消える月代
夏祭りが終わってからの新月の深夜。神社の境内に月代こと、八代加代が見えない月を眺めていた。その口元は笑っている。
「ツッキー・・・」
優奈が息を弾ませながら声をかけた。その声に驚きながら加代は振り返った。
「ハッシー?どうしてここに?」
「私の家、寺、この神社の隣りだから。胸騒ぎと妙な気配があったから来てみたらツッキーがいたからびっくりしたよ。何でここに・・・。タイムリミットが、今ってこと・・・?」
「そう。この神社の神様との約束」
「加代!」
どこぞのおじさんが叫びながら走って来た。
「あなた・・・」
「あなた・・・?」
「会えた・・・。この神社の夏祭りの伝説を聞いて、いい歳をして馬鹿みたいだけど、信じてずっとお参りを続けて来たんだ。何も拠り所が無かったから、君を思い出す度に神社に来ていたんだ。でも、まさか会えるとは思わなかった。俺、もう死ぬのかな・・・?」
少し寂しげに笑うおじさんにツッキーは近付いて、頬を両手で触れて言った。
「信じてないじゃない。ふふ、そう、あなたの仕業・・・いえ、おかげだったのね。突然、現世に戻って家に帰っても、誰も私が見えないし、声も聞こえていないし、どうしたらいいか分からなくて大変だったんだからね!」
「ごめん・・」
謝るおじさんはリュウにそっくりだ・・・。
「いいの! それからが楽しかったから。建とも話せたし、瓶底メガネで誤魔化しながら、久しぶりに制服も着られたし、学校の入り口にあったマネキンから取って着ちゃったけど、もう返したからいいよね。そして、ハッシーとも仲良くなれたしね」
そう言ってツッキーは満面の笑みで私の方を見た。私も笑みで返した。改めて、ツッキーが幽霊に成った経緯が分かった。そして、この神社は不思議な神社だ。ウチの寺も大概おかしいと思っていたが、それを遥かに超えている。
「建、大きくなったね。好きな子ができたみたい。すごく綺麗な子」
「え、そんなこと聞いた事ないよ」
「私は学校に潜入して近くで見たから間違いないよ。妬けちゃうくらい美人な子だよ」
「加代より美人なんて見たことないよ」
「何、言ってんのよ・・・。でも、嘘でも嬉しい」
「本当だよ。僕は嘘なんて言わないよ」
二人の会話を背に神社を後にした。新月を眺めながら、歩いていると、ツッキーの気配が消えた。そして、嗚咽が聞こえた。




