初めまして、異世界 48
「…ところで、サイラスさんがめがみさまのおつかいでわたしをむかえにきてくれたっていうのはさいしょのあいさつでわかりましたが、どうやっていばしょがわかったんですか?ココってこーんなにっ!…ひろいもりですよね?」
「あぁ、それは………そうだな。説明を分かりやすくする為にもまずは水場に場所を移そう。探し当てた理由には君のその姿にも関係がしてくるんだが、まずは何より…お腹は空いていないか?ある程度飲み物も持っているし、これから人の居る場所にいく前に出来たら落ち着いてお互いのことを話し合っておきたいと思っているんだが、構わないだろうか?」
(あ、それってさっきの口を滑らせたことに関してってことデスネ…)
あれで一回調子が狂っちゃって詳しい自己紹介をこっちから出来てないままになっちゃってるんだよなーと遠い目になりかけた時、はたと新事実に気が付いてしまった。
(そういえば、この世界に生まれてから私の名前って…?もしかして今名無しの権米さん状態じゃないのかな!?最初に赤ちゃんの姿として両親のもとにいた訳じゃ無いし。……え、あれ?待って!そうするとこの世界じゃ孤児ってことになる……のかなぁ…?うーん、辛うじて例えるなら女神様がお母さんってことになるけど…………うーーーん、ちょっと違うかなぁ……)
思わず想像してみて、あまりにも庶民的な格好が雰囲気に溶け込まなくて合わないなぁ…とやけにリアルに予想が出来て、違うなと首を左右に降ったのだが一瞬悪寒が背筋を走っていったのは気のせいだったのだろうか。
思い出すのは地球にいた頃の母だけなので、感覚としてまだ意識があちら側に引っ張られているのだろうなと思いながらも、異世界人初心者として早くこの世界に慣れなきゃなーとぽやぽや思いつつ、自分の名前をこれからどう名乗っていこうかとおニューの自分に広がる無限の自由さが新鮮で嬉しすぎて、目の前で一人と二匹が私を乗せるまたは抱っこする権利を争っていることなどまったく気付かずに、新しい人生の一歩として新しい名前をどんな風にするのか。
今の私には自身の名付けのことにしか意識が向いていなかったのだった。