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八月の杉  作者: 中村雨歩
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ハシモト・ハーレイ・クインは寺の子?

「美術コースの子たち、いい感じだったね!」


「悪い感じだと思ってたのは、あんただけだよ」


「やっぱり人って会って話してみないと分かんないもんだね〜。しかし、リュウオウって変な名前だよね。笑っちゃうよね。彼、龍王って感じじゃないしね」


「まあね。でも、彼が悪い訳じゃないよ。ヘンテコなキラキラネーム付けられて辛いのは彼だからね。悪いのは親だよ。私なんて逆キラキラだから、彼の気持ちを察するよ」


「逆キラキラね〜。上手い事言うね。そのリュウオウくんだけど、スギのことずっと見てたよね?一目惚れかね?」


「そんなこと無いでしょ。みんなダンス観てただけでしょ」

 本当にそんなこと無いと思う。私に本当に興味がある人なんていないと思う。両親ですら興味が無いんだから。正直、私も私に興味が無い。


「そうかな〜。杉子さんはスタイル抜群ですからね〜」


「茶化すな!私だって好きでデカくなったわけじゃないんだよ!それに、スタイルだけ見て一目惚れだとしたら、最低じゃん!」

 でも、正直、スタイルに自信が無い訳ではない。胸はともかく、足は長いと思う。でも、そこを見て、一目惚れとか言われても全然嬉しくない。母の周りにいるスケベおじさんみたいな目で見られたくない。スケベおじさんも嫌だし、スケベ心を分かりつつ利用している母も嫌だし、次いでに言うと、スケベ心を露骨に利用している人たちは本当に嫌だ。自分はそうなりたくない。TikTokやInstagramでパンツ見せて踊ってる子とか本当にあり得ないと思う。ダンスはスケベおじさんのための物ではないと思う。ダンスは真面目にやりたいと思ってるから、この気持ちに水を刺されるのは本当に腹が立つ。


「何そんな怖い顔してんの〜。でも、ホント美術コースもいい感じだし、神社も悪くないって思ったよね」


「だから、神社も悪いと思っていたのは、あんただけだよ」


「寺とか神社とか暗い感じしない?お化けとか妖怪とか出そうで嫌じゃない?特に、寺は嫌だよね」


「私は神社も寺も嫌じゃないよ。むしろ、空気が落ち着いていて好きだよ。お化けや妖怪は嫌だけど・・・。というか、寺とか神社嫌い過ぎてない?普通、そんな意識しないと思うけど」


「寺に住んでたら、寺とか神社嫌いになるよ」

 え?寺とか神社に住む?


「あんたが妖怪ってこと?」


「違うよ。実家が寺なんだよ。言ってなかったっけ?」


 優奈の言葉に驚いた。寺の子?この容貌で?破戒僧?いや、破戒尼僧?色々な言葉が頭の中を駆け巡った。


「あんたの実家お寺なの?」


「だから、そう言ってんじゃん」


「今まで、散々、私の名前を古いとかバカにして言いまくってたけど、お寺なんてキングオブ古いじゃん!もう、私のこと古いって言う資格ないからね!」

 ちょっと勝ち誇った気分だ。


「別にバカになんてしてないよ。名前のセンスが古いって言っただけだし、バカにしてるのはスギの昭和な言葉のチョイスだけだよ」


「いい〜〜〜!また、バカにした!もう!腹たつ!」

 両手をブンブン振り回して抗議した。


「そうそう!そのリアクションセンス古い!まあ、古き良き昭和のセンス?」


「まあ、いいわ。優奈も古き良き日本文化と密接な関係があることが分かったから、安心したよ。古きに縁がある者同士仲良くしていきましょ」


「ハハハ!オーケー!仲良くしていきましょ」

 優奈の声は不思議と元気が出る。たまにムカつくけど・・・。ここは、あんたがいるから安心できる場所だと心から思う。優奈、ほんとたまにムカつくけど、有難う・・・。


「ところでさ、スギってお化けとか見える人?」


「は?何言ってるの?見える訳ないじゃん!ってか、いないでしょ!」

 唐突に本気か冗談かも分からない口調でおかしな事を言う。


「ふ〜ん、いないか・・・」

 優奈は顎を撫でながら、何か考えるように宙に目を漂わせている。いつもと少し違う彼女の様子にゾワっと鳥肌が立った。


「何、何、あんたは見えるの?」

 見えないって言って欲しいという願いを込めて質問した。


「まあ、寺の人間だからなのか、見えるというか、生きている人間とお化けの区別が付かない・・・」


 全く望んでいない答えが返って来た。お化けの類いは怖いが、しかし、ここで臆していたら女が廃る。精一杯の虚勢を張って叫んだ。


「優奈!あんたが何者だろうが、私の友達だからね、いいね」


「う、うん。もちろん・・・」

 優奈が呆気に取られたように目を丸くして頷いた。そして、伏し目がちになリながら、笑みで口元が歪んだように見えた。その笑みが、喜びの笑みならいいのだけど、と思いながら、また、一つ質問をした。


「私は、生きているよね・・・?」


「え!スギは生きてるよ!大丈夫。区別が付かないって言ったって、初見の時に一瞬区別が付かない時があるってだけで、しばらく一緒にいたら間違いなく区別できるよ」


「それはよかった!じゃあ、このクラスにもお化けはいないね」


「それも大丈夫。このクラスにはいないよ」

 その言葉にちょっと安心した。


「あ!」


「何?」


「スギの昭和のリアクションのセンスはもしかしたら、何かが取り憑いているか、昭和生まれの新しいタイプの幽霊かもしれない・・・・」


「おい!ふざけるな〜。ドキっとして損した。私は名前が昭和なだけだよ」


「その名前は大正時代のセンスだけどね」


「ひどっ!」


「ふっ、あははは・・・」


 二人して笑った。鬱々とした人生だけど、優奈とふざけ合っている時間は、私にとってかけがえの無い大事な時間だ。


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