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八月の杉  作者: 中村雨歩
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プロローグ

 「この度は、個展の成功おめでとうございます!」


 新進気鋭の期待の新人という事で、様々な国の記者が、僕を囲んでお祝いの言葉をかけてくれる。賞賛の言葉をもらえるのは有り難い事だが、人前に出るのは苦手だ。何度も妻の勧めで、個展やイベント事を行なってはいるが、一向に得意にはならない。少し離れた所で取材を受けている妻の方を恨めしげに見やると、すぐに気が付いてくれた。片手を上げ、ちょっと待ってくれと言っているようだ。仕方ない。僕ももう少し頑張ろう。


「八代さんの作品を見てエドガー・ドガの再来なんて言う人もいますが、意識して作品作りをされていらっしゃるのですか?」


「え、いえ、そんな事を仰る方がいるのですね。ドガだけでなく、印象派の作品はよく見ますし、それ以前の新古典主義もそれに反するロマン主義も見ます。ジャンルを問わずに勉強はしているので、影響は受けているとは思います。もちろん現代アートやデジタルアートも学ぶべきところがあります。敢えて私の作品の個性を言うなら、私が好きなものを全力で描いているところでしょうか・・・」

 答えてから、記者が望んでいる答えではないだろうな・・と思いつつ、つくづく、自分の人前でのパフォーマンスの下手さに辟易する。


「お待たせ。大丈夫?」

 妻がやっと来てくれた。あまり大丈夫ではないが、これで、これ以上恥をかかなくてよくなったとホッとした。きっと、僕は迷子が母親に発見された時のような顔をしていただろう。彼女はまさしく僕にとってそんな存在だ。


「今日はお越し下さり有難うございました。八代は少々疲れているようですので、休憩させてもらいますね」

 マスコミに挨拶をして、不甲斐ない僕を助け出してくれた。しかし、僕も何故か一言言ってやりたくなった。


「私の作品が踊り子の姿を描くことが多いので、ドガと言われているのかと思いますが、どちらかというと、プロデューサー兼マネージャーの妻ガラの存在無くしては成功し得なかったダリの方が近いかもしれませんね」

 いい事言ったでしょ?と言わんばかりに周りを見渡したが、皆キョトンとしている。どうやら上手くいかなかったようだ・・・。


「ふっ、何言ってるの?」

 でも、妻が笑ってくれた。それだけでいい。僕はそのためだけに絵を描いているのだから。二十年前のあの時から一分も気持ちは変わっていない。


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