目覚めたら、女神様の胸の中 3
「す──すみませんっ!!私っ、何やらご迷惑をおかけしているみたいで…!ええとっ、…い、今何がなんだかわかってない状態なのですが……お世話になっていたみたいと言うか、ええと、もしかして私、倒れていた…のでしょうか…?そして貴女が私を助けてくれていた、とか……?」
はたと今さらながら、ようやく自分の身の回りに意識が向かう様になった今現在、どういった状況でどういう状態になっているのか──現在進行形で分かっていることは、まるで記憶喪失の人の様に頭の中が真っ白になっている事だけ──と、気づいた私は、そこで初めて混乱が頭を駆け巡っていた。
(──お、落ち着けっ、私…っ!今どうにかこの人に状況を説明しながらちょっと整理もついてきたっぽいし。慌てず騒がず深呼吸───…って言っても、すぐに落ち着くわけないけども…!)
混乱の最中に、先に胸に見とれてる場合じゃなかった…と、自分で自分に突っ込みを入れつつ落ち込んだ私は、そこでようやくどうにか冷静になれたので、目の前にいる美人さんへと対話を試みようと顔を上げて、改めて相手の人となりを眺めてみるのだった。
(──うん、やっぱりすごい美人さんだ!!)
先ほど見た時にも思ったが、緩やかにウェーブがかった金の長い髪に、緑の瞳とこれまた金色の長いまつげ。
あっさりとした足まである長さの白い服を着ていながら、その佇まいには後光が差しているかの様で、私は思わず対話を試みようとした決意が一瞬で砕け散るのを感じ取っていた。
(…うん…まごうことなく美人さんすぎて話しかけていいのかわからない。私なんかが話して──と言うか、視界に入って目を汚していいのだろうか。こんな特出すべき所もない不美人な人間がおいそれと声を掛けるべきじゃ──)
「サラサ、貴方は不美人などではありません。そのような自分を貶める発言は許しませんよ」
「ひぇっ!!」
突如聞こえた、先ほども聞いた優しげな声が凛として思考を遮ったので、私は驚くと同時に別の事実を目の当たりにし。
(──えっ!今声に出しては……?)
確かいないはず、と確信を持って相手の姿を見つめれば、彼女はとてもすまなそうに眉を下げて謝罪の言葉を口にした。
「……申し訳ありません。私には全ての『声』が聞こえるのです。ですから…その、サラサ。貴方の声も音を伴わなくてもわかってしまうと言いますか…伝わってしまうのです」