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第三十物語 「happy end…?~その時だけの幸福~」

終わらないお話。

 ~ all finish story ~


結論から言うと、不命はもうここには居ない。


不命の本体はとっくにこの場を抜け出しているのだ…。


そして、精神体だけをシャーガに取りつかせていたものの、ユウトにより、その精神体だけを排除されたのだった。


それにより、ユウト達は勝利したことになる…。


しかし、まず、ユウトが不命に何をしたのかを先に答えなければならないだろう…。


ユウトがしたのは、実は単純に状態共有(リンク)だったりする。


不命がシャーガの体を乗っ取っていた(呪鳥(のっとり)と言う不命の技)というのが今回の状況。


それは、呪いのステータス異常でもあるのだ…。


そこにユウトは自らを通常な状態とみなした上で、通常な状態を状態共有した…。


それにより、呪いのバッドを上書きしたのだった…。


勿論、ユウトの台詞は半分以上はったりだ…。


唯一、事実なのは、状態異常のステータスのみ打ち消す事が出来るということ。


だが、呪いが解かれた不命は、そのことを信じるだろう…。


だから、ユウトは置いたのだ、今後の布石として。






「もう、遅いわよ!ユウちゃん…」


「ごめんごめん…、マリ姉…」


戦いは完全に終わり、辺りは緊張から解放される…。


「ヒマリちゃんも…あり…」


「ムゥぅ………」


その代わりに別の空気がその場を包むの所を見ると流石はユウトと言うべきなのだろうか…。


ユウトがヒマリにお礼を言おうとするが、明らかにヒマリがむくれている。


これは、不味い。


ユウトは、そんな風に奇跡的にそれを察知して、話題転換を試みる。


「か…、可愛らしい格好だね~。ヒマリちゃん…」


「なっ…!」


それはむくれる体制(?)をとっていたヒマリにとって、意外だったのか、怒ってますよ~、オーラを纏うヒマリの状態が一時的に解除する程の力を持っていた。


途端にヒマリは顔を赤らめ、もじもじとしだす。


「ゆ…ユウトさん…。ありがとうございます…。でも…!恥ずかしいので…あまり…見ないで下さい…」


そう言いながら、チラチラとユウトを伺うヒマリ。


女心と秋の空…、えてして、女の子の機嫌はすぐに変わってしまうものだ…。


「似合ってるよ?それ!うん!」


「本当ですか…!エヘヘっ……」


ちなみに先程から、ユウトがほめているヒマリの格好というのは、ずばり、


犬耳と尻尾が、ヒマリと一体化していることを指す…。


いや、別にヒマリがあえてこの格好をチョイスした訳では無く、ちゃんと理由は存在する。


だが、その理由と言うのが…。


「本当に可愛いって!どうしたの?それ?」


「………………………」


先程まで、ヒマリが怒っていたことに起因する…。


女心と秋の空…(以下略)。


ユウトは、突如黙り、怒ってますオーラを再び発するヒマリに、焦り始める…。


心当りが無いのだ…。


だが、ヒマリにはちゃんとある…。


「あの…?ヒマリちゃん……?」


「………………」


暫く、沈黙が続き、やがて諦めたのか、ヒマリはジト目でユウトを見ながら…、こう言った。


「置いてきぼりにしましたね……ユウトさん……」


「あっ……あははっ………」


言われて気付き、笑っても誤魔化そうとするも…、むくれているヒマリが横目で見てくるため…断念した。


「ごめん!ヒマリちゃん!」


「……………ムゥっ~…」


謝るユウトだったが、ヒマリは相変わらず、拗ねている…。


「でも…、この戦いにヒマリちゃんを巻き込みたくなくて……」


「それでも!一言も声をかけないのは酷いです!」


言い訳するユウトにかみついていくヒマリ。


いつもよりも、少し、そのかみつき度合いは高い…。


「いや…、だって言ったらヒマリちゃん…ついてきそうだったし…」


「うっ…!…」


そんな中、ユウトの言った的確な言葉に、思わず、ヒマリは押し黙る…。


しかし…、追い込まれたヒマリから出てきたのは…。


「でも、でも…、置き手紙とかもなく…、一人ボッチにするのは…、あんまりだと思います……」


切実なる本音だった…。


これには流石のユウトも何も言えなくなってしまう…。


起きたら、皆が戻ってきているとか言って出てきたが、それは言い訳だ…。


ヒマリの気持ちを考えてなかったのだから…。


ユウトはそれを見て、全て明らかに自分が悪いとの結論にいたり…。


「本当にごめん!ヒマリちゃんの気持ちを考えてなかった!」


頭を下げて、謝る。


「………………」


ヒマリはそれを見て何も言えなくなる…。


だが…。


「今度、何でもお詫びするから!」


その一言で場は一転する…。


「………何でも…ですか…?」


「うっ……」


突如、目を輝かせ始めたヒマリの機嫌が治りかけていることが、何と無く分かるが、ヒマリの目を見て、うすら寒いものを感じるユウト。


だが、悪いのはユウトだ…。


ヒマリが許してくれるなら、そのくらい…。


「うん…何でも…」


「なら、許しますよ!やったぁ~!(目がキラキラ)」


直ぐに後悔した…。


「エヘヘっ~、どうしよっかな~」


でも、ヒマリが笑顔なら、ユウトも満足…、


「マリナさんにも協力してもらって~」


出来そうになかった…。


これより、少し先の未来にユウトがひどい目にあうのだが、それはまた別の話。





「それで…ヒマリちゃんのその格好なんだけど…、どうしたの?それ…」


ユウトはそんな切実な疑問をぶつける。


今のヒマリの格好というのが、動きやすく可愛らしい服……、


の腰のあたりから、モフモフした犬の尻尾が…、頭からは、犬耳が、綺麗に生えていた。


「すっごく…、可愛い…似合ってる!」


「ふぇ…?エヘヘ~、ありがとうございます~!」


だが、そこに萌えを見出だした、ユウトからは疑問など、吹き飛んだ。


「違うでしょ!」


パン…!


「痛い…!はっ!危うく我を忘れるところだった…」


訂正しよう、理性を吹き飛ばしかけていた…。


当然、そんなユウトにはマリナが止めに入る。


「もぅ…、まぁ…気持ちは分からないでも無いけれどね…。似合ってるわよ…ヒマリちゃん…」


「本当ですか?ありがとうございます!」


ヒマリはマリナにも褒められ、赤くもじもじとしながら、礼を言った。


実は、この格好ヒマリ自身も恥ずかしいと思っている。


「でも、見たところ、つけ耳って訳じゃなさそうだし、それって本物?」


だが、仕方がない…。


「えっと…、本物と言いますか…、生えてくると言いますか…」


「どう言うこと?」


「あの…、これが私の能力です……」


これがヒマリの能力なのだから…。


ヒマリの能力は「動物進化の使い手」別名『獣魂奏者(アニマルソウル)』。


その能力とは、自身と仲良くなった動物の生物的特徴を肉体に付け加えること…。


言うならば、人を狼の特徴を使い進化させ、擬似的な獣人になる能力だ…。


今のヒマリは、狼のラッセルの生物的な狼の特徴を自身に上乗せ(トランス)していて、外見的には狼の耳と尻尾が生えてきて、少し爪が伸び、牙も少し生えてきている。


また、内面的には嗅覚と聴覚が敏感になっていて、これにより、いきなり消えたユウトとマリナを臭いを追って探しに来た所、戦闘の現場に遭遇した、と言うわけで…。


ヒマリは、そんな説明や二人の居なくなった後の行動を踏まえて説明する。


ちなみに二人が居なくなった時に本気で淋しくて泣いたというエピソードなどは多々あったが、勿論胸の内にしまう。


「そうだったんだ…。ごめん…、ヒマリちゃん……」


「もう、気にしてませんよ…。私の為にしてくれたんですし…」


これで、こちらの問題は解決と言っていいかは分からないが、一旦、終わる…。


「そう言えば、ユウちゃん…。どうやって」


しかし、マリナの方にも疑問はある…。


ユウトがどうやって、生き残り、絶妙のタイミングでこの場に現れたかと言う疑問だ…。


「ああ、それはね…。あれのお陰~」


そう言って、ユウトはユウトの沈んでいた地面に指を指す…。


ここから、見てもよくは分からないために、近づいていくマリナ(+ヒマリ)。


そして、その穴の中には…。


「何ですか…?これ…?武器…?」


「成る程、そう言うこと」


その場には大量の武器があり、それを見た途端、ヒマリは疑問符を浮かべ、マリナは納得の表情を見せた。


「ええっとね…」


分からないヒマリの為にユウトは簡潔に説明しようとする。


説明だけで、最後の話を締め括るのはあんまりだからだ…。


まきで行こう…。


「簡単に言うと、あの武器で地面の中にバリケードを作ったのかな~?」






ユウトが不命に地面に落とされた瞬間…。


ユウトは咄嗟に学ランを着用した。


久々の防御力最強の学ランにテンションを上げるが、事態はそんな呑気な場合ではない。


いくら、最強の防御力を誇る学ランでも…、土に埋もれてしまったら死んでしまう。


だから、ユウトは展開したのだ…。


指輪の中に収納されている数々の武器を…。


ユウトを取り囲むように展開された武器はユウトを守る盾となる。


勿論、刃先が尖っている武器はユウト自身にとっても危険だったが、そこは学ランに護って貰っていた。


だが、降り掛かる、砂の粒は武器と武器の隙間をいとも容易く、潜り抜け、ユウトをホールドする。


ビーチで砂浜に埋められたことがある人ならば、分かると思うが、砂に固められた場合指先一つ動かせなくなる。


砂の粒が隙間を埋めつくし、動くことの叶わない状況に陥る訳だ。


そして、予想道理、ユウトはシャーガの土石魔法により、地面の中に埋もれ、身動きが取れなくなり、呼吸すら不可能となった。


このままでは、五分も立たずにあの世行きだ…。


だから、ユウトはバリケードとなった大量の武器を収納(クローズ)した…。


それにより、元々、武器が地面の中に埋もれていた場所から、消えたため空洞がいくつも出来上がる。


人が地面で身動きがとれないのは、そこに隙間がないから。


空洞の大量にできた今なら、地面は壊せる。


「らぁあっ!」


掛け声を出しながら、自分に纏っていた土を崩す…。


これにより、地中の中に身動きがとれるほどの穴が掘られたことになる。


「うっ……」


どうやら、口の中に大量の土が入ったようで、ユウトはそれを吐き出しながら、涙目になり、呟く。


「散々だよ…全く…」


そして、直ぐに次の行動に移る。


じゃないと、空気が少なくただでさえ辛い。


ユウトが呼び出したのは、ピッケル。


それを使い上に向かって、地面を掘り進める。


せめて、空気穴が欲しいのだ。


失敗すれば、上の土が崩れて、再び生き埋めとなるが、それはあまりユウトは心配してない。


シャーガの魔法をユウトは信用しているからだ。


シャーガは、完全に相手を倒すために手を抜かず、最後まで魔法に拘り、地面を完璧に固めていると…。


そもそも、空洞が出来ても崩れなかったので、強度は中々にあるはずなのだ。


思ったよりも、土は固く、ニヤリとしながら、肩を落とすと言う、相反することを同時にするという器用なことをやってのけながら、ユウトは作業を続ける。


暫く、掘り進み。


突如、光が差し込む。


地上に穴が開いたのだ。


そのまま、あと少しで繋がりそうな所で…、


声が聞こえた。


「はい!ユウトさんは絶対に生きてますよ!」


それは、紛れも無い、ヒマリの声だった。


そのことに驚き、しかし、直ぐに顔をにやけさせるユウト。


「はぁ…、ついてきちゃうんだ…。何だかにゃ~」


そう言いつつもユウトは笑っている。


「これは、全力を出さないといけなくなったぜ…。参った参った…」


そう言って、全然参ってなさそうなユウトは、槍を二本とシャベルを呼び出し…。


天井に向かって、三角形を作るようにその三本を突き刺した…。


そのまま、グリグリとねじ込み…、完全に動かなくなった所で、


「落ちろ!」


その槍に全力の横蹴りをする。


槍はある程度、天井(土)に刺さっていた所に横から力を加えられ、抉れる。


同時にミシミシと槍に負荷がかかった音がしたが気にしたら負けだろう。


流石に、三角形の頂点と中点の計四ヶ所を削られ、乱暴に揺らされることによって、土は崩れ始め、槍の攻撃が決め手となったのか、天井(土)が落ちてくる。


当然、ユウトの真上に……。


「うわっ!……ゲホッ!」


見事にかぶってしまった砂を猫のように頭を振りながら、落とし、口に入ってしまった土を吐き出す。


落ちてきた天井の土は、足の膝辺りまでを埋めつくしたので、そこから片足ずつ抜け出す。


後は、上がるだけなんだが、ユウトは指輪から、武器を呼び出し(コール)する。

大量に…。


そして、何と本来武器として使われる筈のそれらに乗ったのだ。


武器を足場としながら、這い上がり、ついに外に届くまで来た所で無理矢理両手を置き、体を上げようと踏ん張る。


『くっ!だが、もう一度作り出せば…!』


その時、不命のそんな追い詰められているとでも言うような声がした。


そして、ユウトには分かっていた。


「「無駄よ(です)!でしょう(ですよね)!ユウちゃん(ユウトさん)!!」」


二人がユウトの名前を呼ぶことを…。


「あいよっと!!」


足下に大きな鉄球を呼び出し、それを足場に飛び上がる。


「『馬鹿なっ…!』」


すぐ近くにいる不命の叫びと、アホ面を拝んで満足しそうになるユウト。


「(あ…、そういや、地面に埋められた怨みがあった…)」


そう思うと、ニヤリと口の端を上げる。


「さぁてと…、どこぞの主人公達は、相手の能力を打ち消す力を持つんだけど…、僕の能力を応用したら、似たようなことは可能なんだぜ?」


そう言って、ユウトは右手を大きく振りかぶり…。


『やめっ…』


「特に精神を乗っとる技とかはな!つまり、僕とお前じゃ相性は最悪って訳なんだよ!」


思いっきり、不命の取りついたシャーガの顔面に拳を振り抜いたのだった…。






「てな、訳なんですよ!」


ユウトは前置きも何もなしにいきなりそう言った。


「いや、いきなりそう言っても、絶対に伝わらないからね…ユウちゃん…」


あきれるマリナ。


「あの~、ユウトさん…。地面の中にある武器…。三つくらい壊れてますよ?」


「なっ!なんだってぇ!」


そんな馬鹿なやり取りをしながらも、久し振りの日常会話を楽しむユウト…。


「いやいや、地面に突き刺したり、蹴ったり、踏んだりしたら、流石に壊れるわよ…」


「あれっ?さっきのって、俺の回想だよね?なんで、分かるの?」


「いつものことよ…」


「心の中読まないでくれる!?…あ、これ、久し振りに使ったわ…」


そんな二人だけの会話が少し面白くなかったのか、ヒマリも…。


「ユウトさん!一日、私のペットになりませんか?」


「いきなり、どうしたの!?え、マリ姉なんかしたの!?」


「いえ、何でも言うこと聞くって言ったじゃないですか!だから、それです!」


「少なくとも、マリ姉の影響は若干入ってるからね!」


「あら、失礼しちゃうわ…」


「マリ姉にそんなことを言う権利はないからね!」


「あ……、もしかして…、ユウトさんはご主人様の方がお好み…でしょうか?……な、なら!べ…別にそっちでも……」


「ヒマリちゃんもいきなりぶち込むんじゃありません!」


「ねぇ…、ヒマリちゃん…。知ってるかしら?petって辞書で調べてみると、女の人のショタな愛人って意味があるのよ?」


「なっ!何を小学生に教えてんのさ!マリ姉…」


「はぅ…!」


「ほら、ヒマリちゃんの顔が赤く……」


「わ、私……!頑張ります!」


「ヒマリちゃんん!?少なくとも、今の会話に頑張る要素は一つもなかったからね!黒石さん絶対に許しませんからね!」


そんないつもの会話が辺りに響いて、ようやくいつも道理に戻る。


そう、戦いなんて無い。


真の平和に…。


区切りも限りも無い物語のendに…。


なる…「(な訳ないだろう…だって、俺だもん…)」…普通だったら、…。


主人公だったなら、ならないかも知れない…


だけど、だけど、不命の残したものは余りにも大きい…。


「なぁ…、そうは思わないか?アリバック、アルマ、シャーガ…」


「「「………………………」」」


そう言って、振り向いたユウトの目には三人組が写っていた…。


不命の残した悪意は、余りにも大きく切ない…。


恨みや妬みや禍根は、今も残っている。


そして、物語はもう少しだけ…続く……。


はい!いかがでしたか?

三十羽!

いやぁ…、その…

すいませんでしたああああああ!

いや、

このお話で終わらせる予定だったんですよ!

終わらなかったんですよ!

続くんですよ!!!


二章はいつまで進み続けるんだ?

まぁ、後はエンドロール的な…


次回

ダークシリアス

ずれた主人公のお話

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