初めまして、異世界 30
(ぐぬぅうううう…っ、ま、まぁ、いいわ。冒険者と言えど最初は常人なのだから、これから経験値を積んでレベルアップしていけばあるいは私も身に付ける機会がきっと必ずある!はず!!)
それまでは駆け出しの身として強さを磨くことに専念していこう、と無理矢理自分を納得させ進行方向である前方に再び注意を向けるとちょうど生い茂る茂みの間を通り抜けようとしていた所で、鬱蒼と生えている周囲の木々も相まってより一段と周囲の見通しの悪さが際立って見えるように感じられ、不意に「こんな所で魔物に奇襲を受けたらたまったものじゃないなぁ」とちらっと思ってしまった瞬間、ハクロウとキラが揃いも揃ってピタリと足を止めたのはほぼ同時の出来事であった。
「キラ?ハクロウ?どうしたの」
「……ご主人、今こっちに向かってきてる存在が複数個体あるんだけど、そのうちの一つがさっきのプチッとする奴みたいなんだ。しかもさっきより…うん、個体数が増えてるね」
「そっ…!!れは、もしかしてさっきかえりうちにしたホウフクにきたってこと!?」
「うーん、それを差し置いてもこんなにすぐに向かってくるのはオカシイんだよね。あいつらに限らず魔物は実力差がわかった段階で逃げるか暫くは様子見するようなものなのに…。もしかしてこの近くに僕らとは別に脅威となるモノが出現してるのかもしれないね」
「べべ、べつのきょういー!?」
「それだったらソイツも倒せばすぐに解決だな!」
「うん、そうだね」
(ちょ、二匹とも物理で解決だみたいな脳筋的な考え方を教えた覚えは無いのに…!!なんでこの子達こんなに好戦的になってるのー!?)
キラの説明で迫って来ているであろう複数の魔物への出現に不安で戸惑いつつも、二匹の態度にツッコまざるを得ない心境でもあった。
(魔物が複数こっちに向かってきてるんだよね!?さっきよりも数が多い状況なんだよね!!?何で二匹ともそんなに悪楽しそうな顔と声でいるのー!!!?ご主人は今にも震え出しそうだよ!)
心底二匹の様子に疑問を感じながらも再び恐怖で感情が忙しなくなっていた私は気付いていなかったのだが、この時二匹はどちらとも私に恐怖体験を再来させた魔物たちに対して密かに激怒が頂点に達していたようだ。
どうやって殲滅よりもエグい畏怖を与えた上で、かつ、私の目に入らないように滅することが出来るかと方法を二匹なりに試行錯誤していたようで、その思考と怒りで二匹一緒にワルい顔となっていたことはのちの蹂躙劇終了後に知ることとなるのだった。