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第二十七物語 「終わらない day dream」

結局優柔不断は主人公になれないお話

夢に似たような暗闇に、俺は立っていた。


さっきの技。


魂の共鳴(ココロコネクト)


二重の意味で著作権に引っ掛かりそうな名前の技だが、相手と自分の心を強制的に共有する(つなげる)技。


つまり、ここは魂、否、心の中だ。


ここに居るのは俺だけでは無い。


沢山の人達が倒れている。


と言っても、大抵の奴はまだ幼い子供で…、とある3人だけが大人だった。


アルマ、シャーガ、アリバック。


俺達と戦った傭兵達。


よくよく見ると、倒れている全員の手足に枷がはめられていて、それらは鎖で引っ張られており、やがて、一つの穴に繋がっていた。


黒く深く大きな穴。


その穴に本能が全力でアラートを鳴らしている。


あれは、闇だと。


例えるなら、ブラックホール…。


子供達は手を取り合っていて、まだ、ブラックホール(仮)とまだ十分な距離が有るが、三人組は、もう直ぐ引き込まれそうだった。


あ~!もう!


仕方無く、本当に仕方無く、三人組に近付いて、掴む。


そのまま、ブラックホール(仮)から、離そうとした所で…。


『させませんよ~』


そんな声が聞こえて、剣が降り下ろされた。


「くっ!何するよ!」


何とか、体を仰け反らせて剣をかわして、そのまま後ろに下がる。


姿を見るまでも無い。


この独特な負しか感じることの出来ない声は…。


「不命!」


考えて見ればここに来た時からおかしかったのだ。


だって、アリバックに魂の共鳴(ココロコネクト)を使った筈なのに、何故かアリバック以外にも大勢の人間が居るのだから…。


つまり、ここにいる人間は全員、こいつの術か何かで…。


『あれ~?貴方に自己紹介をした覚えは~……、ああ、夢の中で貴方が一方的に見ていましたね~』


!?


俺が、三人組とアリサちゃんの夢を見たことに気付いてんのか!?


『改めまして、自己紹介を致しましょう~。私、不命と申します~』


「名乗られたからには、名乗り返さないとな!江○川コナン!探偵さ!」


『…………………いや、貴方~、黒石ユウトじゃ~?』


ば、ばれているだとぉお?


ばれ石さん。


つうか、自重しないと不味そうなのでシリアススイッチ、オン!


だが、見つからない!?


あれ?どこだ?俺のシリアススイッチ?


君のスイッチ何処だろう?見付けてあげるよ!君だけのシリアススイッチ~。


だが、元から存在しない!


やべぇ、テンション高い…。


とりあえず、正解者には!


「うん、正解!」


と、回答しよう。


『はぁ~、貴方には随分と迷惑をかけられますね~』


失礼な?いつ黒石さんが迷惑を?


そんな顔を隠すこと無く、全面に出していると、


『あれですよ~』


と、言って、不命は指を指す。


その指した方向を見ると、その指した先には一人の女の子が皆と同じ様に倒れていて…。


その姿は見覚えがあり、唯一違うのは、彼女が手を繋いだ子供達の中心となっていたことだ……。


知らず知らずに、俺は笑っていた。


『中々外せないんですよ~、これ~。余計なことをしてくれましたね~』


そんな俺の様子を知ってか、知らずか、そんなことを言う不命。


不命は困ったような雰囲気を出していたが、生憎、俺はとても機嫌が良い。


何故なら、手を繋いだ子供達の中心にいたのは、赤く綺麗な髪をした幼い女の子だったから…。


何処かの夢で会った様な女の子は、意識が無い筈なのに、皆と手を繋げたのがとても嬉しそうだった。


もう、これはね、テンションMAXいっけ~!


てな感じだよ!


でも、だからこそ分かった…。


「お前が犯人だったんだな…」


三人組の住んでいる国の子供達が、謎の伝染病で倒れたのは、他でも無い、こいつの自作自演だったんだ。


『だったら…、どうするんですか~?』


ニヤリと笑ながら、言う不命に、俺もニヤリと笑い返すしながら、言い返す。


「決まってるだろ?お前をぶち倒せば、ハッピーエンドだぜ?なら、やること、なすこと、決定済だぜ!」





~ ユウト side story ~


ユウトは、かけ声も無く、一歩、前に踏み出す。


踏み出してそのまま、拳を構える。


対して、不命は何もしない。


まるで、構えなど無いとでも言うように…。


そして、ユウトの二歩目。


先程と同じく足を踏み出しただけだが、三次元においては異なる意味を持つ。


つまり、攻撃の射程範囲。


そのまま、大振りにスイングしながら、右手の拳を振り抜く。


その右手は不命の体をジャストミートして、確かな手応えを感じるユウト。


その拳は呆気ない程、見事に決まり、飛ばされていく不命。


「………………」


何とも言えない違和感が、ユウトの何かを刺激するが、それが、何かは自分では分からない。


飛ばされた不命は、笑ながら「痛いですね~」と言って、立ち上がる。


無傷で…、何のダメージも無く…。


また、近付いてくる不命に踏み込み、蹴り上げ、蹴り下ろしを行い、爪先で不命のアゴを、かかとで不命の顔面を攻撃するが、また、何事も無かったように不命は立ち上がる。


流石に我慢の限界が来たのか、ユウトは


「どういう原理だよ…、体でも強化してんのか……?」


と、聞いた…。


だが、


「教えませんよ~」


不命はそう返して、ユウトはイラッと来た。


「ああ、そうかよ!」


こうなったら、素手で戦うのを止め、武器を取り出そう、として……、


気付く…。


「武器が……出ない………?」


そう、武器がでない。


魔法の指輪が、只の飾りになってしまっているのだ。


「当たり前ですよ~?ここは夢ですし~!」


「マジかよ…」


「マジですよ~」


不命の夢という言葉にユウトは危機感を抱く。


嫌でも抱いてしまう。


それは、指輪が機能せず武器が出ないどうこうと言うことではなく、戦略的な危機感。


それはユウトの戦い方(スタイル)が大きく起因する。


本当はユウトは今までの戦いを騙し騙しやってきたのだから。


他人の技を真似してコンボを繋げて。


武器を切り替え、直接先頭に影響を及ぼすことのできない力を上手く利用して…。


様々な武器で翻弄して、相手の対応を遅らせ。


能力を使って、無理矢理ノーゲームに持ち込み。


相手の力を自分の力で相殺して、相手の隙をついた。


自分自身の実力だけで勝ったことは一度も無く。


手品師の様なその場凌ぎのタネの存在する使い方で。


ユウトは勝ってきた。


そんな戦い方で、もぎ取った勝ちなど、成長とは言えないのに…。






自分の力が必要とされる戦いが初めて訪れて、ユウトは焦る。


だが、焦りなど戦いにおいては、隙にしかならない。


だから、不命の接近に反応するのが遅れた。


「隙だらけですね~」


「くっ!」


ユウトに向かって、不命の蹴りが飛んでくる。


完全に不意をつかれたユウトは、回避が間に合わずに左手でガードしようとして、


グギ!


不命の蹴りを受けた左手が嫌な音を響かせた。


「グッ!」


痛みによる声を無理矢理抑えつけ、そのまま、不命の腹に蹴りをいれるユウト。


そして、その反動を利用して距離を無理矢理開かせる。


不命は近付いて、もう一度攻撃を加えようとし……、


ユウトはもう一度大きく後ろに下がった所で、こけた…。


「なっ…」


見ると、足元にアリバックが倒れていて、それに足をつまずかせたのだった。


単純な周りを把握してなかったことによる、ミス。


「隙だらけですよ~!」


その好機を不命は見逃さない。


追撃をしようと、こちらに近付く。


ユウトは慌てて、アリバックの懐に手を伸ばし、そのまま掴んで、そこを基点とし、無理矢理立ち上がった!


「くっ!」


その動きのお陰で何とか回避することが出来たユウト。


対して、不命はダメージはある筈なのに、相変わらず、無傷だった。


(くっ、左手はギリ大丈夫だが、問題はあいつだ…。何度やってもダメージを無効化される…)


ユウトのそんな心情を知ってか知らずか、不命はいい加減厭きたとでも言うように、語り始める。


「そういえば~、貴方のお連れのマリナさん~?でしたっけ~」


「マリ姉がどうかした?」


ユウトは結構癪だったが、考えを纏めるためにその話を広げることにする。


「あの方は、私に傷を負わせましたよ~?」


「……………………」


しかし、不命の話とは、ユウトをからかうというか、馬鹿にしていた…。


「あれっ~?どうかしましたか~?」


その付け加えられた言葉に…。


「…久々に………プチンと来たぞ、ゴラァアアア!!!!」


ユウトはただ単純にキレた。


そして、そのまま不命に突っ込む。


戦いにおいて、これほどまでに、不毛な始まり方は今までにあったのだろうか?


いや、無いだろう(反語)。


そして、そのまま右手を振りかぶる。


その怒りのせいで分かりやす過ぎる動作に、不命は内心呆れながらも構えをとり、右手でガードする……。


パシン!


そのまま、拳を手で掴んだ瞬間…、違和感に襲われ…、思わず、不命は手を離してしまった。


「……~?」


不命が今の感覚の正体を考えようとしていると…、ユウトの回し蹴りが来たので、一歩下がって回避する。


だが、不命の回避と同時にユウトは蹴りを中断して、体の方向をねじ曲げ、不命に突撃していて、ニヤリと笑った。


「……………~」


不命はようやく、違和感の正体にたどり着く。


道理で違和感があり、パンチが軽いわけだと納得する。


ユウトは初めから怒ってもいなかったし、キレてもいなかったのだ。


あの単純な行動は演技で、それには、なにか意味があったのだと。


そして、大抵の場合こんな状況の後には………、


「隠し球ってね!」


思いもよらない反撃が来る。


ユウトは油断してバランスを崩した不命に拳を叩き込む。


ザクッ!


「なっ!?」


「これなら、どうかに!」


ユウトの攻撃は先程までとは違って確実に不命にダメージを与えた。


不命の体にナイフが深々と刺さったからだ…。


「何故ですか…?貴方は武器が出せない筈……」


「ああ、出せない…、だから借りたんだよ!」


そう言って、不命を見ながら、手の動きだけで、背後のアリバックの方を指差す。


「な、成る程~……」


不命はその動きだけで全てを理解した。


実を言うと、ユウトは指輪の能力が発動しないことには早い段階で気付いていた。


気付いていて、その上で知らない振りをしていた。


打開策を練るために。


ユウトが着目したのは、指輪が只の装飾品とかしていたことではない…。


指輪が存在した所にあった。


指輪の能力は使えないことは、確かだったが、だけど、指輪は存在している。


ならば、武器はどうなるのだろうと…。


そう、ユウトは思いいたった。


指輪が存在したならば、武器も存在するのでは無いかと…。


そして、それを確かめる為に、先程、アリバック達を動かし、武器を確認しようとした。


だが、それを不命に邪魔されかけて、武器を取ることは出来なかったが、存在することは確認した。


次に、周りが見えてない様に見せて、わざとアリバックを足に引っ掻けて転び、回避の支点に見せかけて、その懐からナイフを奪ったのだった。


その際に、ナイフを掴んだ左手が少し切れたが背に腹は変えられないと言うことで我慢した。


作戦が上手く行き、ユウトはニヤリと笑う。


「さぁ、形勢逆転だぜ不命さんよ?」


そう言いながら、距離を詰めていくユウト…。


だが、この戦闘は虚しい。


結局、ユウトのスタイルは変わることは無く。


今回、得られた物も無く。


今まで道理に…。


世界を欺いた勝利。


そんな物には意味が無く。


(ユウト)主人公(ヒーロー)と呼ぶものがいないと気付いていながら。


彼は彼の道を貫き続ける。


そして、彼が、そんな、優柔不断だから、物語はまだ続くのだった。


悪い方向に………。






『仕方ありませんね~。これは使わない予定だったのですが~』『行きますよ~?夢現な人形劇(ドリームパペッター)~!』『さぁさぁ~、躍りあかしましょう~!』

いかがでしたか?二十七羽。

結局何も変わらない主人公のお話でした


正直、あと三話で二章は終われるのでしょうか?

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