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宣戦布告

放課後の生徒会室。

分厚い遮音結界が張られ、外の雑音は一切入らない。

室内には銀条タケルと生徒会幹部四名だけ。


タケルは机に積まれた書類を読み、深くため息をついた。


「……これは、どういうことだ?」


資料を机に叩きつける。

生徒会全員が身を固くする。


副会長「タケル様、アヤトについての調査報告のはずですが……何か問題が?」


タケルは一枚の紙をつまみ上げた。


「“問題しかない”とさっき言ったはずだ」


彼が読み上げたのは――


『元職場の元同僚

 → “思い出せない”“顔を覚えていない”“印象が薄い”』


『アパートの隣人

 → “いたような気がする”“名前が出てこない”』


『前の勤務記録

 → データ抹消。復元を試みるも“外部から改ざんされた形跡あり”』


書記の少女が震える声でつぶやく。


「……こんなに証言がバラバラなんて、あり得ません……」


タケルは静かに首を振った。


「いや、逆に“統一されすぎている”。

 人間の記憶は曖昧でも、同じ言葉を並べ立てることはほぼない。

 これは“意図的にばらまかれた偽情報”だ」


生徒会は息をのむ。


タケルは続ける。


「アヤトの前職の社員データは全消去。

 住居情報にも外部からの改ざん。

 住所の契約履歴は“架空名義”。

 それらを隠すための情報が、複数の場所に散発的に混ぜられている。」


副会長「まさか……スパイか何かですか?」


「……スパイどころじゃない」


タケルは調査班の鑑定結果を見せた。


『消去作業は、一般的なハッキングではなく、

 “専門家レベルの組織的改ざん”の手口に近い。

 単独犯では不可能』


生徒会全員の顔色が変わる。


書記シズハ「つまり……誰かが意図的にアヤトさんの正体を消している?」


タケルはゆっくり頷いた。


「そうだ。

 “プロの裏工作”だ。」


副会長「そんな……! そんな人間、校内にいません!」


「問題はそこだ」


タケルは指を組んで続ける。


「アヤト本人には魔力も影響力もない。

 だが――

 “アヤトを守ろうとしている第三者”がいる。

 そしてそいつは優秀だ。」


タケルの思考は一つの真実に辿り着きつつあった。


(……リナの周囲に、裏社会の専門家がいる?

 情報改ざんのプロ?いや、リナには師匠がいると聞くが、そんな人間ではなかった筈…。

 そんな人物、聞いたことがない……)


もちろん、クロの名前など知らない。


だが、確信だけはあった。


「アヤトは“守られている”。

 裏社会レベルの工作ができる何者かに。」


生徒会室が静まり返る。


タケルは立ち上がり、黒板に数字を書いた。


『1ヶ月後』


「1ヶ月後、アヤトと勝負する。

 校内公式試合という形でな」


副会長「勝負……ですか?」


「そうだ。

 あの男の“中身”を暴き、

 リナにふさわしくないと証明する」


タケルの瞳は氷のようだった。


書記シズハが必死に訴える。


「タケル様……リナさんは、アヤトさんを大切に思っているんです。

 勝負なんてすれば……!」


タケルは振り返らずに言った。


「だからこそだ。

 本当に価値がある男なら、俺に負けるはずがない」


「……タケル様……」


「そして――もし、アヤトがただの凡人なら……

 リナの隣に立つ資格はない」


その声は冷徹だった。


タケルは扉へ向かう。


「準備を始めろ。

 勝負の形式は追って決める。

 アヤトを守る影の存在が何者であれ……

 俺が直接、リナの“世界”から取り除いてやる。」


そう言い残し、生徒会室から出ていった。


残された生徒会メンバーは固まり、

シズハだけが小さく震えてつぶやいた。


「……タケル様……

 あなたはリナさんのためと言っているけど……

 本当は――

 あなた自身の心が壊れかけているの……気づいて……」


生徒会はまだ知らない。


アヤトの“身元を消した何者か”――

それが、リナの家に普通に居候している男・クロであることを。

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