃体制をとる。


「来い!」


「仕方無いな~」


両腕を横に広げ、二本の刀を呼び(コール)し、水平に、挟み込む様に振るう。


だが、吸血鬼ちゃんは両の腕でガードの体制をとって、そのまま受け止めてしまう。


「っ!?」


「ふっ!!」


まじか、固いな~。


そのまま、腕の力だけで、刀を押し戻される。


「あはは……」


こんにちは、がら空きの俺の体。


なんて、言ってみても、状況は変わらない。


吸血鬼ちゃんが拳を引くのがわかり、体を悪寒が支配するのが分かる。


分かるだけで、その動きが早く、回避不可能だ。


そんな中、俺を見て吸血鬼ちゃんがにやりと笑った。


可愛いな!ちくしょう!



そんな馬鹿な考えごと、吸血鬼ちゃんの容赦無い拳は俺の中心を撃ち抜いた。


だが!既に空中に盾を展開していた俺は威力を半減……ゴーン!


「ぐふっ!?……」


「………………」


空中に召喚した盾を邪魔だと言う風に吹き飛ばす吸血鬼ちゃん。


その盾は、そのまま、俺に直撃。


ま、まさか、威力を半減させるために呼び(コール)した盾が、俺に飛んでくるという二次災害がおこるとは……。


学ランが無かったら、ヤバかった。


つか、吸血鬼ちゃんが呆れ目をしているのが、実に心苦しい。


よろよろと立ち上がり、前を向く。


仕切り直し。


「やるじゃないか……、だけど、ヒマリちゃんは返してもらうぜ!」


「………………」


そこで、無言は止めようぜ!


仕方がないので、もう一度雰囲気を戦闘に持っていく。


今度は、ゆっくりと吸血鬼ちゃんに近付いて行き、腕を背後へと伸ばす。


一度、やってみたかったのだ。


「行くぞ、英雄王!武器の貯蔵は、以下略!」


俺は武器を呼び(コール)する。


「コール!」


その数、17。


どっちかと言うと、英雄王側っぽくね?


空中に無造作にあるその中から二本の剣を俺は掴み、手を後ろから前に振りかぶって、投げる。


吸血鬼ちゃんは、驚いたような顔をするものの直ぐに、立て直し、その二本の剣を掴む。


流石に刀身掴むとは思わなかったけど、吸血鬼ちゃんの体に目立つような傷は見当たらない。


俺は、地面すれすれの所で次の武器、槍を掴み、そのまま、サブマリン投擲という謎のアクションを起こす。


案の定、威力が全然乗ってない。


だが、これも牽制。


地面についたナイフを、安全で固いローファーで吸血鬼ちゃん目掛けて、サッカーボールのように蹴りあげて、更なる時間を稼ぐ。


そして、そこで、俺は体をひねり、足のばねを使い加速。


というか、スタートダッシュ。


残りの13の武器はフェイク。


本命は俺自身だ。


俺のいきなりの行動に吸血鬼ちゃんの反応が少し、本当に少しだけ遅れる。


もう、いちいち驚くことも無いらしい。


そのまま、俺は飛ぶ。


要領としては、走り高飛び。


違うのは、越える物。


それは、吸血鬼ちゃん。


なんて、無謀な計画だろう。


距離も高さも速さも何もかもが及ばない。


吸血鬼ちゃんも、俺の行動を攻撃か何かと勘違いして、困惑している。


当然、俺だってこんな無茶苦茶されたら戸惑う。


越えられないし、抜けられない。


そもそも、並の身体力で吸血鬼ちゃんは抜けられない。


吸血鬼ちゃんへと距離は迫り、俺の腹に一撃くらわすべく、腕をひき、思いっきり殴ろうとしている。うん、死んじゃう。


抜けるためには、そう、二弾ジャンプ(・・・・・・)でもしなければ、


「と言うわけで、もう一回!」


空中の足下に、毎度お馴染みの鉄球を呼び(コール)し、それを踏み場にして、もう一度、大きく飛ぶ。


これで、二段目のジャンプ。


流石にこれは吸血鬼ちゃんも予想できなかったようで、俺は吸血鬼ちゃんのパンチを抜け、そのまま、吸血鬼ちゃんの肩を蹴り勢いをつけ飛び越す。


うん、女の子を跨ごすのはちょっと気が引ける。


ましてや、肩を蹴るとか何様だよ、全く。


だが、それで初めて越えられた。


ヒマリちゃんに近付いた。


着地と同時に、十字架へと駆け抜ける。


「ヒマリちゃん!」


後ろは振り返らず、一気に駆け抜け、近寄っていく。


速さでも、早さでも負けてる。


だが、届かせるしかない。


ここまで、まだ追い付かれていない。


「ヒマリちゃん!」


十字架まで、あと一歩。


届けと、手を伸ばし、最大限体を伸ばし、その思いを繋げる。


後ろで聞こえる風をきる音など聞こえない。


手が延びる。


そのまま、俺の手が。


「ヒマリちゃん!」


届いた!


十字架に張り付けられているため、足にしか触れられなかったが、届いた。


確かに、確実に。


このまま、いける!


「ヒマリちゃ……ぐっ!?」


右腹部に強烈な痛みがはしる。


意識が飛びかけ、体が重力に逆らうのが分かった。


左に吹き飛ばされながら、強力な蹴りを吸血鬼ちゃんから腹部にプレゼントされたのだと理解。


地面を転がる痛みで、意識を覚醒させながら、何とか体制を整え、立ち上がる。


ヒマリちゃんの方を見ると、青い髪を幾分か逆立てながら、鋭い目付きで吸血鬼ちゃんが睨んでいる。


ああ、逆鱗に触れたかな?これは?


ゆっくりと俺に近付いてくる吸血鬼ちゃん。


どうやら、もう、ヒマリちゃんを守ると言うより、俺を殺すことに決めたらしい。


たっく、本気になられたら、勝てねぇよ、勝てるわけがない。


まぁ、そもそも。


「勝つ気は、さらさら無いんだけどね?ね?ヒマリちゃん」


俺がそう十字架に張り付けられた少女に声をかけると、


「……ゆ……うと……さん?」


確かに、返事があった。


そして……。


ブォン!!


広がる世界がエラーを起こしたかのように世界がずれた。

全部終わったら時系列順に入れ替えるかもしれません


兎に角、すいませんでした

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