第四十九物語 「paradox feeling~その気持ちに気付くために~」
久しぶりの更新です!
遅れてすいません!あと、ひさしぶりなんで、前の話をおさらいしないと、分からないかもです
俺の周りをバチバチと色を変えながら、そこに存在する雷。
藍色、黒、灰色、白、水色、青、の六色をゆっくりと変化させ、その存在を主張する。
雷には、黄色とか白とかのイメージがあったけれど、この雷は特殊らしい。
その形が定まらない様は、まるで、今の俺の気持ちみたいだ。
この雷の名前は刻闢爽雷。
俺が名付けてた訳じゃないけれど、共有が何と無く教えてくれた気がする。
この雷で、ルティちゃんとの戦いの時、二つのことをした。
鎌鼬をガードすること、そして、真空間を破るために、八本のナイフに磁力をあてて飛ばすことだ。
それが、あの時、俺がしたことの正体。
と言っても、どうやってやったかは、良く覚えてないけれど。
磁力に至っては、電気を出したら、勝手に磁力場が発生することを初めてしった始末。
よく、雷の能力者が磁力を操って戦うけれど、とても磁力を精密操作なんて芸当出来そうに無い。
出来たとしても、一直線に物を飛ばす程度だ。
あの時のナイフの様に。
ルティちゃんと戦った時に俺がナイフを蹴り、複数のナイフを飛ばすと言う芸当を行ったのは、このお陰だ。
そして、今は単純にナイアちゃんの体に電気を流し、スタンガンのように体を麻痺させた。
そうこう考察している内にナイアちゃんは痺れが取れてきたようで、臨戦態勢を取り始める。
さて、俺はようやくナイアちゃんと同じスタート位置に立てた。
これで、俺は彼女と対話できる。
「なぁ、ナイアちゃん……?君は本当にそれでいいの?」
「……………………」
返ってきた答えは無言の拒絶。
やっぱり、女の子は手厳しい。
気難しいし、本当のことを喋ってくれることも少なかったりする。
だが、だからこそ、男の子は頑張るのだ。
「私に追い付いたと思ってるのなら、大間違いよ?」
と、ナイアちゃんがそんな警告をしてくる。
「あなたが心を読めたとして、反応出来なければ意味は無いから……!」
そう言って、さっきよりスピードを増し、俺に向かって突撃してくるナイアちゃん。
雷を牽制に放つが、それらを横移動で回避される。
次に来るのは、脇腹のフックと見せかけての肘撃ち。
ナイアちゃんも俺に心を読まれないように色々考えてはいるけど、考えないようにすればするほど、逆効果だ。
この能力は意識、無意識に関わらず理解できるし、考えないようにしたら、逆にハッキリと考えてしまっている。
俺が能力の正体をバラしたのはここら辺にポイントがあるからだ。
実際、やって来たナイアちゃんの一撃目をバックステップを大きくとりかわす。
裏を書こうとしていたナイアちゃんの二撃目があたる範囲より大きく外れることで、二撃目を回避する。
問題はここから。
俺の思考共有は、相手の考えを、意識、無意識の両方の側面から共有するというもの。
相手の心の声が聞こえるというよりも、相手の感じている、感覚、気持ち、印象、考え方などを同時間に感じ取っていると考えて貰った方が正しい。
そして、人間が無意識に思考を初めるのは、意識にあがる遥か前。
人は無意識に何と無く次に何をするかを意識に出す前に考えてしまっている。
そして、共有している俺だからこそ、客観的に見ることで、相手より先に無意識を先に捉えることが出来る。
これにより、さっきから先手を打っている俺だが、実は二つのことさえ、クリア出来れば、俺の思考共有は突破できる。
ちょうど、今からのように。
俺に攻撃をかわされたナイアちゃんは、追撃を繰り出す為に、次の踏み込み、そして、先程より早いスピードで俺に右蹴りを放つ。
俺はそれに左手で横から力を加えることで、おれ自身をずらし、かわす。
そのまま、次に来ると分かっていた筈の、攻撃の外れた足を使った回し蹴りをくらってしまう。
「ぐっ!?」
無理な体制から繰り出された蹴りにたいしたダメージこそなかったものの、追撃を逃れるために雷を無作為に放つ。
そして、それを当たり前のようにかわされた。
ただの牽制だから、仕方ないちゃしかたない。
予想道理ではあったけれど、分かっていた筈なのに、かわせなかった攻撃の方が問題なのだ。
これが、俺自身の攻略法。
雷が解けると、同時に瞬時に近付き、攻撃をしかけるナイアちゃん。
辛うじて、目で捉える動きの中でナイアちゃんの表情は余裕を物語っていた。
対して、場所が分かっている攻撃を捌き、かわし、ずらす、俺は焦りを隠せない。
そのまま、攻防を繰り返し、もう一度、隙を突かれて、右手の一撃をくらってしまう。
「それが、あなたの弱点ね」
「な、なんのことかな~」
どうやらナイアちゃんは、この力の攻略法に気付いたようだ。
この共有の力を攻略する方法は二つ。
一つは、追加攻撃。
いくら人間が思考を先に行い、行動すると言っても、そのタイムラグが少なければ、俺が相手の思考を理解するより早く攻撃を避けることは難しい。
そして、そのラグが短い時が人間には共通に存在する。
おきた物事に対応する時だ。
例えば、予想外の攻撃を反射的に避けるとき。
これは体が自主的に反応しているため、理解してから、行動までのラグが極端に短い。
また、自分から起こした行動が失敗した時も同様だ。
攻撃を失敗したことを、認識してから、二撃目に入られると、思考の開始地点から、攻撃までの時間が短いのだ。
そして、二つ目は純粋な速さ。
単純に、読めていても、速ければ避けずらいのと、思考から行動までの速度が早いと、体が中々追い付かない。
その点で言えば、ナイアちゃんは、俺の相性の悪い相手になる。
ナイアちゃんの速度は、底知れず、ついて行くのがやっとの、所。
ナイアちゃんが、もう一度、俺に向かって踏み出し、俺を打倒せんと迫ってくる。
まぁ、だからといって……、ナイアちゃんが気付いた事が成功するかどうかは別だけれど。
ナイアちゃんの拳が、今まで道理空を切る。
そして、2撃目。
ここからスタートした追撃の動きは、今から思考を始めたのでは体が追い付かない。
だが、俺はその顔面を狙った蹴りを、半歩ずれることで、かわす。
「っ!?」
そのことに驚くナイアちゃんだったが、生憎、俺にも、余裕は無い。
驚いてばかり要られないと思ったのか、体制を建て直し、驚きを内に抑え、3撃目の右足払いをナイアちゃんは繰り出す。
それをギリギリでかわしながらも、ナイアちゃんの思考の中の四撃目に備える。
裏拳。
当たると、漏れ無く、顔面が血塗れになる速度で放たれた、それを、放たれる前にバックステップを取ることで回避して、指先から電撃の牽制を入れる。
ここで、一連の動作を立ちきりリセットしたかったからだ。
それは、何故か?
簡単な話だ。
俺が、ナイアちゃんの攻撃を避けることが四撃目が限界だからだ。
だが、これは俺が最初に言ったことと矛盾を起こす。
追加攻撃や出来事対応。
実は、これらはあくまでも攻略法なのだ。
攻略法であって、確率法で無いなら、逆に打ち破ることも出来る。
攻略法を敢えて、分かりやすく相手に悟らせることで。
確かに、この二つがあれば、俺を倒すことは出来るだろう。
と言うか、これを知らなければ、倒せる確率が激減する。
だが、この攻略法を知った者には、俺を倒すにはあまりにも重大な欠陥を背負うことになる。
それを知った人間は無意識の内に二撃目をシミュレートしてしまうのだ。
人は、その情報を得ると無意識でその情報が広がっていく。
さらに考えない様にすればするほど、物事は頭から離れなくなる。
俺を倒すために、全く意識してはいけない追撃が必要と分かると、逆にそれを考えてしまうのだ。
ここを避けられたら、こうするということを。
だから、この意識してはいけない攻略法には、気付くと意識してしまうというパラドックスが生じ、気付いてしまうと、逆に俺を優位にしてくれるのだ。
ただし、無意識に思考するのが、だいたいの場合、四撃目までだから、さっき言ったような制限が付くけれど。
それでも、まぁ、勝て……。
「死ね……」
「へっ?」
ゴキュ!?
俺のあばらが、嫌な音を響かせ、一瞬にして、思考が現実へと向き合わされる。
目の前に、神速の拳を放ったナイアちゃんが居て、その目を赤く染め、こちらを睨んでいた。
油断していたのは、否定しない。
だが、思考を共有している今、こうもあっさりとナイアちゃんの攻撃を通すとは、思わなかった。
そのまま、俺は吸血鬼の怪力によって、吹き飛び、地面を転がされ、這いつくばる。
防具が、この制服じゃなかったら、一撃で死んでいた。
「あがっ……」
みっともない声を上げながら、思考を再開する。
止めたら、そこで、俺は死ぬ。
思考共有は確かに発動していた筈なのだ。
だけれども、思考が読み取れなかった。
いや、違う、思考はしていたのだ。
ただ、その仕方があまりにも唐突に変わったから拾えなかった。
悲鳴をあげる体に鞭を打ち、自力で立ち上がりながら、ナイアちゃんの目を見つめる。
先ほどまでの静かな青から、血のような赤に染まったその目を。
あんだけ考えていたものが、こうもあっさり、破れるか。
確か、目が赤く染まる時は、命令する時と、理性を外し、力を大幅にあげる時だったけ?
理性を外した時の思考は、なんというか、本能に従っていて、思考が単調に受け取れた。
なるほどねぇ、本能に忠実になられたら思考共有は破りやすくなるのか……。
前回の戦闘を思い出しながら、思わずニヤリと笑みが溢れる。
新たな弱点を発見すると共に、俺は新たな発見が見えていた。
漫画や、アニメと違って、この場面でナイアちゃんが力を抑える必要は無かった。
精々、自身の過剰攻撃を防ぐ程度の効果しか無い。
思わず笑みが零れてきて、ナイアちゃんが怪訝そうな顔をする。
「貴様、何がおかしい?」
口調が変わり、ナイフのような鋭さと氷の様な冷たさを持つ声には容赦が無い。
たが、俺のニヤケは止まらない。
「な~んだ」
ナイアちゃんは手加減していたのだ。
そして、俺がある程度の強さを見せたら、対抗する様に強くなった。
「な~んだ!」
「何を笑っている!!」
俺の笑いにいらいらと怒りを募らせていく、ナイアちゃんだったが、俺はやはりニヤニヤが止まらない。
だって、手加減していたと言うことは……。
……殺す気が無かったと言うこと。
『黙れ!』
まるで、俺の思考を遮るかのように、ナイアちゃんが俺に絶対的な命令を発動させた。
だけれど、俺は、自信を持ってこう答える。
「嫌だね!」
拒否の言葉を。
黙れとの命令に逆らう言葉を。
「っ!?」
今度こそ、驚くナイアちゃんに、また、ニヤケが止まらなくなる。
まぁ、実を言うと、口は動かせたけど、体が動かないんだよね。
大ピンチだぜ。にゃっははは。
ピンチなのに、やはり、笑えてくる。
目の前のナイアちゃんは、理性を外し、本能剥き出しで、俺を殺す気満々だ。
でも、さっきまで、殺す気が無かった。
その事実だけで、俺には十分なのだ。
「なんだ、なぁ~んだ、俺の勘違いなら、どうしようかと思ってたけど……」
ヒマリちゃんにしたことを許した訳では無いけれど、俺の中では、ナイアちゃんの好感度が幾らか上がった。
「良かった、良かった」
ならば、もう、やるべきことは決まっている。
俺は共有の質力を上げ、雷をいつでも、だせる様に準備して、ニヤリと笑う。
これは、まるで、あの、ヒマリちゃんの時のリベンジの様だと思いながら。
お久しぶりです。
ようやく、受験が終わりました!
これから、順調に更新していくので、宜しくお願いします!
久しぶりだから、話がおかしいかも……(汗
調子を取り戻すまで、お付き合いください!