目覚めたら、女神様の胸の中 45
「……さて、あんたの憂いは晴れたかね?見たところでどうもあたしには人の心の機微に鈍感な部分があってねぇ、口にしてもらわないとまったく分からない質なんだ。だからリラ、敢えて聞かせてもらうよ」
「ちょ、おばあちゃんっ!一体……」
「あんたが教えられたまちがった言葉って言うのはどんな言葉なんだい?」
「………!!」
それは、つい先ほど聞いた祖母からリラちゃんへの最初の質問と違わない言葉で、私が祖母からリラちゃんへと視線を移すと彼女は直ぐ様反応を示し祖母の顔をまっすぐに凝視していた。
その、リラちゃんの表情は今までとは違うしっかりとした意思のある顔と瞳で、それを目にした瞬間、祖母の言葉は確かに伝わったのだと実感が湧き、安堵と一緒に一握りの悔しさも感じてしまう。
素直に喜べないなんて、なんて狭量なんだと自分自身に困ってしまった。
……と言うか、心の機微に鈍感だなんて生まれてこのかた初耳も初耳で白々しいと声を大にして言いたいところだ!そんな人が涙腺が決壊しそうな人間を気遣って胸元へ抱え込んだり、本人が無意識に傷を戒めとしていまだに自身を赦せないでいた事に気付き、もう自分を赦してもいいと、大切な人が教えた大事なものなんだと気付かせたりなんてできないと言うのに。
(何てことないものなのだと、負担にすら感じさせないと言わんばかりの手腕で上手く言いくるめるなんて……!この、おばイケメンめ!ズルい!!)
脳内で褒め言葉なのか文句なのかよくわからない罵りを繰り返し、できればその役目は自分が実行できたら良かったのにと思う反面、不甲斐ない自分では実行可能だったかと問われれば否と答えるしかなくて。
先ほど怒りと悲しみでべそをかいていた自分の力量不足が今更ながらにずんと身に染みて、益々不甲斐なさに気分が落ち込む心地になるのだった。