第二十九物語 「imagination killer ~嘘はいくらでも~」
「さぁ、どうする?不命さんよ!」
『くっ、まさかここまで頭のぶっ飛んだ奴とは…』
「あれれ?キャラがぶれてますよ~」
先程の状況から一転して、俺の挑発が始まる。
だけれど、実は状況は最悪なんだよな…。
精神世界で食らったダメージ。
どうやら、それは、そのまま、現実世界で精神のダメージに繋がるらしい…。
体は五体満足の筈なのに、全身が激しい痛みを訴えている。
多分、もう俺は動けない…。
動けな石さん…。
だが、それは不命も同じことの筈だ。
確かに奴は刃物で無い限り傷付けられないほどの強度を誇ってはいたが、俺のダメージをそっくりそのままくらった今、動くことさえ困難だろう。
でも、だからこそ、こいつは何をするのか分からない…。
くっ、早く、マリ姉と合流たいのに…。
マリ姉の方はどうなってるんだ…?
負けることは無くても敵が逃げ続ければ、時間は減るって言うのに…。
只でさえ、マリ姉の能力は燃費が悪いのだ…。
まぁ、俺もだけどね…。
『くっ、こうなったら仕方ありません…。最後の手段といきますか~!』
ほら、厄介なことになりそうだ…!
「もう、面倒臭いのはご勘弁!」
追い詰められた者は何をしでかすのか分かった物じゃありませんからねぇ!
不命の周りに絶対に良くないであろう闇の空気が集まりだす。
もう、良いだろうよ…、誰もこんなバトルだらけの物語なんか求めて無いから!
会話重視だから!
そして、不命の周りの空気の不快度がピークにたっして、不命は技名を…。
『堕天の囁……「黙りなさい!」…ゴっ!!?』
唱えれなかった。
流石に最大の見せ場にこの仕打ちは酷いんじゃないかな?
何が起きたかと言うと、突然、何者かが技を唱えようとしていた不命を横から弾き飛ばしたのだ。
何者かのせいで、不命はかなりの勢いでぶっ飛んでいったのだった。
つうか、何者かはすぐに分かった。
「あら?ユウちゃんさっきぶり、もう終わったのかしら?」
「さっすがマリ姉!登場の仕方から、スルーぷりまで、全てにおいて突っ込み所が多すぎるぜ!」
とりあえず、言いたいことは沢山あったのだけれど、42文字に纏めてみた。
「あら?全部言ってもいいのよ?無視するけど?」
こうなるから…。
どちらにしろ、不命を倒したことにより、不命の能力は解けて、あの場に囚われていたアリサちゃんや子供達。
それに、あの精神の場に居たことから推察するに何かしらの術をかけられていたであろうアリバック達。
皆は不命の能力から解放されたことになる。
全部救えたハッピーエンドだ。
物語に良くある結末。
こうして、ラストバトルなんかぶっ飛ばして、俺達の物語は終わる……。
かに、見えた…。
「さてさて、後は村の人達を助けて終了かな?」
「そうね。じゃあ、ユウちゃん場所は分かるわよね?教えてくれる?」
「yes!」
とりあえず、あいも変わらず、動けな石さんだからな…。
マリ姉に任せるしかないぜ…。
とりあえず、鍵なんかでも探しに行くのかな…?
あ、壊すから要らねえか…。
そんなことを考えながら、俺は確実に油断して余所見をした…。
して、しまった…。
「牢岩捕砂…」
してはいけないよそ見を…。
俺の周りの地面が突如陥没。
そのまま落下する俺。
マリ姉が思わず、手を伸ばしたのが分かったが、距離があり、全然届かない…。
そして、足を砂に取られ、そのまま岩が辺りを取り囲み俺を完璧に潰しにかかる…。
そのまま、脱出出来ずに…。
「ユウちゃん!!」
最後にマリ姉のそんな声が辺りに響き渡った。
~ マリナ side story ~
「ユウちゃん!!」
マリナの声が辺りに反響するが、そんな声がユウトに届いたのかは分からない。
何故なら、現在ユウトは地面に埋もれている。
強大な岩石と砂の魔法によって…。
生死すら不明…。
普通の人間なら圧殺されるか、窒息死するだろう…。
「ユウちゃん!今、出すから!」
マリナは冷静に次の対処を迫られ、それを着実に実行しようとして。
「無駄だ…」『無駄ですよ~』
それを声に阻まれる。
「っ…誰かしら?」
その言葉は確認であり、疑問から生まれた返答。
何故だか、ここ最近に会った人の中で、同時にその中の二人の声が同時にしたから…。
「分かっているだろう…」『分かっているでしょ~』
異質な声が…。
「……………」
その声の元に振り向き、マリナは黙る、否、黙ってしまう。
そこには、異質な存在が居たからだ…。
「先程の借りを返しに来たぞ…」『先程の借りを返しに来ましたよ~』
そこにいるのは、シャーガなのだろう…。
だが、その半身を異様な雰囲気が覆っている。
黒く黒く、どす黒い、そんなオーラが周りを覆っていた…。
そして、そのオーラの正体を何と無く感じながら、
「もう一度、聞くわよ…?貴方は誰かしら?」
マリナはその事を確かめるために、再度、問う。
「俺は…」『私は~』
だが、その先の答えはマリナには分かっていただろう…。
何故なら、その姿は、シャーガと言うより…
「俺はシャーガだ…」『私は不命ですよ~』『「知っているだろう(でしょう)?」』
不命に限り無く近かったから…。
「第2ラウンドの始まりだ…」『第2ラウンドの始まりですよ~』
重なる声。
不協和音の様に歪で、聞いく者を不快にさせる…。
「何をしたのかしら?しつこく、しぶとく、生き残って…。まるで、寄生虫みたいよ?」
挑発をするマリナだったが、その実、警戒を怠らず、次の動作に移る準備もしている、焦りすぎな程に…。
それほどに異常事態だと言ってしまえば、そこまでだが、実はマリナは凄く、ピンチだ…。
能力を発動できる時間が、あと、3分ほどしかないのだ…。
自身の時間を5倍にしてしまうと、四十秒にも満たない時間で戦闘に勝利しなければ、ならない…。
それ以降は、時間切れ。
体は勝手に休養をとりはじめる。
そうなったら、ジエンド。
間違えなく、人生の終了だ。
しかし、マリナはそれを悟られても、いけない。
悟られたら、長期戦に持ち込まれて、かなり不利になってしまう。
だからこその警戒体制。
隙があれば、すぐに攻撃、不利なれば、すぐに対処、勝機があれば、すぐに勝ちにいく為に…。
だが、
「『ダークボール!』」
次の台詞は、流石のマリナでも予想外だった…。
不命を纏ったシャーガの手から、禍々しく黒い塊が飛んでくる。
まるで、全てを飲み込むかのような、その姿は気持ち悪いとしか、言いようがない…。
マリナは、全てを予想できるわけは無い。
土石の魔法を使うシャーガと、恐らく精神系系統の魔法を使う不命。
そこから、何故闇のような魔法を使うのかが、繋がらない…。
可能性としては、不命が闇の全てを司るという物、先程の技は特殊な魔法具による物、などあるが、どうもしっくりこない。
そんな疑問をマリナが抱いていると、
「教えてやろう…」『教えてあげましょう…』
そんなことを言ってくる、不命。
「最早、俺の勝ちは決まっているからな」『最早、私の勝ちは決まっていますからね』
マリナは内心あきれつつも、そのことを顔に出さず、気付かれないように能力を解く…。
本来の不命なら、こんな軽はずみな行動はしないのだが、よっぽど高揚していて余裕があるのだろう…。
舐められていることにマリナは腹を立てた様子など微塵もなく、寧ろ情報をより多く得るために狼狽した演技をするほどだ…。
調子の違う不命に対して、相も変わらず、マリナは平常運転だった…。
「冥土の土産に教えてやろう…」『最後ですし、教えても構いませんしね~』
「これは……ヤッ…ノ…」『私の使う魔法はどの魔法系統とも違いますよ~』
意気揚々と話始めた不命に対して、シャーガは壊れた機械のような声を出し始める。
先程までは意思を統一して喋っていた不命が、いきなりシャーガの知らない知識を披露しようとして、エラーが起きたのだろう…。
だが、不命は気にせずに話を進める。
『闇の魔法、それが私達選ばれた者達にだけ許された、レベルを超越した力なんですよ~』
そして、不命が軽い調子でもたらした、言葉はこの世界の秘密に関わる重要な物で流石のマリナも唖然とする。
「どういうことかしら…」
思わず、無言を貫こうとしていたマリナが話を聞こうとするくらいには…。
だが、不命は語ることに悦に入っているのか、マリナをガン無視して話を続ける。
マリナの頭に怒りのマークが浮かんだのは気のせいだろう…。いや、気のせいにしておこう…。
『私達が、使う力は二つ…。全てを闇に飲み込む闇の玉を形成する魔法と~』
『そして、各々により、能力が違う禁術とも呼べるほど強大な闇の能力です~』
『この二つを使い分けれる私達は、闇の…………いえ、喋りすぎましたね~』
途中まで暑く語っていた、不命が突如黙る…、どうやら、これ以上は流石に話せないのだろう…。
一人で勝手に話してただけじゃない…と、マリナは視線で訴える…。意味はないが…。
「まぁ、良いだろう…」『まぁ、良いでしょう…』
何がだ…。何が…。との、マリナの心の声は聞こえる筈もなく、不命は杖を構え、意気揚々と…。
「ダークボール!』×10!
その呪文を唱えたのであった…。
十発は流石にきついと、内心マリナは愚痴りながらも、かわすマリナ…。
その表情は常に冷静を保っているが、早く仕掛けないと不利になるのはこちらだ…。
あの黒い玉が何なのか検証するために、お馴染み爆弾岩を呼び出すマリナ。
それを投げ、黒い玉との衝突の瞬間爆発させる予定だった…。
しかし、投げられた爆弾岩を、あの黒い玉は吸い込んだのだ…。
爆発ごと…。
「くっ…………」
マリナはそれにより、気付いた。
あの黒い玉の特性に…。
いたく単純にして、威力は最大級…。
効果はブラックホールと同じく、全てを吸い込むこと…。
冗談ではない…、とマリナは焦る…。
そんな物をファイヤーボールの様にポンポンと出されてはたまったものじゃない…。と…。
能力の出力を全開まであげるマリナ…。
その動きで、直線的なダークボールを全てかわす…。
しかし、それは間違いだ…。
何故なら、直線でないダークボールがあるのだから…。
『誰が、全て直線だと言いました~?追尾式もちゃんと用意していますよ~?』
不名は、そう言って笑う…。
突如、方向を的確にマリナに向け、進みだす二つのダークボール。
それは、マリナにとって絶望の通知ととっても過言ではない…。
「反則でしょ…」
思わず、抗議の声を上げたとしても仕方無いだろう…。
何故なら、このダークボールは全てを吸い込む。
更にそれが追尾式ともなれば、障害物を物ともせずに、進み続けるだろう…。
そんなもの反則以外の何者でも無い…。
『そういう技なんですよ~。闇の魔法は理屈を抜きにして、最強なんです~』
これを避ける方法は3つ…。
一つ目は、術と術をぶつけ合い、相殺させることだが、基本として、人が二人必要だ…。
ユウトが捕らわれた今、マリナ一人では、これは、かなり難しいだろう…。
二つ目は距離をおくこと…。
術の効果範囲を大きく出て、どうなるか見てみることだ…、どんな技にも限りはある…、それを見極めるのだ…。
しかし、ユウトが捕らわれた今、それも論外なのだ…。
マリナが離れた間にユウトに何をされるか分かったものではない。
そして、三つ目は術者を倒すこと…。
だが、不命は謎の術を使ってくる…。
鞭の射程範囲に入り、それらを回避しながら、隙を与えないために一撃で倒せる程の威力のを不命に打ち込めるかは…、正直かけだろう…。
だが、マリナはそのかけに出ないといけない…。
ユウトと自分の為に…。
相手はチートだが、だから、どうしたという話だ…。
こちらは最強なのだ…。
マリナは、自身の心でそう呟き、鞭を構えようとして…、
止めた…。
手を下ろし、能力を解いて、ニッコリと微笑んだ…。
『おや~?降参なさるのですか~?』
不命は当たり前に疑問を抱き、質問する。
その間も追尾式のダークボールはマリナに近付く…。
「そんな訳無いでしょ?勝つのよ。勝って、ユウちゃんを助け出す…」
マリナの目は真剣だった…。
『とうとう精神でも可笑しくなったんですか~?勝負を捨てたら、負けになりますし~、そもそも、ユウトは生きてないでしょうよ~』
「生きてるわよ…。ユウちゃんなら、必ず、ねぇ?そうでしょ?」
一泊、呼吸を起き…。
「ヒマリちゃん?」
「はい!ユウトさんは絶対に生きてますよ!」
マリナは勝利のための鍵となる少女の名前を呼んだ…。
その少女は黒い玉を一つ引き付けながら、元気に返事をする。
そう、そこに現れたのは、少し変わった姿をしたヒマリだった。
『なっ…!?』
第三者の登場に思わず、不命は驚く。
だが、二人は不命などお構い無しにアイコンタクトを取り合い、お互いがお互いとの位置をダンスをするかのように入れ換えて、ダークボールを衝突させる。
双方が双方を吸い込もうとして、互いに消滅するダークボール。
そう、人が二人に増えたのだから、一つ目の作戦を使ったのだ…。
これにより、二つあった追尾式のダークボールが消え去る。
『くっ!だが、もう一度作り出せば…!』
不命はそれに焦り、もう一度呪文を唱えようとして…。
「「無駄よ(です)!でしょう(ですよね)!ユウちゃん(ユウトさん)!!」」
それより前に二人がユウトの名前を呼んだ…。
現実的にはあり得ない…。
生き埋めになった、ユウトがまだ、生きていて、こんなタイミングで現れるなど…。
だが…。
「あいよっと!!」
突如、地面が下に埋もれて、中から学ランを来たユウトがジャンプをして登場する…。
「『馬鹿なっ…!』」
思わず、叫ぶが、それが、不命の最大の隙となる…。
何故なら、不命とユウトの距離はすぐ近くなのだから…。
「さぁてと…、どこぞの主人公達は、相手の能力を打ち消す力を持つんだけど…、僕の能力を応用したら、似たようなことは可能なんだぜ?」
そう言って、ユウトは右手を大きく振りかぶり…。
『やめっ…』
「特に精神を乗っとる技とかはな!つまり、僕とお前じゃ相性は最悪って訳なんだよ!」
思いっきり、不命の取りついたシャーガの顔面に拳を振り抜く…。
衝突、バキッ、と嫌な音が辺りによく響き…。
「まずはその幻想をぶち○す!…なんてね…」
そして、勝利した三人以外立つ者はおらず、シャーガは、完全に倒れ動かなくなった…。
いかがでしたか?二十九羽。
解説は次回まで待って下さい!
すぐに説明を入れますので!