第一物語 「start trip ~始まりは日常から~」
訂正 2014/1/27
「待てや! ごらあああ!!」
そんな大きな声が辺りに響く。
どうやら、声の持ち主は誰かを追っているのだろう。
「知るかよ! こんちくしょう!!」
「馬鹿! いちいち返すなよ!!」
対して、逃げるのは二人の少年。
片方は、黒い髪をツンツンと尖らせた長身の少年。
もう一方は、茶色いくせ毛にアホ毛をライドした小さめの少年。
「何だろ? 今すごく馬鹿にされた気がするんだが……」
「何言ってんだ! 速く走らないと追いつかれるぞ!!」
数的には有意なのに、何故少年達が逃げるのか……「ぐひゃっはあ! 逃げろ逃げろ!!」「どこに行った!」「追え! 逃がすな!」……。
……どうやら、数は追い懸ける側の方が圧倒的に優位なようだ。
「くっそぉ! 団体さん引き連れやがって!」
「くっそぉ! 変態さん引き連れやがって!」
「団と変には天と地ほど差があると俺は思うんですがぁ!?」
「「「ぶっ殺す!!」」」
「ほら! こうなった! ふざけんじゃねぇぞ! こんちくしょうぅう!!」
どうやら、茶色い髪の少年が敵を呷っているようだ。
もう一人の黒い髪の少年は走りながら、叫び、突っ込みを放つという器用な技をやってのけている。
「お前のせいだからな! ユウト(・・・)!! 変な輩に首を突っ込みやがって!」
「テヘッ! つい出来心で!」
「許されるかぁ!!!」
まるで、主人公の様な巻き込まれ体質を持つ黒髪の少年。
そして、そんな少年に不幸の災いを持ってきた茶髪の悪友タイプのアホ毛少年。
「だけど、まぁ、仕方ないから! やらかそうぜ!」
「お前といると、こんなんばっかじゃねぇか!!」
「いや、お前は元からだろう?」
「うぐっ!」
黒髪の少年は、図星を突かれたとでも言うように苦い顔をした。
どうやら、この黒髪の少年は日頃からトラブルに巻き込まれているようだ。
だが……、
注目すべきはそちらの主人公ではない。
「だから! 派手にやらかそうぜ!」
この物語はこのアホ毛のトラブルメーカーのお話。
主人公になれなかった少年が異世界へ旅立つ物語。
屋上ナウ!
たそがれナウ!
とまぁ、一人で虚しく呟く俺・・・…。
ボッチです!
まさか、この発言をどうどうと出来るようになる日が来るとは。
ふざけながらも空を眺める。
空は青いなぁ~。
にゃはは~。
あ、今授業時間ね!
要するにサボりだ。
不良じゃないよ?
「はぁ、つまんね……」
隣に現れた白い魔法陣を見ながら言う。
何であるんだろう。
この科学のご時世に……、一人革命でもする気?
まぁ、突っ込みたいところは多々あるな……でも。
「これね……。今日の胸騒ぎの原因」
傍から見たら一人で話す危ない人である。
無言で顔を近づけると真ん中に書いてある『乗ってね♪』の文字が目に入る。
何が『乗ってね♪』だ危なっかしいわ!!
「乗ったら異世界にでも飛ばしてくれるのだろうかこの魔法陣?いいね!楽しそう!」
馬鹿か! 死ぬわ!!
危険度満載だろうよ!
誰が乗るんだよ?
でも、どうすんの俺? どうすんのよ俺? 続かないけれども!
あ、一応、自己紹介。
どこにでもいる普通の中学生。
それが俺の肩書。
理系の根暗で印象でかいけど影薄い言われる。
名前は黒石ユウトさんです。はい。
「まぁ、僕は能力があるわけでも魔法が使えるわけでもないのですよ~」
なのに異世界になんかに飛べるか馬鹿野郎!
馬鹿なの? 死ぬの?
あ、ちなみに俺は心の中では俺だけれども、しゃべる時は僕なのだ。
猫かぶりである……。
でも、まぁ……。
「願いはあるんだけど?叶うの?」
少し、ほんの少し面白そうと思う自分がいて魔法陣に話しかけてみる。
こんなお年頃だから思うところはあるのだ。
いや、意思があるわけでもないし微動だにしないんだけどね。
と、思ってたら『君次第だよ! 働け引きこもり!』の文字が現れる。
いらっとくるね!
誰が引きこもりだよ。
つうか、シリアスになろうとした俺の気持ちを返せ!
普通に普通で普通な中学生の俺がこの魔法陣に出会ったのは偶然である。
普通に普段道理授業寝てたら寝苦しかった訳ですよ。
いらっとして、授業ボイコットして屋上に向かってたら嫌な雰囲気が強くなるわけですよ。
なんか、あるななんてキメ顔した自分を殴りたいね。うん。
面白そうだから行ってみるかくらいの勢いで屋上のかぎ(職員室から拝借しました、まる)を開けドアを開いたらあらビックリ魔法陣!
何その定番王道ファンタジー展開。
そういうのは、あいつの専門にしとけばいいのに……。
実際パニくってますよ!メタパニですよ!
魔法陣って何!?
絶対におかしいよ!?
いや、まぁ夢見がちな人ですけどいきなり来られても困るよ!
美少女とセットだろう!
うん!1人でボケてもつまんない。
だが、まぁ興味津々だ!
でも舐めるなよ?
俺は、そんなに甘くないぞ?
だけれども、願ねぇ……。
ある。
しかもちゃんとした……。
ユウトさんもしんみりはしますよ。そりゃあ……。
いや、騙されちゃいけない!
いくら願のためでもこんな怪しい魔法陣なんか乗っちゃだめだ。うん。
「行くわけねえだろ!」
そうだ。行くわけないと口は発していた。
いたのだが…………。
どうやら、俺の体は正直な方の様で俺は学生鞄(中身は教室においてきた)を片手に飛び乗ったのだった、まる。
我ながら行動と言葉が無茶苦茶である。
つうか、さんざん否定してて乗るのかよというツッコミはなしだ。
魔方陣に新たな表示が出る。
何々?『契約完了! 月々五十万だよ?』って待てぇい! 金とんの!? 取られるの!?
白い光に包まれながら思うことはそれだった……。
もっと、感動とか他のものがあっても罰は当たらないと思う……。
次の文字が表示される『嘘だよ、テヘペロ!』いらっとくる!!
黒石さんが苛石さんになるよ!!
そんなやり取りをしてると異世界に来たのが何と無く分かる。
空気が違うのだ。
白い光が徐々に晴れていく。
目の前にいるのは老人だ。
「異世界シャルローラに呼び出されし勇者よ。この世界のために立ち上がってくれ……」
成程良くあるなこんな文。
ならばこう答えるしかない!!
「だが、断る!」
「えええっ!?」
一度やってみたかったんだ。
驚く老人。
「まぁ、嘘だけど」
「嘘なんかい!!」
うん。中々良いノリだ。
その間抜けな雰囲気に気付きコホンと咳払いする老人。
そして、もう一度。
「異世界に呼び出されし勇者よ。この世界のために立ち上がってくれ……」
「だか、断る!!」
うん、ついつい、この言葉がでてしまう。口は大変正直だ。
正直断る気はなかったんだけど……。
ほら、あれだ……あの……ノリって奴だ。
それに怒る老人。
「断るな!」
「うん、ごめん。良いよ?」
「良いんかい!!」
見ず知らずの老人茶番劇を繰り広げる奴がいた。俺だった。いや、この場合は僕かな?
「で、具体的に何すれば良いの?」
取りあえず真面目に疑問をぶつける俺。
仕事はきっちりこなすタイプ! に、なれたらいいな!
「賞金稼ぎじゃ!」
「勇者じゃねぇ!!」
「うん♪」
「うんじゃねぇ!」
「ぶっちゃけ雑用」
「ぶっちゃけられた!?」
なんという展開だ…。
異世界を救ってくれ! やっぱ、雑用で? だとっ!?
世界救う流れはどこ行った?
世間はそんなに厳しいのか?
「だって、世界ピンチになってないし……」
「じゃあ、なんでよんだんだ!」
「いや、雇用不足を補うために召喚したのじゃ!!」
「なにその画期的な召喚!?人手不足にも程があるだろう!!」
世界じゃなくて、組織を救う流れだった…。
なんだこれ…。
「だってぇ…」
「だってじゃねぇ!」
少し持ってた淡い希望を返しやがれ!!
まぁ……。
「まぁ、暇だから良いけど」
割と、楽しそうだし。
それがトラブルメーカーの真骨頂。
「契約成立じゃな……」
差し出された手を取り握手をする。
なんか、簡単だな……。
「あ、契約金三万ね?」
「金とんの!?」
飛んだ詐欺である。
異世界詐欺。
画期的だ。
やっぱり、あの怪しい魔法陣に飛び込んだのがまずかったか?
「自己紹介が遅れたの儂はハドソン」
「僕は現代の覇王と恐れられた男。黒石ユウトさんでふ。にゃはは」
「肩書き強そう!? だけれども、なにキャラ!?」
「で、何すればいいのさ?」
「うむ。どうぶつ○森みたいに借金を返せばよい」
「借金した覚えがないわ!! つうか、この世界どうぶ○の森あんの!?」
「いや、部下にそちらの世界に買いに行かせておる」
「才能の無駄遣いも甚だしいわ!!」
異世界でも流行ってんだ。どう森。
いや、「だって面白いんだもん」と抗議するハドソン。
何なんだこいつは……。
なんで老後エンジョイしてるんだ。
「まぁ、実際ワシらの組織は財政難なんじゃ。そのために貴様を雇う。必要なものは用意するからお金稼いで振り込んでくれ」
「何なんだよ。この現実味を帯びすぎた異世界。異世界を渡る技術が無駄遣い過ぎるぜ……」
思わずぼやいてしまう。
夢がない……。
「そのためにまずお前に異能を手に入れてもらう」
「マジで!? そう言うの待ってたんだよ! どうやんの? どうすんの? どうなんの?」
「首元持つな!」
まじ大興奮である!
お前! TYUU2に超能力とかなめんな!
「落ち着けお前。意味分からんぞ? 取りあえず、《勇者の神殿》に行ってもらう。本来は異世界から勇者が来た時力を手に入れるための場所じゃ。クリアすると強くなれるぞこの世界の力を得れるぞ」
何その分かりやす過ぎる名前。
「マジか! マジか! まどか!」
「おい、最後のなんじゃ!? 魔法少女はいっとるぞ!?」
「いや、何でこのネタ分かるんだよ!?」
「ワシはDVD全か……ゲフンゲフン!! 何でもないぞよ!」
このじじいオタクだ。
老後生活エンジョイどころじゃねぇよ。
「やっぱ、止めようかな…」
割と切実にそう、思った。
「頼む! ワシのDVD代が経費から削られるのじゃ!」
「泣きつくな鬱陶しい! 分かった。分かったから! つうか、そんな理由!?」
軽く蹴りつけてもしがみつく老人にしぶしぶ承諾してしまう。
良い大人が何してるんだ。
つうか、俺そんなことのために異世界召喚されちゃったの!?
驚愕の事実だ…………。
出来れば知りたくなった。
「で、なにか用意してほしいものはあるのかの?」
「うん。あるな」
そりゃあ、もう、いっぱい。
「なんじゃ?」
「ええっと、……日用品に頑丈なバック、この世界における身文書に振り込み用の口座。武器もほしいな……、トンファーにヌンチャクに扇子に棍と両手剣に曲刀二本にダガー一本、他には…」
「多いわ!!!!」
え? まだ半分もないぜ?
黒石さんなめんなよ?
「まぁ、これくらいで勘弁しといてやるか……」
「何で偉そうなんじゃ!? 全部借金に追加されるぞ!」
「大丈夫だ! 問題ない!」
「問題しかなさそう! どっから、出てくるんじゃ! その自信は!!」
ネタからである。
だって、必要なもんだし……。
ぶうぶう……。
「あ、あとこのローファーと鞄と学ラン強化できねえかな?」
「ふぅ、まぁ新しいの出すよりは着なれたものが良いからの……。どれ、貸してみ? ……って、重!!」
「そうか?」
ローファーと学ランを脱いで渡す。
俺には普通だがな。
「な、何で出来とるんじゃこれ?」
「ローファーはファインセラミックス。動きにくいのが難点なんだよなぁ……。学ランは特殊な化学繊維だけど?」
「あほか! あほなのか! 普通いらんじゃろうよ!」
「いや、喧嘩の時、楽なんだよ……」
これらは、知り合いの従姉妹に誕生日に貰ったものである。
曰く、男は強くありなさいだとさ……。
まぁ、騙されたのだけれども。
曰く、中学生は皆はくのよ。だそうだ。
「ちなみにその縦長い鞄には何がはいっとるんじゃ?」
「もちろん、鉄板だけど?」
従姉妹が中学生になったら必ず入れるものだと言っていた。
「だまされとるぞ。お前」
「えぇっ~!?」
「マス○さん的な驚き方やめろい!」
十三年目の真実である。
くっ、まさか鉄カバンさえだましていたとは、おのれマリ姉!
ローファーだけだと思ってたら!
道理で鞄で殴り合いとかふざけながらやっている奴がいたのか!?
てっきり互いに殺し合ってるのかと!!
「まぁ、整備班に回しとくわい」
「ありがと。最後に一ついいか?」
「なんじゃ、まだあるのか?」
「いや、これで最後だ」
これは黒石さんきっての願いである。
これから、バカやるんだし楽しむ。
そして、トラブル事には巻き込まないといけないやつが居る!
「パートナーが欲しいんだ」
「パートナー? 用意すればいいのかの?」
「いや、そう言う事じゃなく。僕の元いた世界から呼んでほしい奴がいる」