第十三物語 「helpが聞こえて急展開!」
物語は急展開する!
~ 少女 side ~
何時もと同じ様に目を覚まして。
何時もと同じ様にご飯を食べて。
何時もと同じ様に皆と遊んで。
その日は何時もと変わることの無い平凡な1日だった……、筈だったのに…。
「ガルル!」
「駄目だよラッセル!」
「ピッ!ピッ!」
「ミューも、静かにしないと!」
何時もと同じじゃないただならぬ雰囲気に私の友達が騒いでる。
村は火の海に飲まれ、この村の人達は捕まってしまったから…。
死んじゃった人は一人も居ないと思う……。
皆、悪い人たちに捕まっちゃったから…。
何も出来なかった…。
私が、弱いから…。
私には、この子達がいたからどうにかなった…、けど…。
私も捕まっちゃうかもしれないんだ…。
怖いよ…。
誰か、助けてぇ…。
「くぅ~ん…」
そんな私をペロペロとなめながらラッセルが励ましてくれる。
「そうだよね。一人じゃないもんね!」
ラッセルの励ましに元気を取り戻す。
「にゃ~」
「ミカン!何処に行ってたの?」
そんな時、何処に行っていた筈の私の友達が戻ってきた。
「にゃ!」
「こっちに来いって?」
ミカンは悪い奴が居ない道を見付けて来てくれたらしい。
私はミカンが言うことに迷う…。
外には未だ悪い奴がいるかも知れない…。
でも!
「私には…、皆がいる!」
私は皆と一緒に隠れていた場所から出てミカンに付いていく…。
「きっと、大丈夫!」
沢山走って、怖かったけど皆がいる!だから、走った。
走って、走って、走って、ようやく…。
「もう少しで、村の外に…」
出れる。と、言おうとした私は声が出なくなった…。
だって…。
「はい♪ざぁんねんでした~!」
「まだ、いたか…」
二人組の男がそこに待ち構えていたから。
「ガルル!」
「ピィイ!」
「シャアア!」
「お、威勢が良いねぇ~君達!」
私の友達達はこぞって警戒心を露にする。
そりゃあ、こんな変な人達には警戒する。
金髪に細目で薄ら笑いのノリが軽そうな人。
紫の坊主に無表情で何を考えているか分からない人。
どっからどうみてもおかしな二人だ…。
でも、私が気になったのは。
「何でミカンの抜け道が分かったの?」
ミカンが見付けて来てくれた道には悪い奴は居ないはずだったのに。
「それはぁさ~。僕の能力の一つだよ♪《 鷹の目》のおかげでね!そして!」
そう言って手を軽く振る金髪の人。すると…。
「!」
な、何もない所からナイフが!
「これがもう一つ《種も仕掛けもございません》さぁ♪種も仕掛けもないよ!」
「お喋りし過ぎだ。アリバック」
「ゴメン、ゴメン。怒られちゃった…。じゃあ、さっさと終わらせちゃお!」
「こ、こないで!」
近付いてくる金髪の悪い奴に思わず、後退りをする。
「ガルル!」
そいつに向かってラッセルが飛び掛かる。
「おっと!」
「キャイン!」
飛び掛かったラッセルが何かをされたと思ったら石檻に閉じ込められている…。
私の友達に!
「ラッセル!あなた何をしたの!?」
「手品だよ♪」
軽い調子で言う男にイラッとくる。
くるだけで、なにも出来ないのだけど…。
でも、助けなきゃ!
「次いでに君達も!」
「にやあ!」
「ピピ!」
「ミカン!ミュー!」
二人もいきなり表れた石檻に閉じ込められる…。
そんな…。
どうすれば!
「よくも!」
金髪の人を睨み付ける。
私は今、怒りが満ちている。
「おお、怖い怖い~」
「アリバック!」
「分かってるよ~。最後に君だよ!」
「きゃあ!」
投げられたナイフが肩を霞める。
でも、かすり傷…。
「私はそんっ…………」
な、に?
急に体が重たくなって、動けない…。
喋ることも出来ない…。
どうして!?
「そ~んな、睨まなくても…。只の麻痺毒だよ♪丸1日は動けないけどね」
そんな…。
じゃあ、私は何も出来ないの?
絶望が体を襲っても出来ることは、ない……。
「さぁて、こいつらどうする?」
そう言って、皆を見る金髪の悪い奴。
「いちを、連れてくぞ…」
「じゃあ、宜しく~♪」
その言葉と共に紫の坊主の人が触れた檻が中身事消えた!?
皆に何を!
「大丈夫♪つれていってあげただけだよ~。直ぐに君も行くから!」
その言葉は嫌な雰囲気を纏ってた。
多分この人達は私達の村の人全員を奴隷として売る気なんだ…。
多分、ラッセル達も…。
私も捕まって売られちゃう…。
そんなのやだよ…。
怖いよ…。
誰か、助けて…。
もうここには、慰めてくれる友達は居ない…。
指もピクリとも動かない…。
お願い……。
誰か…………。
「じゃあ、引き上げ………!」
そんな時だった。
私に近付こうとした、金髪の人に誰かの影が重なったのは…。
慌てて金髪の人は回避したけど、頬にはかすり傷がついている。
「女の子をよってたかって、良いご身分だなてめぇら…」
そう言った人は私を庇うように前に出た。
「いきなり、攻撃なんて酷いじゃないか!」
「そうね!」
今度は紫の坊主の人に速すぎて見えない攻撃が当たる。
その攻撃をしたと思われる人物も私の前に立つ。
「酷いと言われようがなんと言われようが、女の子を襲うよりましよ…。ね、ユウちゃん?」
「ああ、久しぶりに僕は頭にきてる。今なら、全世界を相手に出来そうだ…」
~ ユウト side ~
その日は、悪い夢で目が覚めた……。
その夢で助けを求める大勢の人達がいたのだ…。
「最悪の目覚めだな…」
ふにゅう…。
なんか、柔らかい感触が…。
「ふみゅぅ………」
訂正…。
最高の目覚…ゲフンゲフン!
「ほら、マリ姉起きなって…」
「うみぅ~」
「じゃあ、行こうか…。マリ姉」
「ええ…」
俺達はこの村を今から出るのだった。
旅の支度は出来たし、早く次の場所に行かなければならない。
「じゃあな…」
ifutureを構えて写メを一枚撮る。
そんな時だった…。
『助けて…』
「っう!」
「ユウちゃん!?」
突然、頭に頭痛がはしる。
頭を抱えてしゃがみ込む俺をマリ姉が心配する…。
「だ、大丈夫…」
そんなマリ姉に精一杯の笑顔を向ける俺。
「そう…」
明らかに不安の色を隠しきれてないマリ姉。
そんなに心配か…。
少し嬉しく思ってたり…。不謹慎だな~俺。
でも、今の声は何だったんだ?
どうも、胸騒ぎが収まらない…。
「ねぇ、マリ姉?」
「何かしら?」
「少し、あっちの方角によってからでも良いかな?」
俺は府に落ちないが、目的地とは離れた方向を指す。
妙な確信と共に…。
俺達が一山越えるとやけに赤い光が目に入った。
「これは…」
「火事ね…。しかも、火の広がり方が人為的ね…」
「って、ことは!」
「ええ。火の強さからみても明らかに現在進行形で襲われているわね」
「行くぞマリ姉!」
「言われなくても大丈夫よ」
走り出す俺は何処からか確信がわく。
あっちの方角だと!
そして、三人の人影が見えた時だ…。
『誰か、助けて…』
頭の中に声が響いた。
感情が流れてくる様な気がする…。
するだけだけど…。
俺の気のせいかも知れない。
眼下にいる少女は虚ろな目で倒れている。
彼女が助けを呼んでいるとしたら…。
「ユウちゃん!」
「分かってるよ!」
近付いて、あの三人が普通の関係じゃないことは直ぐに理解できている。
恐らく、倒れている女の子は襲われているのだろう。
ならば、助けるだけだ!
『お願い……』
『誰か…………』
頭の中に響く声はよりいっそう、強い思いが込められている。
それは、少女の無念さが伝わってくるようだった。
「じゃあ、引き上げ………!」
そう言いながら、少女に近付く金髪の悪ホスト面。
させるか!
顔面に向かって飛び蹴りを放つ!
くっ!
直前で俺のことに気付いた金髪はギリギリのタイミングで俺の攻撃をかわした。
頬にかすり傷をつけることが出来たのは、幸運だったかもしれない。
よけた金髪は俺の追撃を恐れてか距離をとる。
俺は少女にこれ以上何かされないように二人の間に立つ。
「女の子をよってたかって、良いご身分だなてめぇら…」
怒りを込めドスを効かせた声でそう言い放つ俺。
どうやら、この溢れでる怒りを抑えることは出来ないらしい。
「いきなり、攻撃なんて酷いじゃないか!」
「そうね!」
強めの返事を返すマリ姉は、決して金髪に同意してるわけではなく、寧ろ此方に加担するように紫の坊主の仏頂面に鞭を振るう。
相変わらず、はえぇよ。
目でギリギリとらえることが出来たくらいだ。
紫の坊主は防御体制が間に合わなかったのか派手に後ろに吹き飛ばされる。
が、かすり傷程度だ。
起き上がって首を何度か捻る。
未だにヘラヘラしている金髪の奴はムカつくな。
マリ姉も隣に立ち臨戦体制だ。
「酷いと言われようがなんと言われようが、女の子を襲うよりましよ…。ね、ユウちゃん?」
そうだな。
「ああ、久しぶりに僕は頭にきてる。今なら、全世界を相手に出来そうだ…」
そのセリフと共に目の前に飛び出す。
「おわわっ!」
慌てる振りをしながら、ナイフを二本投げてきた金髪。
それをかろうじて避ける、俺。
「アブねぇ!」
「えぇ~?今の避けるんだ」
「誰かさんの鞭の方が速いんだよ!」
何故か隣の味方から殺意が届いた気がするが気のせいだろう。
横目で見るとマリ姉と紫の坊主は動こうとしていない。
きっと、どちらも様子を伺っているのだろう。
「さぁさぁ、マジックショーの始まりだよ~」
そう言って紫坊主の前に立ち手を叩く金髪。
何をする気だ!?
「皆さん!上空を御覧ください!」
そう言われて言われた通りに上を見ると…。
「なぁ!?」
直径五メートル程の石と土で出来た玉が浮いていた。
いつの間に!
俺達は周囲の警戒をおこたらなかった。
作れたとしても実際に衝突した約五秒間だけだ。
その時間でこの大きさの玉を作るのは困難だ。
魔法で作ったのか?
だとしても、あの大きさを構成するのにはもっと時間がかかるはず…。
「これが僕の能力さ。名前は《種も仕掛けもございません》って言うんだ!。何もない所から何かを取り出す能力だよ~。そして!」
厄介な能力だな。
それにしても、あいつふざけてるのか?
いきなり目を閉じやがって!
「戦闘中に目を瞑るとは、良い度胸ね!」
マリ姉が馬鹿にされたと思ったのか、金髪に鞭を振るう。
「!?」
「危ないなぁ~」
あいつ!目を閉じたまま、紙一重でマリ姉の攻撃を避けやがった!?
「嘘だろ…?」
続けざまに何度か鞭を振るうマリ姉だが、それらを全てかわしやがる!
「これが僕のもうひとつの能力《 鷹の目》さ!目で見えなくても全て見えるんだよ!」
なるほどな…。
マリ姉の目で捉えるのがやっとの鞭は、避けるのが難しい。
目で理解し体が行動するまでのタイムラグのうちに当たるからだ。
だが、金髪は何らかの能力で目より先にマリ姉の攻撃を理解し、一歩早く動いて回避している。
全て見えると言っていたけど、恐らく比喩。
多分、第六感みたいな能力か、他視点からみているのか…。
分からない。
だけど、あいつは嘘をついている。
「それは、おかしいだろ?」
「なんでだい?」
「この世界では、二つも能力を持っている奴なんか居ない筈だ」
ナターシャさんにその事は教えて貰っている。
「さぁね~。僕は特別なのかもね!」
「ふざけやがって…」
「それより、良いのかい?」
そう言って、上を向く金髪。
つられて上を向くと土石の玉が中心から砕けた!
「なぁ!?」
「特大マジック 死を呼ぶ土石の雨存分にお楽しみ下さい」
いかがでしたか?
いきなりの急展開ですが、
バトル突入です!
でも、なんでユウトには声が聞こえたんだろうね~(棒)
昨日確かに能力を発動したけど、それがすべてだったのかな?(棒)
分かる人には分かるかも知れませんね。
では次は十二時ごろに!