表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/172

初めまして、異世界 50

まったく記憶にない事実に反論の言葉すら紡げない。確かにさっきまで考え事に集中していて周りを見ていなかった自覚はあるが、いくらなんでも障害物が目の前にくれば私だってすぐに気付くことが出来た筈…などとブチブチ言い訳を色々と考えていたのだがその抵抗がわかりやすかったようだ。バッチリしっかりこちらの不平不満が分かったキラに、やんわりと釘を差されつつも赤ちゃんのご機嫌をとるように宥められてしまった。



「…ご主人、さっきの真名の契約でご主人の考えてることは僕に筒抜けだから。自分で歩くのは諦めておとなしく僕の背中に乗って景色を満喫しよっ。ね、ご主人?」


「ぐぬぅ…!」



よもや飼い猫にあやされる事になるとはと別の意味で致命傷を負った私だったのだが、そういえば地球にいた時もキラは甲斐甲斐しい子だったなと懐かしさと愛おしさを感じてさっきまでの不平不満が遠退いていく。

それに、キラの様子を見ているかぎり本当に私と一緒にいられるのが嬉しいみたいで、ご機嫌でずっとしっぽを立てていたかと思ったら腕や腰に絡ませたり、こっそりとゴロゴロとのどを鳴らしながら静かに歩いている間も私が何かに興味を示したら逐一と立ち止まってそちらに歩み寄ってくれたので、キラの滑らかな毛の触り心地の良さと運ばれることも二回目ということが相まって自力で歩かなくてもたくさん楽しむ事が出来た。



「いろいろみれてすっごくたのしいね〜!…………………ハッ!ってちがーう!!じぶんであるけるんだから、あまやかしちゃいけませーーんっ!!」


「あー…気付いちゃったか。もうちょっと騙されてくれててもよかったのに、ご主人。身体が小さくなってもがんばり屋さんなところは変わんないな〜」


「ぅ……ぁ、ありがとう…」


「どーいたしまして!ま、ちょうどイイタイミングだったから此処からはご主人も歩いてだいじょうぶだよ〜。川辺ももう近いし余計な邪魔者の存在も周辺に感じられないし。…足元にだけは気を付けてね?」


「あ、ハーイ」



キラの忠告についさっきの自身が犯した失態を思いだし恥ずかしさで肩をすくめる。ついでにキラから降りる際にはサイラスさんに抱っこでも降ろして貰ったため、こちらの抵抗も何のそのキラの背中に乗る際にも同じことをしたのだから…と言われてしまい、自身の葛藤や恥ずかしさなども今は子どもの姿なんだから!と強引に自分を納得させつつも、もうどうにでもなーれ!と情緒が自暴自棄になってしまったことは言うに言えない正直な心境であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ