目覚めたら、女神様の胸の中 41
ちら、とリラちゃんを見つめながら思い至った私の思考に目の端に映った女神様が密かに頷く様子が見て取れる。そういえば今のいままで聞けた言葉は全て、挨拶か、聞いた言葉の繰り返しか、肯定か否かの返答だけだったと思い返した私は、リラちゃんに人との応対を教えた輩に殺意を抱きながら、その気持ちをやり過ごすように奥歯をギリィッと噛み締めつつも彼女に負の感情を悟られないように努めて明るく笑顔で接することを心がけるのだった。
「……じゃあ、せっかくリラちゃんのお姉ちゃんになったんだから姉らしいことをしてみたいかなぁ。リラちゃんは今、何がしたい?」
「……なに、が………?」
「──もう貴方を否定するものも、縛るものも今この空間にはなんにも無いの。リラちゃんはなにをしても良いんだよ。……何か、望んでいたものはない?」
「………………………」
今まで言葉少なではあったけれど、饒舌とは言い難いまでも開いていた口元が今度は完全に質問に対して閉ざされてしまった。
やっぱり時期尚早というかデリケートな問題にズケズケと踏み込み過ぎてしまったのだろうか。リラちゃんの口調一つで熾烈を極める生前を過ごしていた事が伺えただけに、最後の言葉だけ切羽詰まるような懇願の調子になってしまったのも良くなかったのだろう。
(たぶん彼女はきっと、周囲の環境に人一倍敏感である筈なのに。私の案じる態度なんて見抜かれちゃったんだろうな……。ぁあぁ、失敗した……!!!)
努めて明るくと誓った手前にやらかすとは、自分自身のことだが取り繕うのが下手過ぎてどうかしている。どうしてもリラちゃんの事を想ったら彼女の願いを知って、叶えてあげたいと強く思ってしまったのだ。そうしたら口調や態度も忘れ去ってただただ必死さだけが残ってしまった、それだけだ。だが──
(きっと彼女は周囲の目を気にして、相手の意を汲んだ返答をするように心掛けて来た筈。…それだけが生きる術だったんだから、当然だよね。それなのに気を遣わせる態度を表に出しちゃって……!!!)
後悔先に立たず。時が戻るなら戻って欲しいと願っても無情に今は過ぎて行く。居たたまれなさに私は、彼女に再度チャレンジの意味も含めて提案というほどでもない弱気な言葉を細々と投げ掛けては、彼女の心が遠ざかるのは絶対嫌だと確固たる望みの下伝えるのだった。




