7話 2人の話し合い
「なんでそんな提案を…?私はー」
大きく動揺している
松本の提案は理解できなかった。話を聞いてなかったのか?と疑うほどに話の前後が合っていない
「両親に成長した姿見せたくないの?」
それを言われてダメージを負う。心にダメージを負って口を抑える。成長した自分を見せたいという欲求はある
あるがそれを見せられない現実に背を向けている雫には
「そんなの狡い…でも、なんでそれを?」
「君の強さを覇王に知らしめる。単に言えば私より強い証明したら覇王言えど簡単に策略を動かすのは難しいんじゃない?雫がこの学園にいると知らしめれば奴はそう動かない。始原が私、姫、大正寺谷、公明院といる中で君も入れて5人なら奴言えど難しいだろう?1人増えたところで何も変わらないとかネガティブなことを考えないでね」
「…何を言いたいの?」
「覇王を動かさなくする。奴の目的に雫が近くで邪魔をするなら自分の身を保身に走って誰か派遣するだろ」
それは覇王にとって都合のいい駒があるかどうかの話。確かに派遣した戦力を殲滅させるのはいいだろう。しかし、原初に対して壊滅的な被害を与えることに成功している学園側の戦力を相手にメリットはそんなにない
何せ、雫がこの学園にいることを覇王に把握された場合、自分が知っている未来とは全然違う事件が多発してしまうかもしれない。慎重にならないといけないと言うのに楽観視している松本に呆れた顔をする
「話を聞いていないことは分かったわ。それは却下、論外よ。」
「自分が負けるから?」
煽りで返されてキレそうな目をする。話を聞いていない以前に戦闘をしたいと戦闘狂みたいな言い方だが、裏に何かあると考え始める
(何を企んでいるの?パパとママに自分の強さを見せたいだけの友人としての配慮には見えない)
一歩でも選択を間違えたら決闘になりかねない
「…何を企んでいるの?さっきから…パパたちと決闘は関係ない」
「確かにね」
それを認めてしまったことによって先程の発言を撤回を認めてしまうが松本は態度を変えない。なんとしても決闘を申し込むには理由があった
「海野が貴女が雫だと疑惑持っているそこで力を見せることで下手に手を出してくれないようにする」
「…それに私にとってメリットは?」
「覇王は全部を全部把握しているわけではないと私は考えている。だからさ、私に勝つことによって下手に手を出せなくする。雫の力を覇王は把握していない。雫が予想以上に強かったら奴は自分の目的のー」
話を続けようとしたが松本は止まる。さっきの話通り、未来改変すると雫でも分からないがー
それでも止まらない
「道を妨害できる。奴は未来人という戦力があってもすでにこの世界はその未来人が知っている未来とはすでに異なり過ぎている。だから、変えて変えれば奴は作戦を変えるとしても動けなくなる」
言えば未来の情報なんて必要ないほどに変えてやれば奴は未来人を放棄して、自分の作戦のみにする。それによって奴が自滅するような行動に誘う
それには顔を顰める
内容としては魅力だがそんな簡単に手放さないと雫は考えている。未来人のことを存在として認知しているということはその未来人は覇王自体どう行動するのかすでに把握している人物となる。
過去の事件を大体把握していることは簡単ではないし、未来人といえ、"同世代"ではないのは考察の範疇ではなく、確実だと言える
この時代から存在している未来人。その正体は誰なのか、それも分からない
やるべきことは多い雫にその提案は普通は乗らないだろう
しかし、自分が知っている。聞いた話通りの未来はもう進んでいない。ぶっ壊して本来の未来から外れている中、覇王がすでに知っている未来通りの作戦に乗るとは思えない
だから、迷っている
松本の話は事実でもあり、魅力的な話と提案。
雫は目を伏せた。
夜風が二人の間を通り抜ける。
未来を知っているということは、選択肢が多いということではない。むしろ逆だ。
知っている未来に縛られ、変えてはいけない未来に怯え、変えてしまった未来に責任を負う。
「……私は観測者でいるつもりだった」
ぽつりと呟く。
「干渉しない。余計な一手を打たない。ただ、最悪の瞬間にだけ介入する。それが一番被害が少ないと判断したから」
松本は黙って聞いている。
「でも、もう違う。姉ちゃん達が来た時点で歴史はズレた。滅王が介入した時点で未来は別物になった。……私は、もう“正しい未来”を知らない」
その言葉には恐怖が滲んでいる。
未来人であることの優位性が、
今や不確定要素に変わっている。
「なら、壊せばいい」
松本は即答する。
「中途半端に守るから怖いんだよ。どうせ崩れてるなら、徹底的に崩せばいい。覇王の持っている未来という武器を、ただのガラクタにしてしまえばいい」
「簡単に言うわね……」
「簡単じゃないよ。だから決闘する」
松本は一歩踏み出す。
「これは戦闘じゃない。宣言だ。“私達は未来に従わない”っていう宣言だ」
雫の瞳が揺れる。
「貴女が私に勝てば、学園は動く。貴女が本気を出せば、覇王は焦る。焦った覇王は必ず手を打つ。そこを叩く」
「……囮にしようって?」
「違う。主役にする」
その言葉に、雫は息を飲んだ。
観測者ではなく、傍観者でもなく、主役。
未来を知っているからこそ、
一番前に立つ。
「私は……」
迷いはまだある。
だが、それ以上に。
(パパとママを守る未来が、もう保証されていないなら)
自分が立つしかない。
静かに目を開く。
「分かったわ。その決闘、受ける」
松本の口元が吊り上がる。
「交渉成立だ」
空が、まるで合図のように瞬いた。
こうして松本無我VS櫻井時(海野雫)の決闘が行われることになる
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