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八月の杉  作者: 中村雨歩
12/23

美術コースの小競り合い

 ダンスコースのハッシーこと橋本さんと美術室で話した次の日の朝。

 今までの自分では絶対にあり得ない行動だが、早速、職員室まで行って先生に神社イベントの背景の絵について質問をした。


「先生、ダンスコースとのコラボイベントの背景の絵の打ち合わせっていつやるんですか?」


「え?クラス委員の宮野からもう決まったって聞いてるよ。誰がどの部分を描くかは聞いてないけど、来週には方向性をダンス部には伝える予定だよ。その前には、宮野から詳細聞く予定だけど」


「え?絵は決まっているという事ですか・・・」

 腑に落ちない気持ちで職員室を後にした。


 教室に入ると木下が声をかけて来た。昨日のことがあるからなのか、得意顔だ。

「リュウオウ殿、ダンスコースとの接触のための作戦はいかが致しましょうか?」


「そのことなんだけど、さっき、職員室に行って来たんだけど、もう、クラス委員の宮野くん?さん?が絵はもう決まったって、先生に言ってるらしいんだよね」


「どういうことだ?まだクラスで打ち合わせもしてないじゃん。クラス委員の宮野?」


「宮野くんが絵を決めたって先生に言ったの?」

 木下の横から山瀬が話題に入って来た。


「うん、そう言ってた」


「じゃあ、宮野くんに聞いてみようか。宮野く〜ん」

 そう言うと、山瀬は教室の後ろの方で集まっているグループの方に向かって行き、何か話しを始めた。すると、その内の一人が声を荒げた。


「勝手な事してるのは、八代の方だろ!」

 誰かが僕の名を叫んだ。木下と顔を見合わせてから、そのグループの方に歩いて行き、山瀬に話しかけた。

「どうしたの?」


「絵なんて決まってないって。八代くんが勝手に進めてるんだから、勝手にやれって」


 山瀬の言葉を聞いて木下の目付きが変わった。グループを見据えて、少し、腰を落とした。ケンカする気か?と思って、焦って止めようと思うが先に山瀬が素早く、木下の左袖下を掴んで下に引いて、叫んだ。


「待って!」


 木下は、全く予想できなかった山瀬の動きに圧倒されて、膝を強く床に打ちつけた。


「痛ったっ!」


「木下くん、また同じ過ちを冒す気?今はもう一人じゃないよ。八代くんにも迷惑がかかるよ」


 そう言われた木下がびっくりしたような顔で山瀬を見た。睨み付ける山瀬と目が合い、ふっと戦闘体制から、一変、背筋を伸ばした。山瀬は、その胸に右拳をコンコンと2回叩き付けて、木下の横を通って、ドアの方に歩いて行きながら、小声で呟いた。


「反省してね・・・。私は王の復権を信じてる・・・よ」


 木下はゆっくりと立ち上がり、直立不動で何やら顔と耳を赤くしている。木下は一呼吸してからとんでもないことを言い放った。


「おい!宮野とその他の者達に告ぐ。君たちは大変な誤解をしている。」

 その言葉に宮野と後ろにいる面々がいぶかしむ目を向けた。


「この八代が美術室で描いている物は、恋をしたダンスコースの子を描いているだけだ。クラスのみんなを無視して好き勝手やってる訳じゃないんだよ!」


 そう言って、得意げに僕の方に顔を向けた。


 おいおいおいおいおいおいおいおい・・・。何言ってるんだ?お前は?


「そ、そうなんだ・・・。八代くん、ごめん。誤解してた。コラボ授業の後から、ずっと美術室にいたから、クラスのメンバーに相談せずに、好き勝手にやってたのかと思ってた。ダンスコースの子に好きな人がいたんだね。応援するよ」

 木下の爆弾発言に、圧倒された宮野の言葉に共鳴するように、後ろの面々もうんうんと頷いている・・・。


 いつの間にか、その後ろの靴箱のロッカーの上に座っていた月代が足を組んで膝に肘を付いた姿勢でニヤニヤと笑っている。月代の表情の意味は本当に読めない。


「で、八代くんは何さんが好きなの?」

 宮野の声に我に返った。


「え?」


「杉とか言ってたっけ?」


 もう黙っていてほしい・・・。木下を睨んだが、全く気が付いていない。


「応援をする会ってのがあるみたいだから、よかったら入ってくれよな!」


「分かった。入るよ。八代君、誤解してた。ごめん」


 そう言う、宮野の肩に腕をかけてご満悦な表情でこちらを見ている。


 唖然とする僕に向かって月代が近づいて来て、通り過ぎ様に言った。


「リュウオウ殿、よくやりましたな。しかと、仲間と共に争いを収めましたな」


 口元に笑み歪めながら、教室を出て行った。


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