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第四十三物語 「lost next~空白の後の未来のために~」

注意、この回で2話飛んでしまっているのは仕様ですので、気にしないでください。

その話は携帯と共に消えてしまったので。

「おい!降りてきたぞ!」


誰かのそんな声が辺りに響いた。


村人達は一斉に振り向いた。


ユウト、マリナ、ヒマリという、謎の三人組がこの村を荒らした。


それが、村人達の見解だ。


「くっ……、やつら死人(ゾンビ)がこの村を襲うと言うのか」


それは、彼らの中の一人が吸血鬼に襲われて、死人(ゾンビ)になったからだ。


村では既に様々な手段を試し、死人(ゾンビ)を元に戻すことは出来ないか模索した。


だが、死人(ゾンビ)を人間に戻すことは出来ず、感染者は増え続け、3日経つと死んでいった。


苦渋の決断を迫られた村人達の選択は、感染を広げない為に、病原(ゾンビ)を殺すことだった。


勿論、反対する者は少なくなかったが、その大半が家族を死人(ゾンビ)にされた者達で、彼等はその意見を貫く前に愛する人と心中することになったのだ。


変わり果てた者を治そうとして、自らも同じ運命を辿ることで。


たがら、不可能なのだ。


死人(ゾンビ)を人間に戻すことなど。


だが、旅人であった彼等はそんなこと関係無いとばかりに、暴れ始めた。


早く対処しないと、手遅れになるというのに。


更に、こちらの言うことを聞かない二人の内、一人、マリナは直接的に村人と対決して、一人で全員を倒してしまうという暴挙を見せたことで、有力な武闘派はほとんど使えなくなりどうするかを話して決めようとしていた矢先のことだ。


山から降りて来たのが誰かは分からないが、恐らく、死人(ゾンビ)に襲われ、死人(ゾンビ)になってしまっているだろう、そう、誰もが思い、戦う準備をしていた。


だが、


「マリ姉、絶対派手にやったでしょ……、何かすごい目で見られてるんだけど」


「あら、侵害ね……。これでも、(Mに)目覚める人が居なかった程度には手加減してるわよ」


「マリ姉の手加減の基準が理解できないよ!」


降りてきた二人、ユウトとマリナは平然とした様子で気楽に会話をしていた。


どうやっても、死人(ゾンビ)には見えず、彼等が人間のままだと言うことを村人達は理解し、同時に疑問を持つ。


彼らが何故、こんなにも明るいのか?


彼等が人間のままであると言うなら、死人(ゾンビ)になった少女、ヒマリを殺したか、救えなかったかの2卓なのだ。


笑える筈がなかった。


だが、そんな彼等の中の常識はすぐに打ち破られる。


「ユウトさん!マリナさん!そろそろ村が近いので、静かにしないと、襲われちゃいますよ!?」


「もう、ユウちゃんは静かにすることも出来ないのかしら?」


「え?いやいやいや、俺が悪いの!?」


「もう!ユウトさん!緊張感ぐらい持たないと」


「ヒマリちゃん!?俺、悪くなくない!?マリ姉がボケるから、こうなっただけでね!ね!」


「酷いわユウちゃん……。私のせいにするなんて……ウルウル」


「マリナさん……。ユウトさん!女の子を泣かせちゃ駄目ですよ!」


「いやいやいや、泣いてないし、ウルウルって口で言ってるから!!」


そこには、本来、死人(ゾンビ)化していない筈の三人目が存在したからだ。


近付いてくる三人組の喧騒。


唖然に取られる村人達の中で、三人のうち一人が集まった村人に向けて、言い放つ。


「さぁ~て、と……交渉といきますか」






結論から言おう。


俺はヒマリちゃんを救うことが出来た。


その仮定で、心の中に巣食う敵と戦ったり、俺の真骨頂が発動したりして、最終的にはマリ姉に助けて貰ったのだが、その話はまた機会があれば語るのだと思う。


それより、今は目先の問題だ。


「貴様らは、いったいどうやって、そいつを人間に戻した!」


「いや、注意しろ、こいつらは死人(ゾンビ)のままで、我々を欺こうと……」


言いたい放題だな……。


いや、まぁ、こうなるだろうとは思ってたけど。


それを予期しての交渉だ。


「黙りなさい……」


あっれぇ、マリ姉?


落ち着いてくれないかな?


そんなに絶対零度の声を出したら、脅迫になっちゃうよ?


気持ちが分からない訳じゃないけどね?


俺はヒマリちゃんを背後に隠して、両陣営が姿を見れない様にする。


この村の奴等がヒマリちゃんを見る目は、脅えであり、恐怖であり、怒りであり、敵対心だった。


俺達も似たように見られていたけれど、ちょっと前まで死人(ゾンビ)だったヒマリちゃんへ対する負の感情とは比べるれない。


まぁ、村の皆の気持ちは分からなくもない……、訳ねぇだろ!!


マリ姉がキレなかったら、俺がキレていた。


今、俺が冷静でいられるのはそのお陰だ。


幸いにも、場はマリ姉の一言により、静寂を取り戻し(恐怖で押さえ付けたとかは気にしない)、


冷静に交渉出来る場が整ったのだった。


この機を逃すわけにはいかない。


くっ、マリ姉、全て計算づくだったな。


「交渉だぜ。まず、俺達は速やかにこの村から出ていく。だから、一切の危害は加えてほしくないな……。まぁ、マリ姉がいるからどうせ無理なんだろうけど」


敵意を絶やすことなく、こちらを悔しそうに睨み付ける。


マリ姉の強さを示した後だから、どっちかっていうと脅迫っぽいな……。


さて、問題は次だ。


「俺達は、あの吸血鬼を退治しにいく。だから、邪魔しないでほしい」


後ろで、ヒマリちゃんがビックリしているのが分かる。


伝えてなかったから、しょうがないかもしれないが……。


村人達は反応は思い思いだ。


驚くや疑う、などが大半だが。


「騙されるな!こいつらは村を!」


死人(ゾンビ)め!人間の振りをしやがって!」


そして、こう言う時は、人間、「信じても良いのか?」よりも否定の言葉を発する人間の方が早い。


例え、どんなに危機的な状況でも大半の人間が変化を恐れるからだ。


「何を根拠に死人(ゾンビ)だと?」


「黙れ!私達を陥れようとしたお前らは死人(ゾンビ)に違いない」


冷静に聞いても、筋の通らない感情論で答えられた。


いや、感情論も、大切だとは思うよ?


俺も良く言うし。


けど、やっぱ、ケースバイケースだと思う。


冷静に語ってる風に思うけど、言葉数が多いのは、めに見えて焦ってる証拠だ。


落ち着け~俺。


死人(ゾンビ)に理性が無いと一番良く知ってるのはあんた達だと思うけど?」


……………………。


おっと、場が静まった。


うん、今の発言は考えなしだったわ。


確かにこの人達は死人(ゾンビ)と言う物について、俺達よりも知ってる。


そこから、生まれた悲劇を。


黙っていた反対主張派の一人がもう一度叫ぼうとして


「黙れ!ゾン……」


「貴方こそ、落ち着きなさいよ!」


今まで静観していた女性の村人に止められた。


「ねぇ?貴方達?」


そして、そのまま、その台詞は俺達に向けられる。


「その子をどうやって、人間に戻したの?」


そう、聞かれた。


静観していた村人が注目し始める。


どうやら、何人かの騒ぐ人よりもそちらの方が圧倒的に数が多い。


好奇心や期待そんな+の感情が向けられ、同じかそれ以上の嫉妬や妬みが向けられているのが分かる。


それこそが、村人が俺達に対して、敵意を向ける理由。


それこそが、ヒマリちゃんに対する負の感情の訳だ。


この村人達は死人(ゾンビ)化で仲間を亡くしている。


村人が死人(ゾンビ)を殺す決まりを作っているくらいだ。


中には、村人が死人(ゾンビ)を手にかけないといけない悲劇もあっただろう。


そんなところで、俺がヒマリちゃん死人(ゾンビ)から人間に戻してしまった。


村人達は、人によって程度はあれども感じただろう。


常識が覆されて、尚、現状維持を、そんなことは有り得ないという自制心と疑惑。


疑惑が過ぎ去り、もしかしたら、死人(ゾンビ)は戻せるかも知れないという希望。


そして、その希望があるなら、何故、自分達は駄目で、余所者(おれたち)が助かったのかと、


何で自分達の大切な人達は消えたのに、こいつらはそんなことにならなかったのかという負の感情。


何故、こいつらだけという嫉妬。


持つものだけが助かるなんて理不尽だなんて憤怒


こいつらが助かるのはぐらいなら俺達の仲間が助かってればと考える傲慢。


そんな、纏めると俺達が救われ無かったから、こいつらも絶望に落ちるべきだという逆恨み。


村人の本音としては、そこが大きい上での質問だ。


だから、俺ははっきりと言わなければならない義務があるのだろう。


マリ姉に言ったら、そんな義務なんてないわよ?なんて言ってくれそうだけど。


「俺とヒマリちゃんの能力がたまたま吸血鬼に相性が良かった。それが、ヒマリちゃんが人間に戻れた理由だ」


そうそれがヒマリちゃんを人間に戻せた理由だ。


結局、俺だけの力じゃヒマリちゃんを元に戻すことは出来ず、マリ姉に助けて貰って漸く出来たことだ。


「つまり、もしこれから同じことがあっても、俺は死人(ゾンビ)を人間に戻すことが出来ない」



ヒマリちゃんの心の中を経た俺は、とある事情により吸血鬼の居場所が何と無く、分かるようになっていた。


共有(つながり)が導いている、奴に会えと。


俺の新しい力も……おっと、そんな話は良いか。


問題なのは、今の現状を改善することだ。


俺の発言に大半の村人は固まり、疑念を積もらせていく。


嘘じゃないのか?


こいつらは吸血鬼とグルじゃないか?


そもそも、吸血鬼化などしていなかったのでは無いか?


と、そんな疑問や疑いで俺見ている。


「にゃはは!黒石さん疑われてるぜ!疑わし石さん」


「ユウトさん!笑うところじゃないですよ~!」


俺の言動に突っ込みを入れてくれたのは、ヒマリちゃん。


うん、やっぱり、ヒマリちゃんは和むな。


お陰で場の空気が幾らか和らいだ気がする。


ここが、決め時か。


息を大きく吸い込み、なるべく自分の発言に威厳を持たせるようにする。


「先に言っとくが、あんた達の過去やらなんやらは知ったこっちゃない」


まずは、冷たく切り離す。


わざわざ交渉と言うからには、こちらの優位をハッキリと見せる。


まぁ、俺だったら優位不利関係無く反発するけど。


「そんなもんどっかの主人公達(ヒーローズ)にでも任せとけ。黒石さんはそんなんとは真反対の位置にいるから!」


おっと、交渉に私情を挟むのはNGだった。


話を戻すか。


「つうか、逆恨みしてんじゃねぇよ!こっちは良い迷惑だって……、何?その顔?逆恨みなんてしてませんって?鏡見てみろよ!」


村人の何人かが喋ろうとしたが、マリ姉が眼力で黙らせた。


流石、マリ姉。


「良いか?過去は大切かも知れないが、今や未来は生きる原動力なんだよ!だから、怯えてんじゃなくて前を向いとけ」


うん、でも、マリ姉、もう少しオーラ抑えてくれないと、交渉どころじゃないよ?


「もし、吸血鬼が怖いんだったら、大人しく待ってろ!さっき言ったように吸血鬼退治してくるから!大人しく俺達にかけてろ。最悪、倒せなくても追い払えば良いんだろ?」


思わず、相手が強くて逃げの言葉が出たのはスルーの方向で。


「兎に角、被害が無くなれば、今後こんな問題ねえだろ?だったら、黙っていかせてもらうぞ」


ふぅ。


交渉終了。


まぁ、本来交渉は対等に行うものだから……。


「ふざけるな!」


こんな風に、何人かが騒ぎ始める。


はぁ、そもそも相手が集団の場合、意思の疎通が難しいから交渉にはなりにくいんだよな……。


つまり、


「ふざけてたら、どうすんの?力ずくででも、止めてみる?」


「なっ!?」


「まぁ、マリ姉ごとき(・・・)に勝てないようじゃ、俺達を止めるなんて無理じゃないかな?」


(フェイク)を挟んだ一方的な交渉、つまり、交渉というオブラートな言葉に包んだ……、


「そんなの!脅迫だろ!」


そう、脅迫だ。


「いやいや、俺達にとっては説明する義務も無かったんだから、この誠意は感じてほしいな~」


そんな訳の分からない建前を言って誤魔化す俺。


これが、拒否権がない一方的な脅迫だなんて、最初から分かってたことだ。


相手は、こちらの要求を拒否しようとしても、物理(まりねぇ)的に不可能なのだから


どうでも良いけど、さっき「マリ姉ごときとか」交渉の上で、マリ姉とマリ姉以上の俺を倒せるのか?と相手に錯覚させるために使った、この不用意な発言の瞬間から俺はマリ姉に睨まれている。


どうでも、良くないか……。


殺されるかも知れない。


兎に角。


「これで、交渉終了だろ?さて、話すことは無さそうだから、もう行くぜ?」


何人かがなにか言いたそうな顔をしたが、マリ姉が鞭を構えたため、その言葉を抑えた。


いや、あの鞭、俺に向けて構えてるんだぜ?


とりあえず、マリ姉から逃げるために吸血鬼の気配がする方向へと、ゆっくり逃走を開始する。


端から見たら、颯爽と翻る様に見えるんだろうな~、足が震えてることに気付かなければ……。


何歩か歩みを進めたところで、思い出したように俺は振り向き、


「そうそう、俺の代わりに宿屋の子に謝っといてくれ」


全てを丸く納める為の言葉を紡ぐ。


「あの子には、死人(ゾンビ)を人間に戻す方法を教えてやるから、手伝えって言っから、嘘だよ?って」


いつも道理の(プラフ)を。


俺が全て悪かったことにして、堂々と逃げれば、悪意の方向はこちらに向く。


宿屋のあの子がこの村に再び受け入れて貰うためには、共通の敵がいれば楽になる。


すなわち、俺。


共通の敵がいれば、あいつが悪かったって、理由が出来るからだ。


「あんな、純粋に信じちゃってさ~。いやぁ~、可愛そうだね~」


「この外道が!」


後ろから聞こえた罵倒に取り合わず、後ろ手を振りながら、俺達はこの村を出ていく。


もう、この村とはおさらばだ。






歩いている途中で。


「ユウちゃんって、やっぱりツンデレよね?」


「あ!私も同意します!」


「何でぇ!?」


そんな会話があったとか無かったとか。


久しぶりの一話です。

今回、携帯紛失に伴い更新が遅れたことを深くお詫びします。


今回本来書いていた一話が消えたので、その次からの投稿です。

いやぁ、何が何やら。

一応、無くても通じはするんでしょうが、あった方が断然いい一話でした。

余裕があったらもう一度書きます。



さて、注釈です。


宿屋の子についてですが、今だ村の檻の中です。

本来はマリナが助ける予定だったんですが、

冒頭の通り、ユウトの加勢にいってしまいました。


理由は共有が切れたから、心配したという可愛らしい理由です。

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