金髪の救い、出会いの影
その日は休むことにした。
胸の奥でまだ光が脈打っていて、いつもとは違う自分の身体を感じていた。会社に行き、何かを見られたり、異変がバレたりするのが怖かった。病院に行こうとも考えたが、この身体の異常を誰かに見られるのが怖くて、結局辞めた。
「……とりあえず、散歩でもしようか」
そう自分に言い聞かせ、近所の公園へ向かった。
昼下がりの柔らかな陽光がベンチの影を長く伸ばしていた。風はほとんど止まり、世界が少しだけ息を止めているようだった。
体は軽く、頭は冴えていた。以前の俺とは確かに違っていた。けれど――その“違い”をどう受け止めていいのかは分からなかった。
ベンチに腰掛け、スマホの画面をぼんやり眺めていたとき、視線の隅に金髪の少女が映った。
車椅子に座って、小学生くらいの男の子と笑いながら遊んでいる。太陽を浴びてその髪が金色に輝き、男の子が「もう一回!」と声をあげていた。
――その光景に、胸がぎゅっと締め付けられるような何かを覚えた。
「いいな、こういう笑顔」――つい、呟いた。
だが、その直後、公園の端から数人の男達が現れた。
金属バットを数本手に、少女と男の子を囲む。
「おい、金髪! 車椅子使って生きてんじゃねぇよ!」
声は乱暴で冷たかった。男の子が「え?なになに!」と叫び、少女は僅かに震えていた。
――その瞬間、身体が勝手に反応した。
「離せ!」
声を上げた自分に驚きながら、腕が伸びた。胸の奥で熱が走る。
バットが振り上げられる前に、俺の右拳がその男の胸ぐらを掴み、突き落とした。
「な、なんだコイツ…!」男の一人が悲鳴をあげた。
他の男達が襲い掛かろうとする。
「おい、お前――俺の女に手を出すな!」
俺の声も身体も止まらなかった。筋肉が勝手に動き、脚が低く構え、次の攻撃を躱して反撃。
打撃、蹴り、倒れる男たち。金属バットの冷たい音が地面に響いた。
「ぐっ……!」
男が呻きながら膝をついた。
残った男たちは一瞬ためらったのち、バットを放り投げ、背を向けて逃げ出した。
「……大丈夫?」
金髪の少女が車椅子からこちらへ近づいてきた。男の子は母親を探すように辺りを見回している。
「え、あ、ああ。君……怪我、ない?」
「いえ、平気。お兄ちゃんが助けてくれたから」
少女――リナ・グレイフォード。金髪、透き通る肌、強気な瞳。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
男の子が元気に言った。
「あんた、名前は?」
少女が聞いてきた。美人で、緊張する。
「俺は…アヤト。君は?」
「リナ・グレイフォード。あんた、強いわね」
「いや、偶然っていうか……」
「偶然? ふん、そうね。まあ、いいわ。で、家に来ない? お礼もしたいし」
ツンとした口調だったが、その瞳には少しだけ期待が見えた。
「え? あ、いいの?」
「別に遠慮しなくていいから。気軽に来なさい」
その言葉と笑顔に、胸の奥がまた熱くなった。
この出会いが、ただの救助で終わらないことを――直感した。
夕暮れが深まり、公園の影が長く伸びた。俺はリナと男の子を見送った。
背中に残る視線を感じながら、歩き出した。胸に手を当てる。さっきの光が、まだ微かに脈打っている。
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