目覚めたら、女神様の胸の中 73
「……本来氏神というのは、その地域に住まう人々を見守るモノとして存在している神のことを意味している。だが、新咲や祖母殿を見守っているのは、先程初代と約束を交わした龍神である彼の直属の眷属でね。初代が亡くなった後ぐっと気落ちしてしまった彼はそれでもしばらくは彼女の子供も見守っていたんだが、その後その子も往生し、村の人々も一人また一人と亡くなって世代交代が進むにつれて移ろいゆく時間に耐えられなくなってしまったようだ。彼は自身を捨てて皆の所にゆきたいと願ったのだが、彼女との約束がある手前血縁の者を見捨てるわけにはいかず、最終的に取った手段が代わりの者を立てて自分はもう人にかかわらず隠遁生活を過ごそうといった具合でね。すっかり人にも外の世界にも興味関心を向ける事なく過ごしていたのだけど……新咲、君は覚えているかい?いつもの様に生前の祖母殿と一緒にお参りにいった際に、君はたまたま眷属に言われて顔を出した彼に向かって挨拶をしたんだよ。「こんにちは」ってね」
「へ……?私が、ですか?」
「うん」
神様に突然言われて、うーん?と首を捻るものの言葉通り身に覚えが無い。一体いつの時期だろうかと思案したのを察したのかお祖母ちゃんが横から答えを口にしてくれた。
「新咲、多分あんたは覚えてないかもねぇ。確か四つか五つの時だね、いつもお参りにきている場所なのに、突然「今日はきらきらしてるね」なんて言い出して何かをまっすぐ見つめていたと思ったら急にさっき神さんが言ったように挨拶をしていたからね。あの頃の新咲の目には本当に色んなものが見えていたんだろうよ。……それこそ今に繋がる存在にも出会って拾って懐かれちまったみたいだけどね」
「?」
最後にぼそりと付け加えたお祖母ちゃんの言葉が聞こえず、もう一回の意味も込めて疑問をあらわにしてみたが、なんでもないよと軽くあしらわれてしまった。
一体何だったのかと思いはしたが、それよりも祖母に言われた通りそう言われてみればそんな記憶も確かにあったかも……?と思わないでもない。が、所詮は小さな頃の話しだ。大人になった今に記憶があるかと言われれば無いと断言できる程うっすらとした思い出で、ぶっちゃければ私本人に聞くよりも祖母に聞いた方が確実な事がわかるだろう事は一目瞭然だった。




