初めまして、異世界 32
「──来たっ!ご主人、ブンブンうるさいけどすぐに蹴散らすから少し待っててねっ。ご主人をまた怖がらせたこと、すっごく後悔させてやるからっ!!!」
「え?あ、はい…」
「ご主人ご主人っ!今周りに敵を寄せ付けないよう結界を巡らせたから安心してどーんと構えててくれて良いぞっ!!小さい奴どころか最強種の竜族すら壊せないよう頑丈に周囲に展開させたから、あのうるさい羽音も少しはちっちゃくなると思う!」
「あ、ありがとう…!ハクロウ!!」
私の恐怖心に対し、いの一番に有効的な音と距離との対策をいとも簡単に解決してくれたハクロウへ、細やかな気遣いができるように&こちらの様子をよく察してくれるようになって…!!といたく感動しながら周囲に視界のピントを合わせてみれば、確かに若干虹色がかっている透明な壁が歩幅二三歩離れた周りに見え──たかと思えば、気付けばどこからやってきたのかあっという間に私達の回りをぐるりと先程よりも多くの虫達が飛び交うようになっていて、視界を地球で言うところの蜂のような虫たちが数多に覆う現状となってしまっていた。
(ぐ…っ、こ、怖いけどでも、さっきよりは音も小さいし来るって身構えてたからお陰で少しはマシかもしれない……。視界が数の暴力で鳥肌がとてもとても凄いことになってるけど、ちょっとは耐性が付いた、かな…?)
まだ若干不安を感じながらもこれもキラとハクロウのお陰だと二匹の存在を頼もしく思いつつ隣りを見てみれば、一体いつの間に行動したのかさっきまでそこにいたキラの姿がいなくなっていて。
一瞬ののち「キラは!?」と、悲痛な声を上げれば「外に行ったよ!」とハクロウの楽しそうな声が聞こえたので、そういえばあの子ケンカ腰だったよ!!どうして注意して見てなかったのー!?と自分の失態に大いに悔やむも今はそんな事してる場合じゃないとはっと我に返ると、急かすようにハクロウの背を揺すって自らを降ろすよう要求したのだが希望が受け入れられることはなかった。
「ハクロウ!早く降ろして!!すぐ行かないとキラが…!!!」
「危ないからダメだっ!ご主人!!キラなら心配しなくても大丈夫。ほらっ、あそこ!あいつ嬉々として狩りを楽しんでるでしょ?だから近付かない方が安全なんだ。それにもうすぐ…」
「でもっハクロウ!あんなに数が多くちゃキラだって全部は……!!」
「それも大丈夫。あいつそろそろ狩りに飽きてきて魔法で一掃するつもりだからっ。ご主人は巻き込まれないように此処で俺と一緒に待っていよう」