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1人の少女を救った日

俺はリナに誘われて、高層ビルの最上階――まるで社長室みたいな部屋にいた。


「どう?驚いたでしょ?」


「……驚いたってレベルじゃねぇよ。社長令嬢か?」


「違うわ。私が社長よ。創業者。

 親は政治家だけど、お金は借りてない」


サラッと言うなよ。普通なら自慢話になる内容だぞ。


部屋の中は、高級家具、高価そうな美術品、巨大な水槽。

……そして、壁一面に並ぶ刀、刀、刀。ざっと100本。


「な、なんだここ、武器庫かよ……」


眺めていると、つい手が伸びた。


「触らない」


リナが俺の手首を軽くつかんで止めた。指先が冷たくて、少しだけ驚いた。


「悪い。つい……立派でさ」


よく見ると全部実戦用だ。装飾じゃない。

この子……本当に戦う人だったんだな。


リナが指を鳴らすと、メイドが現れてコーヒーを置いていった。

俺はひと口飲んで、すぐに背筋を伸ばした。


熱い。味が濃い。そして、香りが異常に良い。


「まず、私と弟を助けてくれてありがとう。

 お礼をしたいけど……何か欲しいものは?」


「んー……別に命張ったわけじゃないしな。

 あ。そうだ。口の堅い闇医者知らねぇか?」


病院に行けば、絶対俺は研究施設行きだ。

そういうの、アニメで見すぎて知ってる。


リナは一瞬だけ目を細め、すぐにスマホを取り出す。


「……言えない事情ね。了解。電話するわ」


数秒後、リナは通話口に言い放った。


「違うわよ!男!違うってば!……はぁ……。

 一時間後にこっちに来るって」


電話を切り、こちらをジト目で見る。


「ちょっと、今の間が何?彼氏だと思った?」


「いや、一ミリも」


「……なんでそこで否定するのよ」


頬が膨れる。ツンデレの“デレ未満”だ。


「それより、足……見てもらうのか?」


リナは細い足を指で軽く叩いた。

動かない脚。長い時間、戦い続けてきた証がそこにあった。


……聞かないでおこう。人の傷に土足で踏み込むのは違う。


「そういえばアヤト。会社勤めなんでしょ?

 うちのホテルで働かない?」


「……給料による」


「月120万で」


「入ります」


俺、生涯で一番早く人生の決断したと思う。


再びコーヒーに手を伸ばした時だった。


――ズキンッ


心臓がないはずの場所が、鋭く抉られたように痛む。


「ぐっ……!」


俺は膝をついた。息が吸えない。視界が白く霞む。


「アヤト!? ねぇっ、大丈夫!?」


耳元で声。手が背中を支える。

リナが必死になって俺を抱えていた。


「吸って……吐いて……!焦らないで!」


震える声。普段の強気が欠片もない。


――そして。


唇に温かい感触がふれた。

甘くて、柔らかくて、あの日の光みたいだった。


一瞬で体の中に熱が駆け巡る。


しばらくして、俺は息を吸い込んだ。


「……はぁっ……生き返った……」


痛みは消え、身体は軽くなっていた。


俺が顔を上げると――


リナの表情は蒼白だった。


「……嘘……なんで……動いてるの……?」


彼女の両足が――震え、そして、ゆっくりと立ち上がった。


「うそ……歩ける……っ!」


リナは泣きながら、部屋の中を駆け回った。


胸の奥が熱くなる。

けど、俺は現実を受け止めきれず呟いた。


「……演技だったとかじゃ、ないよな?」


「演技なわけないでしょ馬鹿ァ!!」


泣きながら怒鳴ってくる。

その瞬間、インターホンが鳴った。


闇医者が――来た。

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