第十七物語 「そしてまたdream…」
一日遅れてすいません。
今回は、日常パートです。
「それで…?ユウちゃんは寝惚けていて、抱き付いちゃったと?」
「はい…。まことに申し訳ございませんでした…」
「で?ヒマリちゃんの方は、昔会ったことのある人に似ていたから、で良いのかしら?」
「はい!す、す、すみません!」
俺達は今、絶賛正座中だった…。
いや、何かさっきのハグ(抱き付き?)について説明させられたのだ…。
まぁ、さっきの奇行があったし…、反論なんて出来ないぜ~。
誰だ、今ロリコン言ったやつ?
「まぁ、今回は不問にしとくわ。でも、ユウちゃん?下手したら捕まるわよ?」
「そこは…、うん。何とも言えない…」
反論出来ないな…。うん…。
マリ姉は呆れたようにはぁ~、と溜め息をつく…。
「じゃあ、この件はもう触れないから…。いい加減、自己紹介くらいしたら?」
そうだった、そうだった。うっかりしてたぜ。黒石さん。
お互い、名前は分かってるんだけど、正式に自己紹介なんかはしてないな…。
「黒石ユウト。十三才。職業傭兵。趣味は睡眠と読書。苦手な物は勉強。よろしく!」
「あ、えっと…ひ、ヒマリです!十一才で、動物と遊ぶことが好きです」
「うん!よろしく、ヒマリちゃん!」
一生懸命な自己紹介に思わず笑顔が漏れてしまう。
その笑顔のまま返答を返す。
俺は、向こうの世界で小学生にあたる、年下のヒマリちゃんが、将来、絶対に可愛い系の美少女になるだろうな~、等と勝手に考察する。
「よ、よろしくお願いします。あ、あの…、あの時は助けてくれてありがとうございます!」
「あ~、うん。気にしないで良いよ…。マリ姉の方が活躍したし…」
純粋な笑顔を見せるヒマリちゃんに対して、すこし、歯切れが悪くなる俺。
実際、マリ姉が活躍したしね……。うん。
「そんなことないです!」
だが、ヒマリちゃんは強く反論してくる。
「いや、あるよ…。だから、礼なんて…「実際はユウちゃん、照れてるだけだから~」マリ姉!?」
ちょ、まっ、なんてこと言うんだ!
「しかも、こんな時は相変わらず心の中でも嘘つくしね~♪」
「黙ってろ!ってか読心術すげぇ!」
相変わらず、恐るべしマリ姉。
何でことごとく俺のキャラ明るみに出すの!?
つうか、照れ隠し位普通にさせてくれませんかねぇ!
「へぇ~そうだったんですか~」
「ほら、何かヒマリちゃんがニヤニヤしてるよ!面白そうな物、見つけためだよ!」
さっきまでの真面目な顔が一転しちゃってるよぉお!
何だよぉ!女の子怖いよぉ!
その後一時間は俺は二人のおもちゃでした。
まぁ、ヒマリちゃんと思った以上に仲良くなったから…良いか…。にゃはは…。うん。良くねぇよ。
ヒマリちゃんが下に俺の着替えとなる物を取りに行ってくれた。
二人になった俺達。
そこで、唐突にマリ姉が話し掛けてくる。
「そう言えば、ユウちゃん?今元気なの?」
「ん?元気、元気~」
「体調は?」
「万全だよ~」
「したの方は?」
「全然大丈夫~!って!何でやねん!何でここで下ネタ挟む!」
「いや、お節介焼いとかないといけないでしょ?しただけに…」
「上手くねぇよ!つうか、何言ってんだよ!さっきまで十分弄ったろ!」
「下を?」
「俺を!!」
「まぁまぁ、落ち着きなさい…。あんまり暴れると濡れるわよ?」
「何処がだよ!?そして、誰のせいだよ!」
「ユウちゃんの汗で布団がだけど?」
「ぐっ!」
しまった…。嵌められた…。
そういや、誰のと言う所には一切反応しなかったな…、マリ姉…。
「あれ~?ユウちゃん、何を想像したのかしら~?」
白々しい態度をとり、ニヤニヤと笑うマリ姉。
くそっ…。いつも敵わねぇ…。
「騒がしいんですけど…?どうかしたんですか?」
タイミングが良いのか悪いのかヒマリちゃんが戻ってきた…。
「ユウちゃんが…」
「わぁああ!」
マリ姉がいきなり喋ろうとしたので、急いで遮る。
どうせ、ろくなことを言わないことは分かっている。
「どうして遮るのかしら?ユウちゃん?」
「小学生がいるだろう!話すなよ!」
「も、も、もしかして私が知らないようなエッチぃ話ですか!?す、すいません!ごゆっくり!」
「こっちはこっちでめんどくせぇ!」
顔を真っ赤にして俯きつつも、要らぬお節介を焼いてくるヒマリちゃん…。
この子、ピュアだ…。
マリ姉と揃ったら、太刀打ち出来ないよ…。
つうか、この発想に走るってことはマリ姉、何か吹き込んだな?
「塞ぎ込んだのよ?」
「何が!?」
何かマリ姉の発言でいきなり聞くのが怖くなる。
あと、心読むな!
そして、第2ラウンドに突入してまた弄られる。
なぁ?そろそろ物語進めようぜ?
「で、本題になるんだけど…」
「最初っから、そうすれば俺はこんなんにはならなかったろうよ…」
ベッドの上で疲れ果てて、何故か、だて眼鏡をかけて髪が逆立った変人がいた…。
つうか、俺だった。
「まぁ、悪乗りしすぎたわね…」
「ヒマリちゃんと一緒に嬉々としてたしな…。そんなにいじめたいか…」
「違うのよ!弄りたいのよ!」
「対して、変わらねぇよ!なに、堂々と発言してんの!?この人!!」
驚きだよ…。
そんなに弄りやすいかにぃ~?俺?
どっちかと言うとS、つうか、ドS何だけど…。
まぁ、腹黒タイプみたいな…?
「まぁ、その話は置いとくわね…」
「置くのかよ…」
まぁ、良いけどさ~。
「これからどうするの?」
「それ?聞く必要あるのかしら?」
「何でお嬢様口調なのよ?」
マリ姉がはぁ~、と溜め息をつく。
「何でって…、ボケてみたから?」
だって、シリアス嫌いなんだもん…。
「いちを口に出して宣言してくれる?」
「あの三人を見つけ出して、殴って、全員助ける。それだけだけど?」
俺が聞くまでも無いことを話すのに対して、マリ姉は「ふぅ~ん、全員ね…」と呟いた。
なんか、おかしいとこあったか?
マリ姉はしばらく考え込むような素振りを見せて当然とも言える質問を投げ掛けてきた…。
「で、ユウちゃん?どうやってあいつら見つけるの?」
「うっ!」
それは盲点だった…。
どうやって見つけるか…。
考え込む俺の態度に満足したのか、呆れてながら笑っているマリ姉。
「もう、しょうがないわね…、発信器はつけてあるから場所分かるわよ?」
「さっすがマリ姉!愛してるぜ!」
やっぱ、仕事が早いな…。うん。
何で発信器持ってるんだ?とか俺は突っ込まない。
「常備してるからよ?」
「聞きたくなかった!」
何でこんなタイミングで心読むんだよ~。
まぁ、それがマリ姉何だけど…。
はぁ…。面倒くせぇ…。
「あ、ちなみにユウちゃんにもつけてあるから」
「へぇ~、って、何でやねん!マジか!?」
「マギか?」
「某魔法少女アニメ風に言ってんじゃねぇよ!何でさらっと驚きの事実を告げるよ!驚きだよ!」
何でそんな軽く言えるんだよ!?
カップラーメンあるわよ?位のノリでよく言えたな!
じゃあ、俺の行動は常にマリ姉に筒抜けだったのか!?
なに、そのストーカ紛い!
怖いわ!!
「ユウちゃん?私、知ってるわよ?悲しくなったら、一人で公園に行ってブラン…「申し訳ございませんでした!」…まぁ、良いわよ?」
これが直角90度のお手本!
くっ!上手く発信器使ってやがる…。
おい誰だ!生暖かい目で見てるのは!
「そうだったんですか…」
「ヒマリちゃん!?いつからそこに!?」
さっきまで居なかった筈のヒマリちゃんが何故か俺の隣にいた。
最悪だった…。
「悲しい思いしてたんですね…」
「止めてぇ!哀れに満ちた顔は黒石さんのライフはとっくにマイナスだよ!」
何かお仲間を見るような目で見られている気がするのは気のせいだろうか?
「ヒマリちゃん?いつからそこに居たのかしら?」
「えぇっと…、ユウトさんの悲しい思いの話辺りでしょうか?」
「そう…」
おそらく、俺達の話が聞かれてないかと、疑念があったのだろうマリ姉の問いにヒマリちゃんは普通に答える。
嘘はついてはいないだろう…。
いや、俺としてはその秘密聞かれたく無かったけど…。
マリ姉にどうするの?と目線で問いかけられる。
俺としてもマリ姉としても、ヒマリちゃんを巻き込む気は無いので、明日の夜で、と目線で返しておいた。
大丈夫、あいつらは傷を負ってる。
主にマリ姉の…。
「………」
なんか、睨まれた…。
とにかく、しばらく動けないだろう。うん。
「あ、お茶を持ってきましたよ…」
「あ、ありがとう」
悪い空気を察知してくれたのかヒマリちゃんが予め持ってきていたお茶を出してくれた。
うん、ほっこりする…。やっぱり、良い子だ…。
「いいこ、いいこ~、よしよし~」
「ふぇ?ふにゃぅ~」
はっ!?俺は何を!?
気が付くと俺はヒマリちゃんの頭を撫でていた。
何だろうこのなで心地は…?
フィット感と髪のサラサラ感がなんか良いな…。
一言で言うとなついてくる猫?
つうか、いきなり撫でてよかったのか?
まぁ、ヒマリちゃんも目を瞑って気持ち良さそうにしてるから良いかな?
「ユウちゃん?ウフフ~」
良くなかった…。うん…。死んだ…。
なんかすごいオーラを身に纏ってらっしゃる!
「ま、みゃ、むゃ、めゃりねぇ!」
ちょっと!何でここで噛むんだよ!俺!
恐怖の余りに口元が!
つうか、どうやって発音したんですかい!?今の!ナウ!
「ふにゃ~。もっとぉ~」
つうか、俺の手!いつまで撫でてるのぉお!?
その精神には感服だけど!命が惜しくないんですか!?
いや、今のヒマリちゃん完全にされるがままモードで可愛いけど!
ちくしょう!人は本能には逆らえないと言うのか!?
「良い根性してるわねぇ~?」
ぎゃああ!死んだよ!これ!
マリ姉の髪が元気よく軽く逆立ってらっしゃる。
空虚な笑顔に軽く死ねるよ!
くっ!ヒマリちゃん!
「えへへ~」
駄目だぁ!あっちの世界から帰ってきてない!
めっちゃくちゃ気を許した太陽のような笑顔!!
つうか、可愛いなコンチクショウ!
お持ち帰りたいぜ!
って!いつまで頭から手をどけないつもりなんですか!俺の手!
磁石でも詰まってんのか!俺の手!
本能に忠実すぎるのか!俺の手ぇええ!
「ほんとに良い度胸ね…」
ほら!ハイライト消えちゃってるよ!
作り笑いが消えて無表情だよ!
「フフッ?」
「えへへ~」
「ハハッ…ハァ…死んだ」
その後の記憶はない。
だが、最後まで俺は手を離すことはなかったらしい…。
馬鹿なの?死ぬの?
マリ姉にぼこぼこにされ、ヒマリちゃんと楽しく談笑した後に、予想以上の大量の夕食を食べた。
「ヒマリちゃんの料理旨かったなぁ…」
一人呟く。
今俺はボッチだ…。
二人はおふろ。
いや、覗かねぇよ!
って、誰に突っ込んだ?俺?
まぁ、気掛かりなのは、ヒマリちゃんだ…。
一見、普通そうに見えるが家族や友達を拐われて普通でいられる訳がない…。
きっと、何処か無理をしている…。
「まぁ、マリ姉なら大丈夫かな?」
従姉妹の手腕に丸投げする俺。
それより、問題はこっちなのですよ…。
はぁ~、と溜め息をつく…。
面倒くせぇ…。
俺は夢でヒマリちゃんの過去を見た…。
これが俺の能力かは分からない…。
いや、推察は一つある。
過去を共有化させた確率。
今ん所、これが一番高いけど…。
それより、問題は…。
「なんか、あと二つくらい見ないといけなさそうなのですよ…。めんどくせぇ…」
頭の中に何とも言えない違和感が二つあり、それがヒマリちゃんの夢の感覚と似ているのだ…。
感覚って言っても俺が感じているだけかもしれない…。
でも、ヒマリちゃんの時には俺のするべき事があった。
今回もあるいは…。
更に襲ってくる睡魔…。
これは、こっちも見ろと言うことですか?
神様?
まぁ、眠いから良いけどさ…。
「ふにぃ~」
バタリとベッドに倒れ込む。
枕に顔を埋めた俺の意識はもうない…。
いかがでしたか?
次はいよいよ今回の章の真実に近づいていきます!
そして、まさかのゲストキャラも…?
更に更にこれからのユウトに関わる重要な…。
まぁ、ここら辺にしましょう。
では、また来週。