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【結婚相談所パート 望月房子の話】

●語り手・望月房子(もちづきふさこ)さん(65歳) 聞き手・高遠



 まぁ、雑誌のインタビューですか。わたしのような末端のパート職員にまで話を聞きにくるなんて、記事を書くのって大変なんですね。

 せっかくお時間をとってもらいましたけど、たいしてお役に立てませんよ。わたしはこの通りしがないパートだし、阿多篠結婚相談所で働き始めてまだ二か月ですから。

 目下のところ、わたしの仕事は着付けのときのアシスタントです。

 以前に働いていた着付け師の木村さんという方がお辞めになったので、代わりに雇われたんですよ。

 今はもう一人の着付け師さんのお手伝いをしながら、阿多篠結婚相談所(こちら)に馴染んでいる途中なんです。


 あぁ、ごめんなさいね。さっきから手首のあたりがジャラジャラ煩いでしょう。

 これですか? 数珠のブレスレットです。神社にお参りに行くたびに、お守りと一緒にお分けいただいているの。

 今日は全部でいくつ着けてきたかしら。ひぃふぅみぃ……あら、九つもあるわ。家じゅうにあるのをみんな持ってきたのよ。いくらなんでも多すぎかしら。

 でもね、これがないと、なんだか不安で……。手持ちの数珠をみんな着けているんですよ。もちろん、お着物に傷をつけないよう、着付けをするときは外しますけど。


 こういうことを言うとみなさん途端に顔を顰めるんですけど、わたし――()えるんです。

 霊感っていうのかしら。昔から、妙な気配を感じやすいの。


 ――阿多篠結婚相談所(ここ)には、『何か』がいます。


 ごめんなさい、変なこと言って。

 でも、この気配……今まで感じたことがないくらい禍々しい……。

 結婚相談所は男と女の縁を繋ぐ場所。幸せな雰囲気が漂う一方で、関係がこじれて縁が『怨念』に変わることもある。

 ここは、そういうところなのかもしれません……。


 ――って……あらあら、私のせいですっかり妙な雰囲気になってしまいましたね。話を変えましょうか。

 ご結婚される夫婦の門出にかかわれる仕事は、やりがいがありますよ。最近は着付け師が足りないみたいで、わたしのようなお婆ちゃんでも働き口があるから、技術を身につけておいてよかったと思っています。

 現場ではもう一人の着付け師の方……志津さんと一緒にいることが多いですね。わたしは今、彼女のアシスタントですから。

 志津さんの着付けは早いし綺麗だし、同じ着付け師として素直にすごいと思います。わたしと同じくらいの歳なのに、動きもてきぱきしてるし。

 やっぱり、離婚されて独り身の期間が長いからかしら。志津さんはなんでも一人でこなしてしまうのよ。


 ……あら、離婚とか、人さまの事情をぺらぺら話しちゃった。でもこんなこと、記事にはしないでしょう?

 そもそも、この手の話は志津さんが自分からしていたことなんですよ。

 離婚したのは二十五年前だとか、息子さんが一人いて、父親に引き取られたとか。だから息子さんとは、苗字が違うんですって。

 離れて暮らしている割に、その息子さんとは頻繁に会っているようでした。

 志津さんが還暦をとっくに過ぎているから、息子さんもいい歳だと思うんですが、なんだかとても大事になさっているみたいで。

 時々、息子さんの写真らしきものを眺めながら語りかけていましたよ。


『まぁくんに、いいお嫁さんを見つけてあげるからね』


 って。

 母親にとって、息子というのはいつまで経っても宝物なのでしょう。

 だから、どうにかして幸せにしてあげたい。そのためなら、何だってできるんです。

 きっとね……。



                        (To Be Continue……?)


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