初めまして、異世界 41
「めがみさまのおつかい…!!?」
「…ああ、ようやく顔を上げてくれたな」
ビックリすることを言われて咄嗟に反射で勢い良く顔を上げてみれば、そこには冒険者らしい引き締まった体躯を持つ焦げ茶色の短い髪を持った男性が少々疲労感を目元に滲ませながらもその濃いオレンジ色の瞳を柔らかく弛ませこちらを見ていて、間近で見る笑った顔に何故か知らない人なのにひどく安心しきってしまっている自分に大いに動揺を示しながらも私は最初の挨拶をしようと口を開きかけたのだが──結果的に、自滅した。
「…………………えっと………あなたは、アクトクショウニンですか……?」
「うん?あく─……何の隠語だ?」
「ご主人ご主人、こいつ一応メガミが用意したこの世界での案内人兼用心棒みたいなモノだってご主人が現れる前にメガミが言ってたぞ!俺達すっかり忘れてた…というか、用心棒なら俺達がいるしいらないよな!ご主人っ」
「僕も。ご主人に会えたのが本当に嬉しすぎて頭から消えてた。…ところで、いつまでご主人に触ってるつもりなのかなぁ?とっとと離れなよ」
「…………創世の神には『至宝中の至宝な存在がこの森に守護者と共に居る』と聞いたのだが、あー…まさかこれ程の希少な存在が二体も傍にいるとは……。また説明を省いたのか、あの神は。ハァ。…あと殺気を飛ばすのは止めてくれ、お前たち。流石にこの二体を同時に相手をするのは文字通り骨が折れる」
ハァァアアと、本当に、心の底から心労で出たであろう苦悩のため息と眉間のしわとに、一瞬「あれ?もしかしてこの人、女神様に無茶振りされちゃった…?」と心配になった私は、疲れからだろうか目元をマッサージするように指先で押さえた彼に向かって、せめてこの先は気苦労をかけないように気遣ってあげようと地球でお世話になった気苦労の多い上司に姿を重ねつつ、お仕事お疲れ様ですの意味も込めて労おうと背中をポンポンしようとし──たのだが、残念ながら腕の長さが足りなくて届かなかったため彼の二の腕を軽く叩くことで「応援しているよ」的な意味も込めて改めて、初対面の挨拶を伝えようと今度は相手に届くことを意識して言葉を紡ぎ伝えるのだった。
「……おそくなりましたが、はじめましてっ。さきほどはころぶところをたすけていただき、たいへんありがとうございました!これからまちまでのあいだおせわになる…んですよね?どうぞよろしくおねがいいたします!!…サイラスさん」