第6話 兵舎にて
結局、村人全員の埋葬を終え、ユロン達がマルクニスの兵舎に到着したのは、太陽が地平線の深くに沈んでからだった。
ちなみにガイールが馬車も馬もすべて持っていってしまったため、マルクニスには荷車を外したフザに二人で乗って来た。
「悪いね。こんなに遅くになっちまって」
「いいわ。それじゃ先にさっき言った部屋に行っといて」
「わかった」
二人はいったん別れて、ユロンは言われた通りの部屋へと向かった。
ユロンは指定の部屋に入ると近くにあった椅子に腰掛けた。
(しかし…ここって兵舎だよな。何でこんな時間で誰もいないんだ?)
確かに、今この兵舎には人がほとんどいない。
ユロンが部屋に入るまでに、一人も見かけなかったほどだ。
いくら兵舎といっても既に日は落ち、夜警ではない限り自分の部屋や自宅に戻っていてもおかしくないような時間だ。
ユロンが疑問に思っても不思議ではない。
ユロンが考え込んでいると、不意に扉が開いた。
そこには肩までの燃えるような真っ赤な髪と同じ色の瞳が印象的な美しい女性が立っていた。
「ちゃんと辿り着けたみたいね。安心したわ。それに部屋を荒らした形跡も無いし、大人しくしてたようね」
「えっ」
女性に見覚えは無かったが、その声は確かにニナのものだった。
「どうしたの?」
「ニ、ナなのか?」
ユロンは開いた口が塞がらず、とても間抜けな顔をしていた。
「あら、さっきまで一緒にいたのに分からないなんて失礼ね」
「いや、さっきはずっと鎧で顔隠れてたし…」
「フフッ冗談よ。それにしても、いつまでもそんな格好じゃ良くないわよね」
そう言われているユロンの姿はというと、賊を殺したときに付いた返り血とさっき村人を埋葬する際に付いた泥でお世辞にも綺麗とは言えないものだった。
「そうね。廊下の突き当たりにお風呂があるから、入ってきたらどう?着替えはこっちで用意するわ」
「賊のこと聞かなくていいのか?なんか忙いでるみたいだったけど」
「大丈夫よ。今頃隊長達が何かしらの情報を手に入れてるだろうし、私はそれを待つしかないから」
「なんか悪いな。俺のせいで部隊について行けなくなっちまって」
「気にしなくていいのよ。むしろ私達はユロンに感謝してるんだから」
「感謝?」
「ええ。あなたのおかげで確実な情報が手に入るんだから。だから、気にしないでお風呂に入ってその汚れと一緒に今日の疲れを落としてきなさい」
「ああ、わかった。そういうことならお言葉に甘えさせてもらうよ」
ユロンは椅子から立ち上がって部屋を出た。
そのままユロンは風呂場に行き、脱いだ服を目の前にあった籠に入れて洗い場に向かって行った。
ユロンは今日いつもの労働に加え、命を賭けた殺し合いをして、その上村人を全員殺されて心身供に疲弊しきっていた。
だから、気が付かなくても仕方がなかっただろう。
ユロンが使った隣の籠に女性物の下着が入っていたことに……
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