第十六物語 「cuteなgirlを可愛がある…」
~ story ~
「うっ………、ここは?」
部屋の中で一人の少女が目を覚ます。
ゆっくりとベットから起き上がるその姿はどこかの国のお姫様の様であった。
長い黒髪を持ったその少女は、他ならぬマリナだ。
「あっ…、気が付かれたんですか!良かった…」
その起き上がったマリナに近付くのは、また、別の女の子。
「貴方は…、あの時の?」
「はい!助けて頂いてありがとうございます!」
まだ、意識が覚醒していないマリナとは対照的にハキハキとした様子で答える女の子。
その女の子はユウトとマリナが助けたあの女の子だった。
オレンジの髪のセミロングに、長く短いピンクのリボンで小さめのアップテイルを作っていて、可愛く無垢な顔立ちをした活発な女の子のようだ。
「ここは何処なの?」
大部意識の覚醒してきたマリナが尋ねる。
「村外れにあるこの村唯一の宿です…。村にある家は…もう……」
暗い顔をしてしまった女の子に、マリナは気遣いが足りなかったと思う。
この宿が残っているだけで、後は全て焼けてしまったのだろう。
「そんな顔しないで?こっち来て?」
「え?ふぇ?」
マリナは女の子を近付けて頭を撫でる。
「ふぅみゅぅ~」
女の子は目を細め猫のように気持ちがっている。
しばらくして、マリナがてを放しら名残惜しそうな顔をするが、慌て正気を取り戻す。
「はわわ!すいません!お恥ずかしい所を!」
「良いのよ。気にしないで」
和やかな風景がそこにはあった。
顔を真っ赤にする少女に気を使わせないように話を変えようとするマリナ。
「自己紹介がまだだったわね。私はマリナよ」
「ヒマリです!よ、よろしくお願いします!」
「ヒマリちゃんね…。そう言えば…、貴女がここに運んでくれたの?」
「あっ!いえ!あの方が動けない私とマリナさんを!」
「え?っ!ユウちゃん!?」
ヒマリが見た先を追うようにマリナが見るとそこには、うなされて苦しそうなユウトがいた。
慌て出すマリナ。
それに対して焦ったヒマリは声を張り上げる。
「落ち着いて下さい!傷は塞がっていますから!」
その言葉にマリナの脳は急に冷静を取り戻す。
(傷が塞がった!?あり得ないわ…。あの傷に恐らく麻痺毒。こんなに早く治るわけがない。やっぱり、ユウちゃんの能力の真髄は……)
そこまで、考えた所で考えを中断させる。
気付いたのだ。
一見、普通に見えるヒマリが内心さっきのマリナより慌ていることに…。
無理もないだろう。
見たところヒマリはユウトより年下。
加えて彼女は医師の知識などない。
ユウトがどんな状況なのか見た目にしか分からないのだ。
更にマリナが気絶していたせいで彼女は、ずっと一人で二人を看病しなければなかった。
心が弱っていても可笑しくはない。
マリナは冷静に、今自分がやるべきことを模索する。
そして、ベッドから立ち上がるとユウトに近付き傷ついた体を見る。
不器用にも頑張って包帯が巻かれている脇腹を見てヒマリの頑張りを察する。
包帯の上から傷を触ることで傷が完全に塞がっていることを確認してユウトの額に(濡れタオルを外して)手を当てる。
息を荒げているが大丈夫そうだと確認するとマリナは少女に向き直る。
「傷も塞がっているし、たいした外傷はない…。大丈夫よ。只の熱」
その言葉にパアッと笑顔を咲かせるヒマリ。
「……良かった…」
そう言ってゆっくりと床にへたり込む。
どうやら、腰砕けの様だ。
「大丈夫?」
「あ、安心したら腰が抜けちゃって…アハハ」
空虚な笑いで誤魔化すヒマリ。
ヒマリに腰砕けが起こるのも仕方がない。
今までの一人での誰も起き上がらず、安全なのかも分からない状況が産み出すプレッシャーが一気に解決したのだ。
寧ろ今までプレッシャーに潰されなかったのを誉めるべきだ。
マリナは誤魔化しを見抜いている。
そのうえで、ヒマリに近付くとしゃがんで、力強く抱き締めた。
「…………」
混乱したようすのヒマリに優しく声をかける。
「ありがとう。私達を看病してくれて…、一人で頑張ってくれて…。本当にありがとう」
そう言ってヒマリの頭を撫でるマリナ。
その優しい言葉と行動に…ヒマリは……。
「あ、あれ~、可笑しいですね……、何で嬉しいのに涙なんか…………」
「良いのよ。泣きたいときは泣いて…。疲れたんでしょ?嬉しいんでしょ?良いのよ」
「わ、私うるさいですよ………」
「私が許すわ」
優しく背中を擦るマリナの優しさに触れて、ついにヒマリの顔から一筋の涙が流れて落ちた。
「……う、うわあん!…ぅっ!怖かったんです!…ひっく…、もう起きないんじゃないかって!……っつ!でも、でも二人共無事でぇ!……ぅ…、私は一人じゃなくて!」
ついに泣きじゃくるヒマリをマリナは母のように優しく抱き締める。
「ごめんね…。よしよし…」
「うわぁぁん…!」
しばらくの間、泣く女の子と慰める少女の声が宿で聞こえた。
「ユウトさんって、どんな人なんですか?」
泣き止んでしばらくたった後、ヒマリが口にしたのはそんな言葉だった。
「そうね…。生粋のお馬鹿さんかしら…」
寝込んでいるユウトのベッドに腰掛け、ユウトの頭を撫でながら嬉しそうに語るマリナ。
顔はヒマリの方を向いていて、その赤くなった泣き跡には気付かない振りをしている。
「確かにそうですね。私、動けなかったんですけど意識はあって……、自分のことより、まず私達だぁ!って雰囲気を出してましたもん」
反対側の椅子にヒマリは腰掛けている。
「あら?変なことしてなかった?」
「いえ…。もう周りが見えてない様で宿を見付けて私達を寝かせた後…、自分は床に倒れ込んでましたもん。優しいんですねユウトさんって…」
「ええ。ユウちゃんは優しいわよ?誰にでもだけどね…。惚れちゃわないようにしなさいよ?」
「はい。気を付けます」
二人共、笑いあっている。
少し強めのスキンシップをしたからか大部仲良く会話できる様だ。
しばらく、乙女の雑談に花を咲かせていたときにマリナがこんなことを言い出した。
「所で私達ってどのくらい寝てたのかしら?」
「1日位たったと思います」
「そう…。おかゆある?」
「あ、はい!有りますよ」
テコテコと立ち去り、しばらくして、お茶碗を持ってくるヒマリ。
「ありがとう」
「いえいえ」
マリナはそれを受け取るとスプーンで少量すくい、ユウトに食べさせようとするが…。
「あら…」
「食べてくれませんね…。どうしましょう」
ユウトは寝ていながらも頑なに食べるのを拒否している。
それは、マリナにとって困る事だった。
今、ユウトは傷こそ塞がっているが体から大量の血が抜け落ちている。
ヒマリには悟られないようにしているが、その分体力も低下していて何かを食べてくれないと危ないかも知れないのだ。
「仕方無いわね…」
マリナはやれやれといった様子で首を降る。
ヒマリは気付いていないだろう。
これからすることにマリナは心を弾ませていることに。
マリナはおかゆを自分の口に含む。
「あ、あの?何を?」
ヒマリの問いに答えず、マリナはユウトの口を開け、寝ているユウトに口付けをした……。
「ひゃあ!」
その小学生には刺激的な光景に思わず顔を手で隠すヒマリ。
まぁ、ちゃっかり指の間から見てはいたのだが…。
しばらくして、マリナが答える。
「何って…。口移しよ?ヒマリちゃんにはまだ、早かったかしら?」
手がかかる弟に仕方無いなような感じで助けて上げる姉の様な表情(内心では喜んでいる)を見せるマリナ。
ちなみに寝ていたユウトは口に入ったものを条件反射で飲み込んでいる。
「く、口移し…」
ヒマリの頭ではその単語と光景がリプレイされ続けており、頭がオーバーヒートしそうになっている。
「やる?」
「いえ!結構です!」
顔を真っ赤にして首を降るヒマリにクスリと笑うマリナ。
ヒマリをからかって遊んでいる、この辺りがマリナのマリナたる由縁だろう。
その後もおかゆの中身が無くなるまでマリナは口移しを繰り返し、ヒマリはそれを指の間からこっそり見続けていた。
まぁ、当然気付いていたマリナに後でからかわれるのだが…。
~ ユウト side story~
(ここは…?何処だ?)
縦も横も無い世界をユウトは漂っていた。
そこに一つの淡い光が射し込む。
「っ!」
その眩しさに目を瞑り、次に目を開けると風景が変わっていた。
『皆!待ってよ~』
(ここは…?)
時刻は昼頃。
そこでは、オレンジのショートヘアをした女の子が同年代の子と遊んでいた。
「ねぇ?君?」
話かけようとしたユウトに今にもぶつかりそうになる女の子。
慌て避けようとするが、女の子はユウトの体をすり抜けていった。
「!?」
一瞬慌てるが直ぐに落ち着きを取り戻すユウト。
(どうやら、向こうから俺は見えてないみたいだな…)
仕方無く周りを観察することにした。
どうやら、六人位の男女で追いかけっこをしてるみたいだ。
『ま、まってよぉ!』
何故かその中で追いかける側のオレンジのショートヘア女の子に目が止まる。
しばらく見ていたが、女の子は足が遅くとても追い付けそうにない。
『ちぇ!つまんねぇの…。お前入れたら直ぐにこれじゃん!皆行こうぜ』
まだ、幼く我慢を知らないのか痺れを切らし、女の子を置いて他の所に遊びに行く子供達。
『ま、待ってよぉ…』
泣きそうな顔で必死に叫ぶ女の子。
だが、その声は誰にも届かない。
(なんか、後味悪いんだよにゃ~)
こちらから干渉出来ないことを知っているユウトは不機嫌そうだ。
しばらくして、その場に誰も居なくなり、女の子は膝を抱える。
(誰もいないのかよ…)
ユウトは無意識に女の子に近付く。
時間は一時間をたとうとしていただろう。
そんな時だった。
『にゃあ~』
少女に一匹の猫が鳴き声をあげた。
尻尾を三本持ってはいたが、ユウトは気付いてはいない。
『猫さん?』
『にゃあ!』
『私と遊んでくれるの?ありがと!』
『にゃ!』
猫と少女は会話をしている様だった。
いや、してるのかも知れない。
だが、そんなことはユウトには些細な事だった。
「やっぱ、動物ってすげぇな…」
そう呟くユウトの顔は誰にも見えない。
その後、女の子は猫と暗くなるまで毎日遊んだ。
もう、同年代の子とは遊んでいない。
ある日の事だ。
『どうしたの?ミカン?』
『にゃあ!』
『鳥さん?大変怪我してる!』
猫はミカンと女の子に呼ばれている。
そのミカンが翼が傷付いた鳥を見付けて女の子に教えたのだ。
直ぐに女の子は家に連れて帰り親に手伝ってもらい看病した。
鳥は体が良くなって自由に空を飛び回れる程回復した。
『綺麗な三色の羽だねミュー』
『ピィ!』
女の子は鳥とも仲良くなって友達になった。
ある日のこと。
『捕まえたぞ!狼め!』
『ワォン!』
『こら!大人しくしろ!』
村で狼が捕まえられた。
近くをうろうろしていた所を捕まえて村人も安心していた。
だが、それを良しとしない者がいた。
女の子だ。
『止めて!その子は悪い子じゃない!』
『子供の口出しすることじゃない!こいつは狼だ!悪い奴なんだ!』
『違う!その子は悪い子なんかじゃない!』
そう言って、捕らえられた狼に近付く女の子。
『おい!近付くな!』
大人の警告など、女の子には無意味だ。
『ガルル!』
近付く女の子に威嚇する狼。
『大丈夫。怖くないよ』
『ガア!』
『知らない所に来て怖かったんだよね?おいで?』
女の子は優しく手を差しのばす。
『ガル!』
しかし、女の子が差し出した手に噛みつく狼。
『っ!怖くないよ?ね!』
だが、諦めずに狼を撫でる女の子。
『クゥン…』
その女の子の姿勢に狼は警戒を解き噛み付いて閉まった女の子の手をなめる。
『ははっ!くすぐったいよ~』
『信じられん…』
その後スキンシップを取る女の子と狼の姿に絶句する大人達。
「僕には真似できないな…」
ユウトはその光景に思わず呟く。
「狼の方も噛んだのは警告の物で女の子は傷ついてないしね…。一件落着。ひゅ~」
狼に噛まれたはずの手から血が出てないのを確認してユウトは口笛の真似事をした。
勿論、女の子は狼とも仲良くなった。
はい!
いかがでしたか?
マリナさんが大胆な事をしちゃって、
ユウトが何をしているのか分からない、
そんな話でした。
女の子の正体は誰なのか?
まぁ、分かるかな?
そんなことを楽しみに来週を楽しみにしていただければ!
それではこの辺で~