短編物語 「とある春休みの喧嘩騒動」 前編
話の伏線にちょくちょく出てきたけれど、
今だ物語に登場しない、
ユウトの親友の八橋ショウタとの出会いの話です。
まぁ、フライングで伏線回収で暇つぶしです。
ここで語るのは、まだ冬の余韻が完全に抜けない四月の初めの物語
中学1年と2年の境目の春休みの話。
俺、つまり黒石ユウトと親友の八橋しょうたとの始まりの物語…。
「あ~、暇だに~」
時刻。
12時過ぎ。
現在位置。
ベッドの上。
Q、何をしているのか?
A、布団の上でごろってます!
休みの期間にとことんだらける駄目人間がここにいた…。
駄目石さんなり~。
頭の中はお花畑~。
布団を被り、猫の様にくるまりゴロゴロしている。
いわゆる、休みボケだ…。
フッフッフッ!
何かしないのか?
友達の少ない僕に何を求めている!
そんな時だ…。
「ユウト!電話よ~」
下から二階の俺の部屋に声が響く。
む!お母さんの声か?
たっく、誰から電話だ?
自室から出て、下に向かい電話を受けとる…。
「何だか、女の子からみたいだけど…?モテるね~(ニヤニヤ)」
「そのニヤニヤは止めてくれませんかねぇ!」
くっ!我が母ながら、良い性格してるぜ!
受話器を受け取り、電話を出る。
母が壁から半分顔を覗かせチラチラ見ているが気にしたら敗けだ…。
「もしもし?」
「あ、私、私!今、お金に困っててさぁ~」
「詐欺か!!」
受話器に叫ぶ。
もう後悔した…。
くっ、いつもかけて来ないから油断してたぜ…。
「で、何だよ?マリナさん?」
相手はマリ姉だった…。
「マリ姉と呼ばない所を見ると、相変わらずなのね…。お義母様は…」
「待て!何と書いて、お母さまとよんだ!」
「もぅ、恥ずかしがりやさん何だから~ユウちゃんは~♪」
照れたような声を出すマリ姉…って、!
「何キャラだ!それは俺の知っているマリナさんじゃない!」
ふぅ…。
ツッコミに疲れる…。
何故、俺がマリ姉をマリナさんと呼んでいるかと言うと、お母さんはマリ姉が俺の従姉妹だと言うことを知らないからだ…。
どうしてかと言うと、お父さんのお父さん。
つまり、お爺ちゃんのけして浅くない人生が関わって来るので、ここでは話さないことにする…。
取り合えず、俺には弟がいるが、家ではこのことは父と俺しか知らない…。
あのチラチラとニヤニヤがウザイくらい加速化している、お母さんは知らないとだけ説明しとく…。
「で、何の用かな?かなかな?マリ姉?」
「とことんだらけてるわね…」
「うん…。だって、春休みなんだよ!暇なんだよ!」
春だから春石さん!
そんな呑気だったからか、次に言ったマリ姉の台詞が逆に良く頭に響いた…。
「そう、暇なのね?」
「え?」
え…………。
うふふっ、と受話器越しにマリ姉の笑い声が聞こえた…。
何だか嫌な予感がする。
まるで、俺の平和な今日が崩れ去る様な予感が…、ひしひしと…。
「ユウちゃん?」
「何かな……?」
「お願いがあるのだけど?」
こちらの反論を一切認めてくれなさそうなマリ姉は、嬉々としてその内容を話す。
その日から僕の幸せな春休みは終わりを告げた。
次の日俺は「デート?デートなの?デートなのね!」としつこく聞いてくる母に苦戦しながらも家を出た…。
自転車に乗り20分、電車に揺れること30分。
ようやく俺は目的の町についたのだった。
前にも話したが、俺の住んでいるところは田舎で、こんな時間をかけて、この県で一番活気のある町に来ていた。
過ぎ去る新幹線(俺は普通に快速に乗ってきた)を横目に見ながら、「何故にこんな事に…」と呟く。
何でもマリ姉が言うには、「今度の土曜日、そこで井坂ちゃんって子を案内することになっていたのだけれど、都合が悪くなっちゃったのよね~。あ~あ、誰か案内を変わってくれる。心の優しい子がいないかしら?」
とまぁ、白々しいのやらストレートなのやら、分からないが、遠回しな頼み事をしてきたのだった。
仕方なく、ほんとに仕方なく、俺は「へいへい、分かりましたよ…。別にマリナさんのためじゃないけどね!」と嫌みったらしく返したら。
「ユウちゃんって、ツンデレ?」と返して来たので電話を切った。
切って、待ち合わせ場所を聞いてないことを後悔した。
10分間迷った挙げ句、電話をかけ直して、待ち合わせ場所を聞いた。
電話を切ろうとしたら、「やっぱツン…」とか言おうとしたのでコードを文字道理、引きちぎった。
母が「修理代が!?」とか言っていたけど気にしない。
最近の若者は切れやすいのである。
修理代はマリ姉に請求しておく。
理不尽だな。とか聞こえない。
以上!回想終りなのですよ!
てな訳で、やって来ました~○○(地名)!
ポケ○ンセンター行こうかな!かなかな!
っと、本来の目的を忘れちゃう所だったぜ…。
○○(地名)に来るとテンション上がるんだよな~!
今だに電車は慣れないけど…。
取り合えず、時間まで時間があるな。
○○町内なら100円というバスに乗り町に繰り出す。
チョコパフェやモンブランシュークリームに和菓子!
普段なら遠くに行かないと買えないスイーツ巡りじゃ!
バスが発車して交差点で停車した時、俺は、んっ?と首を傾げた。
窓から知り合い?と呼べるか分からないが、顔を知っている奴を見掛けたのだ。
八橋ショウタだったかな?
見間違いかも知れない、と思い目を凝らして見ようとすると、バスが発車して見えなくなってしまった。
むぅ、見間違いかな?
だって、隣に可愛い女の子を連れていたから…。
もし奴だったら、ハゼろ…。
そう念を込めて、この問題を置いておく事にした。
少し気になり、八橋について思考するが、何も浮かばない。
そもそも、俺はあいつの事を余り知らないからだ…。
前言ったことがあるが、俺の学校は田舎にあり、小中のメンバーは大体同じで分からない奴の方が少ない。
好かれているかどうかは別として…。ぐすん…。
そんな中、八橋は数少ない転校生なのだ。
と言っても、小学五年生の時のことだが…。
俺のクラスに転校して来た八橋に教室で一番に話し掛けたのが俺だった。
印象は「前の学校での別れを引きずってる」感じだったと思う。
話した内容は、何処に住んでるの?とか他愛ない物だった筈だ…。
その後は全く話してないと思う。
この町は余所者を余り快く迎え入れない町だが、中々皆と打ち解けていた気がする。
そういえば、一度だけ友達に連れられて家に遊びに来た事があったな。
初めてのことだったから、最初不審な顔をしたと思う。
あの時の俺は今の俺から見ても幼かったな…。反省反省。
でも、最終的には凄く楽しかったことは覚えている。
その後、中1で同じ部活に所属していたが俺は余り部活に馴染めず、世間話をする程度だったと思う。
二年になると共に八橋は部活を止めた…。
こんくらいかな?八橋との接点は…。
順番に思い返すと、案外色々あったことに驚く。
何で余り印象に残って無かったんだろう?
そんなことを考えていたら目的の場所についた。
思ったより早かったな、とか思いながら、速足でバスを降りる。
「そんなことより、ケーキケーキ!」
思考を中断し、待ち合わせまでの余裕を確認する。
そして、甘い香りに誘われたミツバチの様に足を進めて、明らかに女性比率が高い店に入ってショーウインドーに飾られたケーキを見て心踊らせるのだった!
「あ~、美味しかった!」
と、満開の笑顔で糖分チャージが完了したことで超ご機嫌にスキップしながら言う。
傍目から見たら、テンション高い奴だ。
高石さん!あまあまだぜぇ~!(注意、かなりテンションが上がっています。気にしないようにしましょう)
時計を見ると、待ち合わせ時間まで30分を切っていた…。
そろそろ、移動するかな…。
と、そんなことを考えた辺りで…。
「………て……いて……よ!」
「だか…、あや…………る…………」
辺りで騒ぐ声が耳に届いた。
キョロキョロと顔を動かして見ると、声の音源が分かり顔を向ける。
見ると、中学生くらいのボーイシュ系の女の子と現代不良が何やら口論を繰り広げている。
むむむ、むむ石さんである。
少し近付いてみると、会話の内容が聞き取れた。
「ぶつかっておいて、只で済むと思ってんのか!?」
「だから、謝ってるじゃないか!」
「謝って済むと思ってんのか!?あぁ!?」
どうやら、典型的な絡まれ方を運悪くしてしまったらしい…。
絶滅危惧種め…。
女の子は、強気な性格の様で不良に怯えることなく立ち向かっている。
そんな事を考えていたら…。
「おい、どうしたんだ?」
「何か、面倒後とか…?」
「ん?ああ…」
うわ、お仲間が二人来たよ…。
うっとおしいよ…。
スライムだよ…。
A、B、Cなんだよ…。
って、呑気にしてる場合じゃない!
周りの人達は我かんせず状態で過ぎ去っていく。
焦れた不良が女の子の腕を手に取る。
流石に強気だった女の子も、分が悪いと思ったのか、助けを求めて周りを見る。
そして、俺は女の子と目が合った。
仕方ないな…。
「「いやぁ、ごめんごめん…!待たせた(かな)?」」
秘技!恋人の振りして連れ出す作戦!
当○さんもやっていたこの作戦なら必ずや上手くいく筈だ(実際は失敗していたような…)。
ん?
気のせいか?
今、声がダブった様な…?
不良に掴まれた女の子の手を強引に外させ、そのまま連れて逃げようとした時…。
途方もない違和感を感じて右を向くと…。
同じ様に反対の腕を取り、同じ様にこちらを見る青年と目が合った。
「………………」
「………………」
「………………」
「「「………………」」」
黙り混む、この場の全員…。
多分、不良さえ、このカオス空間に言葉を失っている。
まさか失敗するとは夢にも思わなかった。
しかも、同じことを考えて同じタイミングで行動する人とブッキングしたからとか…。
それだけではない。この青年とは知り合いだった。
つうか、背が高いから青年に見えただけで、実際はさっき見た同い年の顔見知りだった。
つまり、八橋ショウタ。
まさか、俺はこんな始まり方をするなんて想像もしていなかった…。
「あぁん!誰だよお前ら?」
いち早く現状復帰した不良Bが威嚇を始めた。
他の仲間も我に帰り、中々ピンチな状況だ。
だが、まだ作戦が失敗した訳じゃない!
まだ、取り返しがつく筈だ…。
「お前ら、こいつの知り合いか何かか!?」
「「この子の彼氏ですが?何か?」」
取り返しが付かなかった。
八橋ぃいいい!!
心の中で叫ぶ。
まさか、同じタイミングで同じ言葉を放つとは…。
「は?お前ら馬鹿なの?」
流石に不良に馬鹿扱いされた…。
「もしかして?助けに来たとか?ヒーロ気取りますか?」
おちょくる不良C。
それに合わせて残りが大爆笑を始めた…。
「マジか!?今時!?」
「初めて見た!うけるわ~」
ぐわぁああ…。
良いことしようとしたのに超恥ずかしい!
死にてぇえ!!
ちくしょう、こんな不良に…。
見ると、八橋も恥ずかしさで死にかけている。
意外なことに、俺達が助けようとしたことに気付いたのか、哀れに思ったのか(前者であってほしい)女の子が「えぇっと…」と何かを考え込む。
ま、まさか!?この状況で打開策があると言うのか!?
あり得ない。だが、かけてみるのも良いかもしれない!(恥ずかしくて、テンションが可笑しいです)
時間にしては五秒も無かったが、俺達には永遠ともかんじられた…。
そして、散々悩んだ挙げ句、
「ふ、二股なんだよ!」
と元気良く女の子が宣言した。
場を静寂が包む。
明らかに爆弾を投下されたのだった…。
やべぇ、どうする?
場は最悪だ。
しかし、こいつらから逃げ切るには…。
くっ、こうなったら、突き通すしかないか…。
「そ、そうなんだよ~。まぁ、三角関係の成功例みたいな?」
意外なことに失敗かと思える俺の発言に八橋が乗ってくる。
「そうそう、逆に三人じゃないとダメ的な?」
悪い方向に…。
二人とも、まるで、言い訳のような台詞使いだったことは、記憶に新しい。
俺と八橋の捨て身の言い訳。
さぁ、その結果は?
…………。
………………………。
場が更に重たくなっただけだった…。
不良に、こいつらマジか?みたいな顔をされた。
我、関せず状態だった周りの人もヒソヒソと話を始めた。
とにかく、周りが冷たかった…。
三人とも顔を赤くしてうつむいた。
俺と八橋は無言で女の子の手を取りダッシュを始めた。
まるで、現実から逃げ出す様に…。
顔見知り程度とは思えないほどのコンビネーションだった。
慌て、不良達が追いかけてくる。
走りながら、一人感傷に浸かり、ある結論に達した。
その時俺は誓ったのだ。
今度助けるときは回りくどいことはしないで、ストレートに行こうと…。
いかがでしょうか?
作者的には良い息抜きになりました。
八橋は今後の物語に大きく関わるキャラですので
心のうちにひっそり留めて頂けると幸いです。
なおこれは、モッチーとのコラボでもあります。
本人に許可は取ってありますのであしからず。
ユウトのお母さん。
実はうちの母を元にしていたり…(笑
書いてて何度ため息が漏れたことやら……。
まりなさんとユウトの家庭事情もおいおいあかされると思います。
二年後くらい?
すいません。いや、マジで…。
もうちょい早く更新すべきですね。
では、続きをお待ちください。