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第3話 過ちの結果

話が動きます。

午後に村を出たユロンが用事をすべて済ませたときには、すでに太陽が傾き始めていた。


「さあ、帰るか」


カツッ カツッ


ユロンが行きよりいっそう重くなった荷車を引くフザに声を掛けると、フザはそれに応えるかのように蹄を鳴らした。


そしてユロンは手綱を取り、街を出て村へ向かった。





ユロンは町を出てからしばらくはフザに話し掛けながら移動していたが、ふっとある異変に気が付いた。


進行方向から黒い煙が上がっていたのだ。

進行方向――つまりはユロンの村からということになる。


「あ、あれは!」


そのことに気づいたユロンは腹を蹴り、フザを急がせた。


フザの方もユロンの焦りを察したのか、普段からは考えられないような速度で走り出した。





いつもなら一時間以上かけてくる道を、今日はその半分の三十分で村に着いてしまった。


「あ、ああ……」


フザを荷車ごと村の外に置いてきたユロンは、村の惨状を目にして唖然とした。


―村人は皆殺しになっていた―


朝までいつもと同じように暮らしていた人たちが、今目の前で死に絶えているという現実はユロンにとって大きな衝撃だった。


ユロンはその場に膝を付き、目の前に横たわっているフローラの体に触ってみた。

すると、その体は温かく、この惨状をもたらした者がまだ近くにいることを示していた。


「…」


犯人がまだ近くにいることに対して、ユロンがまず感じたことは恐怖でも怒りでもなく、歓喜だった。

みんなを殺した奴をこの手で殺せる。

その考えだけが今のユロンの正気を保たたせていた。


「キャーー」


ユロンがそんなことを思っていたとき、聞きなれた声が聞きなれない叫び声を上げた。


「アリス!」


ユロンはすぐに声がした方に向かうと、そこには鎧を着た四人の男に囲まれ胸から剣を生やしているアリスがいた。


「アリス……」


その光景を見た瞬間、ユロンの中で張りつめていた何かが切れた。


「んぁ?まだ生き残りがいたか。隊長からは皆殺しにしろと言われてるからな。悪いがここで死んでもらうぜ」


悪いという男の顔は笑っていた。


「これはお前らがやったのか?」


ユロンが最後の確認のために聞くと、先ほどの男が答えた。


「ああ、そうだぜ。まあ、俺らだけじゃねぇけどな」


男のその言葉が決定的だった。


「殺す!」


ユロンの言葉に男たちが笑い出す。


「ハハハ、殺す?お前が?俺らを?ハッ無理に決まってんでだろ。俺らはこう見えても兵士だからな。一般人にゃ負けやしねぇよ」


そう言い、男はアリスに刺さっていた剣を引き抜く。

それを合図に他の三人の男も腰の剣を抜いた。


「それに何か見覚えがあると思ったら、お前は“おちこぼれ”じゃねぇか。ただでさえ無理なのに、お前じゃ完全に不可能だ」


真ん中に立つ男がそたう言うと、ユロンの一番近くにいた別の男が一人剣を振り上げた。


「…ソード


ユロンが呟くと、今まで何もなかったユロンの手の中に白銀に輝く剣が握られていた。


男が剣のあまりの美しさに見蕩れていると、ユロンが男に切りかかった。


男は慌ててユロンの攻撃を防ごうとするが、ユロンの剣は男の剣を何の抵抗もなく真っ二つにし、そのまま男の首を落とした。


男の首から勢いよく血が吹き出し、局地的に赤い雨を降らせた。


「なっ!」


「てめぇよくもやりやがったな!」


今度は二人の男が左右同時に仕掛けてきた。


ユロンはまず体を開き右の男の体を横に二つにする。

男の腹から内臓が溢れ出す。


振り向きざまに反対の男の両手を斬り落とし、心臓を一突きにした。

剣を引き抜くと男は血の海に沈んでいった。


あっという間にユロンの周りには血の池が出来上がり、その中にはさっき殺した男の内臓や手が浮いている。


ユロン自身も返り血で真っ赤になっていて、見方によっては重傷を負っているようにも見える。


「あ、ああ、一体何しやがった!何処に剣を隠してやがった!お前は…お前はおちこぼれじゃねぇのかよ!」


残りの一人は今目の前で起きたことが信じられず、ユロンをまるで化け物を見るかのような目で見ていた。


「…」


ユロンは村人の、フローラの、そして何よりアリスの敵を討つため男に近づいていく。


「う、うわああぁぁぁ」


男は追い詰められ、剣を上段に構えユロンに突進した。


「…」


次の瞬間、男はユロンを見失い、気づいたときにはユロンの剣が男の喉に刺さっていた。


「ぐ、ぐんん」


男は喉に血が溜まり呼吸が出来ず苦しんでいる。


ユロンはしばらく男が苦しむ様を眺めてると、一気に剣を振り上げ男の頭を切り裂いた。

男の脳が辺りに飛び散った。


男の体が崩れ落ちるのを見届けたユロンは、手元の剣を消し去り血が滲む程拳を固く握り締めた。


ユロンは視線を胸に真っ赤な花を咲かせたアリスに移し、アリスの体を強く抱きしめた。


そして、すべてが終わってしまったことを思い知り、声を上げて泣いた。

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