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第一話 『僕』でなくなった日

どうも、からくれないです。

書き直しして新スタートです。

ですが、大まかなストーリーは変わりません。

展開がかなり前のと異なっています。


では、新一話『僕』でなくなった日

どうぞ、ご賞味あれ(変

 あれは俺がまだ僕であったころの記憶。

遠い遠い…けどまったく色あせることなく、深く深く、俺の心に根差した記憶。

また、俺の苦い思い出が俺への戒めであるかのように目の前に浮かび上がった。


…俺は朝の目覚めが最悪であることを覚悟した。


▽▼


 日本の東北地方のある場所に立っている孤児院。

そこで今から5年前、ある事件が起きた。

ある男による、大量虐殺事件。

当時中1だった俺の心の奥底に

いまだ癒えない傷としてある事件…



 孤児院は赤に染まっていた。


「なっちゃん!逃げて!逃げてよっ!」

僕は叫ぶ。僕の大切な人へと向けて。

僕たちは孤児院の食堂にいた。僕の背のほうを見れば、外へと繋がる裏口のドア。

僕の前には僕をかばうようにして立っているなっちゃんの姿。

よく見れば体を小刻みに震わせていて、肩にかかった黒髪がはかなげに揺れている。

「(―怖いんだ…なら…なら…! 僕なんか庇わないで…にげようよ…)」

僕はそう思った。けど…

「…駄目、もう…。」

「なっちゃん…?」

「もう…きちゃってるよ…。」

こつ…こつと足音が聞こえてくる。

その音が僕らを追い込んでいく。もう少しであの男が来てしまう。

僕らが大好きだった先生を刺したあの男。先生は僕らを庇う為に刺されてしまった。

僕には何も出来ないのか…!?


そう思ったとき、僕はなっちゃんの前に出ていた。僕はなっちゃんを守りたかった。ただ、守りたかった。たとえ自分が死のうとも。

だから僕はなっちゃんの前に出た。

「なっちゃん、…逃げて。」

僕はなっちゃんを突き放すかのように言った。そうまでしても、僕はなっちゃんに逃げてほしかった。生きてほしかった。

「えっ…」

そんな僕の言葉になっちゃんは少し驚きを隠せないのか、僕の顔をはっと見上げながら呟く。

当たり前だ。僕は怖いと思いながらも強がり、その怖いという感情を顔に出さないように努め、きわめて無表情を装い、突き放すかのように言ったのだから。

なおも足音は僕らへ近づく。

もう、一刻の猶予も無かった。


…僕は、なっちゃんの手を握り、裏口へと走り出した。

「なっちゃんが逃げないっていうなら…無理やりにでも…連れて行くよ。」

「菜緒(ナオ)くん…。」

僕らは裏口のドアを開け、外へと逃げる。僕はちらりと後ろを窺(うかが)った。そこには手に血塗りの包丁を持ったあの男。

…目が合ってしまった。


「ハァ、ハァ、見つけたぞ…。あと…二人。」

あの男が呟く。すでに目は狂気じみていて、焦点がうまく定まってないようだった。


「くそ…。」

僕は軽く舌打ちをし、土の地面を蹴る。なっちゃんの手を決して離さないようにしっかりと握りしめ、地面を蹴った。


 僕らは生い茂る木々の間を走った。後ろを振り向かずに、走った。

いつ終わるとも知らない、誰かが作った獣道を逃げて、逃げて、木の根っこで足元をすくわれそうにながらも、逃げた。


10分ぐらいだろうか。今まで木々しかなかった視界に、覆いつくすような黒と月光にさらされた一本の桜の木が入ってきた。

だがそれ以外僕の視界に物は映らなかった。目を凝らしても空を覆いつくす黒と青白い桜の木しかなかった。


…一陣の夜風が僕の湿った頬をヒヤリとさせた。

それは肌にまとわりつくような夜風だった。

いや、海風だ。


僕らの目の前には一本の桜の木と空へと繋がる崖があっただけだった。


「(このままでは追い詰められる!)」

そう僕は本能的に思い、僕は方向転換を試みようとした。しかし後ろを振り向くと、もうすでにあの男がそこにいた。

男は僕らを見て、悪魔のごとき形相でニヤリと口元を吊り上げ、じりっ、じりっ、と男は僕たちを追い詰める。

お互いの距離はもう2メートルぐらいまで縮まっていた。

僕らに逃げ場はもう無く、横に逃げても、後ろに逃げてもその先には僕らを待ち構えているように崖がただあるだけだ。


夜風で乾いた頬がまた湿った。

…冷や汗が流れ落ちた。

そして夜風がまた僕の頬をヒヤリとさせながら乾かした。

「…ハァ、ハァ、…お前らも…逃がさん…、一人残らず…殺す!」

もはやあの男は正気ではなかった。あの目は人を見る目じゃない…獲物を見つけた獣の目だ。

僕らはまた一歩、また一歩と下がる。もう崖までは3歩も無いだろう。


…結局僕は何も出来なかったのか?

僕は悔しさのあまり、ぐっと歯を噛み締める。

その時、僕の手がぎゅっと握られた。一人の女の子が僕にすがるようにぎゅっと手を握った。

「菜緒くん…。」

…そうだ。まだ諦めちゃ…いけない。何か…何か、あるはず…。

そう考えたとき、僕の頭の中にひとつだけ手が浮かんだ。助かる確率はきわめて低いだろう。けどこれしか今の僕らには手が無かった。


僕が最後に考えに至った時、男の包丁を持つ手が振り上げられ―


「…ハァァッ!」


―振り下ろされる。


「菜緒くんっ!」

その瞬間、僕は、僕にすがってくれた女の子の手を振りほどき―


<ドンッッ!>


―崖から突き落とした。


そして僕の体は赤色に染まった。と同時に体を引き裂かれるような痛みが走る。

僕は朦朧とする意識の中で、

「(僕にもっと力があったら…。)」

そう心に呟いた。



▽▼



…僕は光の中にいた。

ただ、真っ白い…一片の陰りも無い白の中にいた。


僕は体を動かそうとした。

すると、視界が移動した…ように思った。

僕はあても無く、光の中をただ進む。進むというよりは視界を動かすといったほうが語弊が無いかもしれない。

どれくらい進んだだろうか。

この世界に変化が起きた。光がより満ちたのだ。その光の強さはまぶしいとさえ感じられた。

僕はその光を追い求め、さらに前へと進む。

進めば進むほど、世界は光に満ちていく。



そして―


光がはじけた。



▽▼



 気がつくと僕はさっき僕が斬られた場所に立っていた。

『まぶしい…。』

上を見上げれば、突き抜けるような青があり、僕の体をじんわりと光が照らした。


僕は不思議に思った。

『何故生きているのか』と。

とりあえず自分の体を見た。


…何の異変も無い。体がちゃんとあった。傷ひとつ無く。

…そう、傷すらなかった。

その代わり僕の立っているその下に―


―血で染められた服を着た『僕』が横たわっていた。


驚き、僕はとっさに『僕』から離れようとした。

<ふわり…>

僕の体はごく当たり前かのように宙に浮き、空に包まれた。



僕は悟った。


『ああ、そうか…、僕は…

幽霊になったんだ。』


前とかなり違っています。


前のこの話を読んでくれた人はお気づきでしょうが、今回、主人公が幽霊になっちゃいました。


実は前のやつでは物語の最後に主人公は実は幽霊だった!

とやろうと思っていたのですが、

物語を練り直しているうちに新たなアイデアが生まれまして、

このような感じになりました。


指摘、誤字脱字報告、感想、なんでもいいです。

何かありましたら、コメントをしてください。


では、次回の更新は

2/3・4土日 になると思います。

もしかしたら早くなるかもしれません。


ではでは、これからもよろしくお願いします。


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