表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/20

銀条タケルという少年の過去

銀条タケルは、生まれた瞬間から“勝ち組”として世界に迎えられた。


大手広告コングロマリット、銀条グループ。

日本だけでなく国際的な広告戦略と政治ネットワークを持つ巨大企業。

その社長を父に、完璧な礼儀作法と社交界の教養を持つ母を持ち、

タケルは“エリートたる宿命”の中で育った。


寝る前に聴かされるのは童話ではない。

幼いタケルの枕元で読み聞かされていたのは、

《世界の成功者列伝》

《帝王学――人の上に立つために》

そんな声が、子守唄の代わりだった。


幼少期から魔法の才能も突出していた。

属性は希少な“空属性”。

テレキネシス、風圧、視界操作――

育てれば軍事レベルの支配力を持つと評価された。


教師は言った。


「あなたは選ばれた子です。トップに立つための、天に選ばれた才がある」


タケルは信じた。

疑う理由はなかった。

自分は特別で、上に立つのが当然だと。




**************************




中学、高校と、タケルの人生は常に上昇する線を描いた。

成績はトップ、魔法もトップ。

人脈も財力もある。

家格でも実力でも、同世代に勝てる者はいない。


生徒会長――

当然の結末だった。


周囲は従い、女子は憧れ、男子は肩をすくめる。

それが普通の日々。


だが、ひとりだけ違う少女がいた。

ホテル王国クレストホールディングス

その若き社長――リナ・クレスト。


同級生であるはずなのに、彼女はすでに“社会の頂点”を生きていた。


タケルは初めて、自分と同格の存在を見た。


いや――認めたくはないが、

気づいていた。


自分と同じ高さに立つ者だと。


リナは才気があり、美しく、凛としていた。

人を見下さず、それでいて誰よりも高い場所にいた。


傍らに立つ姿が、似合うと思った。

この世界で、並び立つのは自分だけだと。


タケルの中で決まった。


「あの女は、いずれ俺と家庭を築く運命なのだ」


それは恋というより、

所有欲と運命論と誇りの融合。


だが――

それは突然だった。

リナが事故で車椅子になったという噂が流れた。


最初、タケルは冷静だった。


「そんなもの、彼女ならすぐ乗り越える」


だが現実は冷酷だった。

リナは静かになり、校舎に姿を見せなくなった。


周囲は労った。

教師たちも、同級生も、優しく声をかけた。


タケルだけが――違った。


「弱った姿を見せる彼女を、愛せない」


完璧であるはずの存在が、不完全になった。


彼は怖かった。

失望したわけではない。

むしろ逆だ。


完璧な存在が傷ついた姿を見ると、

胸が締めつけられて、息が苦しくなる。


それを“弱さ”だと認めたくなかった。


だから、離れた。


そして自分に言い聞かせた。


「強き者には強き者がふさわしい。

…幼い夢を引きずる必要はない」


タケルは、リナから目を逸らした。


******


それが、昨日までの話だった。


校舎の廊下。

歓声と光の中を歩くリナの姿。


――歩いている。


車椅子も杖もなく。

あの頃より強く、美しく、誇り高く。


胸の奥に、何かが破裂した。


取り戻したい。もう一度隣に立つ資格を証明したい。


そう思った。


だが――リナの視線の先に、知らない男がいた。


魔力も才能もない、凡庸な男。

優しい空気を纏いながらも、どこか泥臭く、

生きる匂いをまとった人間。


そしてリナが、こう言った。


「大事な人」


タケルの世界が音を立てて崩れた。


心には“誇り”ではなく、

もっと鋭く、もっと黒い感情が満ちた。


嫉妬。


恐怖。


認めたくない敗北感。


そして――


「あの男を排除する」


それが、銀条タケルの選んだ答えだった。

もし、よろしければブックマークと評価の方、よろしくお願い致します。


また、次回の投稿は本日の12:00を考えております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ