近付く神社コラボイベント
朝、登校するなり、杉が嬉しげに話しかけて来た。
「優奈、あの絵は私だって!」
「お!そうでしょ。そういう事なんだよ」
ちょっと得意な気持ちになった。応援団としても役割を全うできたという満足感があった。
「いや〜、参ったね。あたしのダンスの姿が素晴らしかったって言われちゃったよ」
ん?
「リュウは、杉のダンスがよかったって?」
「リュウ? ああ、八代くんね。リュウオウくんは八代健っていう名前なんだよ」
何か、進展したのか、してないのか分からないな・・・。
「その八代くんは、杉についてはダンス以外のことは何も言ってなかった?」
「う〜ん、そうだね。ダンスだけだね・・・」
杉が鈍感なのか、リュウの押しが弱いのか分からないな。また、応援団を招集するか・・・。
「あ、そう言えば、神社コラボそろそろ追い込みだね。八代くん達も頑張ってるみたいだし、私たちも頑張らないとね!」
「あ、そうだね。我々のダンスの完成度を上げないとね!来週にはリハーサルだもんね」
そして、放課後、今日は実家の手伝いがありダンスの練習を休み、家路に着いた。今日はやむを得なくダンスの練習を休んだが、夏祭りの神社イベントのために休みも返上で練習してきた身としては、絶対に成功させたいという気持ちがある。それと、まだ確信はしていないが、この神社のイベントには何かあると感じている。どうも、美術コースのコラボイベントが始まってから、背筋が震える頻度が増えている。と、思っていたら、今までの最大級の背筋が凍る感覚を覚えた。
「ハッシー、いい?」声の方に目を向けると、ツッキーがいた。いいよって言う間も無く、話しかけて来た。
「時間が無くなって来ちゃった」
「時間が無くなった?どういう事?」訝しみながら質問した。
「タイムリミットは、お祭りと、その次の新月の夜」
あ〜、分かってしまった。何となく分かってたけど、それを認めたくなかった。でも、今、確信した。ツッキーは人外の者だ。
「ツッキーは、リュウの、八代健の・・・お母さん・・・?」そう言った途端に何故か涙が溢れそうになった。
「ハッシー、信じられないかもしれないけど、そうなの。私の息子を幸せにするために、ご協力お願いします。私、早く死んじゃったから、建に何もしてあげられなくて、自分勝手なお願いだけど、お願いします」そう言って、ツッキーは頭を下げた。
私の覚悟は決まった。寺に生まれたことが嫌だった。人ではない何かが部屋の中を通り、時には話しかけて来る。兄は何も感じず才能が無かった。だから、父から寺の後継ぎは私だと言われた。私はあの寺に生まれた事が嫌で嫌で仕方がなかった。
幼い時は、単純にお化けが怖かった。知らない人が突然家の中にいるのだから当然だ。しかし、それ以上に声が聞こえるようになってからは、自分が彼らのために何もできない事が辛かった。何もできない自分を責めた。自分が無能だと言われているようで辛かった。そして、何も見えない兄を恨んだ。心の中で兄を無能呼ばわりして罵声を浴びせた。何で私だけがこんなに苦しまないといけないの?と思った。何も悪くない大事な家族である兄に心の中とはいえ罵声を浴びせ、自らの無能を責める日々が苦しかった。
ツッキーの姿がはっきり見え、言葉がしっかり聞こえる。だから、想いを受け止められる。覚悟が決まった。溢れる涙で世界が綺麗に見えた。私は、幽霊も、妖怪も、神も見える。話しを聞く事ができる。もう自分の人生から目を逸らさない。
「ツッキー、任せて! 必ずリュウを、健を幸せにしよう!」そう言って、ツッキーの手をしっかり握った。
幽霊の手をこんなにしっかり握れるのは、本当に私には才能があるのだろう




