第1話 コインと制限と、最初の敵
第1話 コインと制限と、最初の敵
目が覚めると、また同じ天井だった。
灰色の石造りの部屋。壁には奇妙な文字が浮かんでいる。
アキラはゆっくりと起き上がり、手のひらを見た。そこには、青白く光る10枚のコインがしっかりと握られている。
「……また、ここからか」
アキラは何度目かの“目覚め”に、もはや驚きもしなかった。
この世界――リュミエールの街に転生してから、既に三度目の朝を迎えている。
死ぬたびに時間が巻き戻り、コインだけが手元に残る。それが、彼に与えられた唯一の特権だった。
アキラは部屋を出て、街の中央広場へと向かった。
朝の空気は冷たく、石畳の道を歩く人々の表情はどこか険しい。
広場の中心には、青白く輝く「コイン生成装置」が鎮座している。
装置の前には、今日も人だかりができていた。
「今日こそ、うまくやる」
アキラは人混みをすり抜け、装置の前に立つ。
装置の表面には、淡く光るパネルが浮かんでいる。
【本日のコイン生成:残り1回】
アキラは手を伸ばした――その瞬間、背後から鋭い視線を感じた。
「おい、そこの新入り。コインは俺たちのものだ」
振り返ると、筋骨隆々の男が二人、アキラを取り囲んでいた。
彼らは“ギルド”と呼ばれる集団の下っ端。新参者からコインを巻き上げることで有名な連中だ。
「……譲る気はない」
アキラは静かに言った。
だが、男たちはニヤリと笑う。
「じゃあ、力ずくでいくか」
次の瞬間、拳が飛んできた。
アキラは咄嗟に身をかわし、装置のパネルに手を押し当てる。
【コイン獲得:+10】
「やった!」
だが、男たちは容赦しない。
アキラは蹴り飛ばされ、地面に転がる。
ポケットの中のコインが、じゃらじゃらと音を立てた。
「そのコイン、置いていけ」
アキラは悔しさに歯を食いしばる。
だが――
“死んでも、コインは持ち越せる”
頭の中に、システムメッセージが浮かぶ。
【死亡時、現在所持コインのみ次ループに引き継ぎ可能】
「……いいさ。どうせ、またやり直せる」
男たちに殴られ、意識が遠のく。
最後に、コインだけをしっかりと握りしめた。




