表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました  作者: 一ノ瀬麻紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/12

01 異変

 放課後カラオケに行こうという友達の誘いを断り、俺は一人で駅に向かっていた。

 健康優良児で滅多に風邪も引かない俺が、どうも最近調子がイマイチなんだ。

 俺は立ち止まり、空を見上げた。大きく伸びをすると、つられるように大きなあくびが出た。


「夜更かししすぎかなぁ……」


 俺は小学校からやっているサッカーを続けたくて、S大学を目指している。

 サッカーばかりやってきたから、今は必死になって勉強してるんだ。だからこの体調不良は、きっと夜更かしが原因なんだと思う。


 大きく深呼吸をした後、再び歩き出した。

 この時間の駅前は、学校帰りの制服姿の学生が多く歩いている。立ち止まり楽しそうに話をしている女子高生もいた。


 そんな中、金髪や赤髪の目立つ男子生徒と、バッグにジャラジャラとたくさんのキーホルダーをつけた女子生徒が目に入った。あの制服は見覚えがある。あまり良い噂を聞かないZ高の生徒だと思う。

 何か男二人が言い争っているように見えた。困った様子の女の子が、赤髪の男の腕を何か言いながら引っ張っている。

 ああ、あの女の子のことで何かあったんだろうな。

 俺は関わりたくなくて、距離を置いて通り過ぎることにした。


「ふざけんなよ、テメェ!」


 明らかにガラの悪い三人組の横を通り過ぎようとしたとき、突然の怒鳴り声が聞こえてきた。


 えっ……。


 その直後だった。

 鈍器で後頭部を殴られたような痛み、突然湧き上がる吐き気、めまい……。


 何が起きたのかわからなかった。考える余裕さえもなかった。


 俺の目の前は一気に真っ白になり、そこで意識は途切れた――。



 ……あれ? 俺、何してるんだっけ……。


 体がふわふわと宙に浮いているような気がして、ここはどこなんだろうと思いながら、微かに目を開けた。


「大丈夫か?」


 頭がぼーっとしてよくわからないけど、この声はすごく安心する。


「まだ薬が効いてるからな。もう少しゆっくり寝るといい」


 俺、寝てたのかな。もしかして、寝不足すぎてぶっ倒れたとか?

 でもまだ、強烈な眠気が残っている。目をしっかりと開けたいのに、瞼が重くて再び閉じそうになる。


 ゆっくりと頭を撫でられた。

 ああ、すごくホッとする。


 俺はなんだかすごく幸せな気持ちに包まれながら、再び夢の中へ静かに戻っていった。


 再び意識が浮上したのは、もう外も暗くなる頃だった。

 あんなにぼーっとしていた頭も今はスッキリして、体の重さもすっかりなくなっていた。


「本当に、一体あれはなんだったんだろう?」


 学校の帰り道の出来事を思い出し、俺はひとりごとのようにつぶやいた。

 何があったのか全くわからなかったから、目を覚ました時にそばにいた幼馴染に聞いてみた。けど、とにかく今日は休めの一点張りで、何も教えてくれなかった。

 身体の違和感はないし大丈夫そうだけど、念のため今日は入院することになった。検査結果については、明日担当医から説明があると言われた。


 なんか悪い病気じゃないといいけど。


 風邪も滅多に引かず、病院のお世話になることなんてほとんどなかった俺が、おそらく駅前で倒れたんだ。さすがにノーテンキで楽観視しがちな俺でも、心配になってしまう。

 でもまぁ、ここであれこれ考えたって何もわからないしな。言われた通りに今日はゆっくり休もう。


 俺は部屋の明かりを消すと、ベッドに潜り込んだ。



「お名前をお願いします」

村井圭太(むらいけいた)です」

「はい、村井さん。ご気分はいかがですか?」


 次の日、家族の代わりにやってきた幼馴染の白河泰雅(しらかわたいが)に同席してもらって、医師の診察を受けている。


「すっかり良くなりました。大丈夫です!」

「それは良かったです。薬が合ったのですね」


 先生は他にもいくつか質問をして、俺の返事を聞きながら、ふむふむとパソコンに何か打ち込んでいく。


「村井さんは、ベータと診断を受けているのですよね」

「はい。中学生の時の一斉検査では、ベータでした。高校入学前の検査でもベータでした」


 なんでこんな質問をするのだろう? 俺が不思議に思っていると、先生は検査結果を見ながらうーんと小さく唸った。


「ベータであるはずのあなたから、オメガフェロモンが検出されたのです」

「え? オメガフェロモン?」


 家族も全員ベータだし、検査結果もベータだった。それなのに急にオメガフェロモンがと言われても、意味がよくわからない。

 俺は驚いて、先生に問い返した。


「ええ、オメガフェロモンです。村井さん、ご家族の中にオメガはいますか?」

「いいえいません。全員ベータです」

「では、お祖父様などオメガの方はいますか?」

「……そういえば、遠方の亡くなった曽祖母が、オメガだったと聞きました」

「そうですか。それならオメガフェロモンが検出される可能性はあります。ただ、ベータにしては少し数値が高めなので、様子を見た方が良さそうですね。昨日の検査結果と比べるとだいぶ落ち着いてはいるので、一時的なものだと思うのですが……。また二週間後に来ていただけますか?」

「はい、わかりました」


 なんだかよくわからないままだけど、二週間後に受診する頃には、もとに戻ってるだろう。

 俺は先生からいくつかの注意点を聞き、病院をあとにした。


「オメガって遺伝するのか?」

「そうかもしれないな。うちは代々アルファが多いし」

「そうかー。でもうちはほぼベータなんだよな」

「次の受診の時にわかるだろう。けど、何か少しでもおかしいと感じたらすぐ言うんだぞ?」

「了解!」


 俺は、担当の先生の説明を聞く間も、ずっと隣にいてくれた幼馴染の泰雅に向かって、敬礼をしてみせた。


「なんかよくわかんないことになってるけど、まぁ、そのうちもとに戻るだろ」


 先生の話を聞く限り、そんなに大事ではないような気がする。きっと一時的なものだから大丈夫だ。

 そう思って、少しおどけたように敬礼をする俺だけど、泰雅はまだ不安そうな顔をしている。


「そんな顔しなくても、大丈夫だって!」


 俺は泰雅の背中をポンと軽く叩くと、泰雅の心配を吹き飛ばすように笑ってみせた。

 泰雅は俺のあっけらかんとした様子を見て、ふっと口元を緩ませた。


「……ちゃんと体温測れよ?」


 担当医からは、経過観察のために毎日体温を測るように言われている。だから泰雅は、まるで心配性のオカンのように、忘れないようにと何度も念を押してきた。


「大丈夫。ちゃんと測るよ」


 俺はそんなに大したことじゃないって思ってるけど、なぜか泰雅は気になっている様子だ。

 本当に、心配性なんだよなぁ。


「泰雅、送ってくれてありがとな……あ、何かあったらちゃんと連絡するから!」


 俺の家の前まで送ってくれた心配症の泰雅は、俺が玄関の扉を閉めるまでそこを動こうとはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ