第二十四物語 「本気と書いといてマジとride」
「うぅん…」
昨日の夜の記憶が存在しないんだが…?
確か…、あの後、ヒマリちゃんが、ジュースとって来ます!って、言って、戻ってきて、それを口にして…そこから何も覚えてない……。
「何故にこんなことに…」
ベッドを見ると寝乱れ服の二人の美少女がいた…。
正直、あまり、あちらを向けれない…。
ぶっちゃけ、マリ姉とヒマリちゃんなのだが…。
二人は顔を赤らめながら、寝言で「もう、お嫁にいけない……。ユウちゃん責任取ってよね……」「ユウトさん、も、もっと可愛がって下さい……」とか言ってる…。
「意味が分からない…」
俺何かしたのか……?
まぁ、保留にしておこう…。
とりあえず、二人がうなされている様なので、寝乱れ姿を視界に入れないように、頭を撫でる。
すると、二人が何故かハモって
「「それ以上はダメぇええ!!」」
と寝言を叫んだ…。
本当に意味が分からない…。
分からな石さん…。
夜の十二時。
とりあえず、マリ姉の肩をゆさゆさ揺らす。
半目を開けたマリ姉の耳でささやく。
「起きてよ。マリ姉!行くんでしょ?」
「い、い、い、いくっ?やめっ!まだ、その領域には、早いと思うの!」
寝ぼけてやがる。
こうなったら…。
「ていっ!」
「あいたっ!」
必殺、黒石さんチョップをお見舞いした…。
何故だろう、しばらく使ってないこの技を最近使った様な…。
すると、覚醒したマリ姉が…。
「まさか!?まだ、酔ってるの!?」
とか、言い出した。
もう、何なんだよぉ~。
この後、目を醒まさせるのに1時間かけた。
そして、午前2時…。
「本当に良いのかしら?」
「仕方ないと思うよ…」
俺と完全覚醒したマリ姉は、ヒマリちゃんを置いて外に出ていた。
ヒマリちゃんは、すやすやと寝ていた。
起きたら、しょんぼりしたり、怒ったりするんだろうな~。
うん、ワンコっぽい。
「ユウちゃん?今、変なこと考えなかった……?」
「か、考えてないよ………?」
マリ姉の問いには、勿論こう答えるね。
何故って?顔は笑顔なのに目が死んでいるから…。
下手したら、殺される。
「それより、ユウちゃん?昨日のこと覚えてないの?」
突如、モジモジして、そんなことを言い出すマリ姉。
「何のこと?」
「お、覚えてないのなら良いのよ!……でも、ちょっと残念な気も……」
ん?後半ゴニョゴニョ言ってて、聞こえない…。
「え?マリ姉?後半聞こえなかったんだけど?」
「何でもない!」
えぇえ…。
何故だ?何故怒ってらっしゃる…。
「ほら!行くわよ!」
「はいはい…」
まぁ、気にするだけ無駄か…。
「それじゃあ、行きますか…」
そう言って、発信器の方向へ歩いていく。
~ 岩の中で ~
「そろそろ大丈夫かい?シャーガ?」
「ああ、問題ない…」
「じゃあ、朝には出発するの?」
ここにいる三人組はアルマ、シャーガ、アリバック順で喋り出す。
つまり、今話していたのは、村を襲った三人組だ。
ここは、岩の中にある隠れ家。
時刻は、午前3時。
三人とも妙な胸騒ぎがして眠れずに、こんな時間に集まったのだった。
「そうなるね…」
「それにしても、三人共、同時に起きている何て、珍しいな…」
「そうそう…。胸騒ぎがして堪らないんだよ…。この場所がバレる筈が無いのに…」
「そうだね…」
何を隠そう、ここは巨大な岩のなか…。
バレる筈が無いのだ…。
「でも…」
そんな中アリバックが呟く…。
「あの、二人組にはそんな常識通用……」
しない様な、と続けそうとした所だった…。
バーン!バーン!パパパバーン!
と爆音が連続で炸裂し…、岩壁が文字道理崩れ去る…。
「たま~や~、おっ、いたいた!」
「ふっ!久しぶりね!爆○岩使うの…、5日ぶりかしら?」
そして、砂塵(岩塵?)の中から二つのシルエットが表れて、そんなことを言ったのだった…。
唖然とする三人…。
あり得ない、ことだった。
何故、岩の中に隠れているのが分かったのか?
何故、この場所を見抜いたのか?
何故、人質が居ない、このポイントを的確に見抜いたのか?
「さぁて、覚悟はできてんのか?金髪ホスト?」
「な、何の覚悟だい…?」
怒気を含んだ声におちゃらけた様子で返すアリバック。
「決まってんだろ?ヒマリちゃんを泣かせた報いを受ける覚悟だ」
~ ユウト side ~
「まさか岩の中に住んでるなんて…」
「呆れてる場合じゃないわよ?」
目的地に到着した俺は驚きを隠せないでいた。
まさか岩の中に三人組が隠れているなんて思いもしなかった。
意が石さんである。
コンコン、と岩を叩いてみる。
うん、堅い、岩だ。
何を言っているんだろう?
「で、どっから突入するの~?マリ姉?」
出てくるのは、当然この疑問。
「爆発します」
「マジでぇ~?」
「本気と書いてマジよ?」
そして、この有り様である。
まぁ、楽しいから良いか!
いちお、『五感共有』を一方的に発動させる(ここ数日で能力になれた)
すると、アリバックにピントが合い、視界を借りると、村の人達の場所を確認する。
マリ姉は、発信器を頼りに爆弾の投擲を行おうとしていたので、人がいる大体の位置を教えといた。
「さぁ!派手に行きましょうか!」
「オウケイ!マリ姉!」
今思えば、ろくな二人では無かったな~。
~ ユウト side now ~
で、現在にいたる、と。
砂塵が未だにパラパラと舞う中、牽制し合う二つの陣営。
こちらは不適に微笑む人が一人、ニヤニヤしてる人が一人。
あちらは真面目な顔一人、ガンつける人一人、呆れた様子の人が一人だ。
奇妙だな~。
「シャーガ!」
「分かっている!」
先に動いたのは向こうの陣営だった。
シャーガが詠唱を開始して、俺とマリ姉の間に巨大な壁を出現させる。
慌てる事無く、壁を挟んで左右に別れる俺とマリ姉。
その動きは最初からその手を詠んでいたようにも見える。
「あ~あ、分断されちまったぜ~」
白々しいこと、この上無い。
壁は天井まで伸びていて、奥まで続いている。
これじゃあ、合流出来ないな…。
こいつを倒すまでは…。
「そう言えば、さっきの返事がまだだったね。やぁ、久しぶり!」
「お前からの返しは予想外だな」
目の前には、金髪ホストが一人で立っている。
まるで、俺の相手などこいつで十分と言われているようだ。
まぁ、二人目来たらたおせないんだけど…。
「悪いけど、分断させて貰ったよ?」
「良いよ?予想内」
「あっさり、言ってくれるね…」
いや、そう言われてもな…。
予想の範疇だし。
「良いのかい?前回は君の負けだったじゃない」
「いやいや、あれは引き分けでしょう」
「まぁ、そう言うことにしておくよ~ 。麻痺にさえしなければ引き分けに持ち込まれることは無いしね!」
言ってくれるぜ…。
挑発の押収を繰り返す俺たちだったが、前回の内容が内容だった為、微妙に不利だ。
まぁ、その減らず口潰してやんよ!
「まぁ、つまり、お前単体なら俺に勝てると思ってんだろ?」
「うん!」
ハッキリ言うなぁ~、うん。
なら、ここらでいっちょ決め台詞でも言いますか。
「安心しろ、お前の技は全て見切っている。十分かからないでこの戦闘は終わる」
「言ってくれるね~。じゃあ、十分後にどちらか立っていた方が勝ちって訳だ」
「ああ、ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうがな」
~ マリナ side ~
まぁ、普通に考えたら別けるわよね。
私って強いから…。
「やぁ、久しぶり」
人の良さそうな笑みを浮かべる、確かアルマだったかしら?
ああ言うタイプはあまり好きではない。
まぁ、返事を返すのを躊躇うわけでは無いのだけれど、相手の考えが分かると、ちょっと困るわね。
「ええ、久しぶり、ね!」
そう言いながら、鞭を横なぎに振るう。
何故なら、尖った土が地面から何本も飛び出して来たから。
はぁ、見え見えよ。
「随分と、ご挨拶ね」
「お前には、この位で丁度良いのだと思ったが?」
あら?言ってくれるわね?
「淑女たる私には手加減が必要だと思うのよ?」
そう言った私は妖しく微笑んでいたと思う。
~ ユウト side ~
俺は指輪からトンファーを呼び出し、右半身を引きつつ構えをとる。
対して、アリバックは構えらしき物は取らず、懐に手を入れるだけ。
先に動いたのはアリバック。
懐から何かを取り出す動作をして、そのまま虚空の手から何かを投げ付ける。
そこには何も無い。
だが、俺には見えている!
一歩、体を横にずらすと、俺の一メートル手前辺りでいきなり現れた投げナイフが、俺の影を過ぎ去る。
そのナイフを目視したあと、そのまま前進して、アリバックに近づく。
アリバックは慌てず、今度は反対側の手で何かを投げ付ける動作を行う。
当然、その手は虚空。
何かを本当に投げ付けているのか、その動作が何かのキーとなるのか、はたまた、意味が無い行為なのかは分からない。
だが、俺には見えている!
「チェリオ!」
この場には全くそぐわない、分かる人にしか分からない、さようならの挨拶を掛け声としながら、俺は右手を振りかぶり、突きを虚空に繰り出す。
何の変鉄も無い突き。
だが、その突きにはトンファーの先端というオマケが付いていて。
尚且つ、アリバックの攻撃の種を俺が知っているとしたら?
キン!と甲高い金属の衝突音が響く。
「!?」
それは、突如現れたナイフとトンファーがぶつかり合い、ナイフが軌道をずらした音だ。
「タネは割れてるって言ったろう!」
「そんな筈は無いよ!」
もう一度、虚空の手を振るったアリバック。
だが、それは間違えだ。
俺は近づき続けている。
そして、あと少しでアリバックに届くのだ。
この距離はもう近接格闘戦に持っていかなければならない距離なのだ。
それを焦りで見誤った。
俺はそこには何も存在しないのに首を傾ける。
すると、また、いきなり現れたナイフがその場所を通りすぎたのだった。
「僕には見えている!」
そして、俺は驚きに表情を染めるアリバックの懐に入り込み……。
振りかぶった、右手の突きをトンファーごと叩き込んだ。
「グハッ!」
人を攻撃した嫌な感触が手を襲うが、知ったこっちゃない。
アリバックは衝撃を受けて、背後に少し浮きつつ飛ばされる。
「なめてると痛い目見せるぞ?」
「な、中々、やってくれるね~!」
アリバックがゴホゴホと咳き込みながら、そんなことを言う。
「さぁ、お前の麻痺と手品は封じたぜ?どうすんだ?」
俺は、それに軽口で返した。
何故、俺が金髪に対処出来ているのかと言うと、ある仮説を立てたからだ。
その仮説が正しければ、金髪の二つの能力の説明が付く。
そして、その仮説が正しいのならば、俺には見えないナイフも、アリバックには見えている。
ならば、使うしか無いだろう。
五感共有を。
どうやら、俺の能力は一方的に接続することも出来るみたいで、それを使うとアリバックの目には、見えない筈のナイフがしっかりと写っていた。
さっきは、俺の能力を使って、アリバックの視界に写ったナイフを避けれたのだ。
「大丈夫!僕には3つ目の能力があるから!」
一撃貰ったことによって、アリバックは冷静さを取り戻している。
そして、ここからが厄介なのだ。
奴の言った通り、能力の応用の三番目にして最も奴の能力の本質を表していると言っても過言ではない使い方。
「こい!」
近接格闘に置いて、これほど厄介な能力は無いと思う。
アリバックは片手にナイフを持ち、一気にこちらに近付いてくる。
そして、距離が縮まりナイフを降り下ろした。
単純なその動作をトンファーでガードしようとして…、そのガードをナイフがすり抜けた!
そのままナイフが体に切りつけられる。
「グッ!」
予め、こうなることは分かっていた為、後ろに下がろうとしていた為、かすり傷ですんだが、敵の攻撃は一度では無い。
追撃に横蹴りを放つ、アリバック。
俺は回避を諦め、その見えている足の少し下にガードを合わせる。
が、見えている位置ともは大きく、ガードしている位置とは少し、離れた位置にアリバックの靴の爪先が刺さった。
「ガハッ!」
そのまま蹴りに身を任せて飛ばされ、体制を立て直し、距離を稼ぐ。
「あれっ?こっちの種も分かってるの?この『虚像にて注意』に?」
冗談じゃない。
種が分かっているからって、回避出来る訳じゃない!
アリバックの攻撃は、実際の攻撃とは、ずれた位置に有るように見えるのだから。
確かにアリバックの五感を共有しているから、何処に腕や足があるのか、頭では理解している。
でも、だからって長年使ってきた、人間本来の防衛反応、視界に写った物への反射が反射的に発動しない訳が無い!
さっきは、見えていなかったから良かった。
でも、今は見えていることが仇となっている。
くそ!分かっていてすらこんなに厄介だとは…。
「ああ、お前の能力なんて分かってんだよ!光の屈折の使い手さんよぉ!」
「あ~あ、トリックがばれちゃったな~」
そう言ったアリバックには、全く、残念な様子は無い。