目覚めたら、女神様の胸の中 117
(つ、疲れた……)
思わずぐったりという表現がばっちり似合うぐらいに女神様に色々と振り回されてしまったのだが、確か私達は今まで転生の際の特典についてあれこれと話し合っていたはずだ。
横道に脱線させた自分の間の悪さが原因でもあるのだが、そろそろ本来の道筋に話しを戻してもいい頃合いではないだろうか。
というか、こんなにも脇道に首を突っ込み続けていてこちら側に残った私達はまだ平気なのだろうか。
ふと湧いた疑問によせばいいものを、ついつい口が反射の如く問いを音へと変えて女神様へと直行させていた。
「あの…色々と話し込んでしまいましたが、まだ私達は女神様の星へ行く準備をしなくても大丈夫なのでしょうか…?」
「そう…ですわね。実は、新咲と過ごす時間が私にとってはあまりにも甘美な空間でしたから、制限があるということをうっかり忘れておりまして。そろそろ私の星の下に降りて頂こうと思っていたところでした。先程もお伝えしましたが、本当に今の星の状態が貴方を受け入れるのにとても良いレベルになったと自負しておりますので、反面としてこれ以上遅れてしまいますと色々と今後への支障が…えぇ、出ると言いますか…」
「それってつまり、もうタイムリミットは近いっていうことなんですか!?」
「………そうとも言います」
ダメダメじゃないですかー!!?と声にならない悲鳴を上げながら、それでも彼女がいまだゆったりとした姿勢で(ただし目は若干泳いでいる)過ごしている姿を見て、まだそれほど時間切れの時刻が迫ってきている訳でも無いのだなと少しだけ冷静さを取り戻した私は、それならばと逸る気持ちを無理やり抑え込み先程の話しの続きを出来るだけ時間短縮で再開させようと交渉を持ち掛けようとした、直前の事だった。
「──ですので、新咲。貴方にはまず私の星へと先に転生をして頂きましょう。特典については他の四つは私が直に決め、徐々に貴方へとお知らせしていきますので、どうぞ安心して生まれ落ちてきて下さいね」
「いぇ!?そんな不安要素ばかりだらけの生まれ変わりだなん……ってぇ!!四つ!??確かあと二つって話しになったのでは…?」
私の聞き間違いだったのかとちらと女神様の顔を見てみたら、にーっこりとすごくすごく良い笑顔を声も無く向けられたのでその鋼鉄の笑みに「あ、最初の希望は却下で結局こうするつもりだったんですね…」と感じた次の瞬間には、私の意識と身体はスピード感のある浮遊状態に包まれていき眩しい光の中へ落ちているのか昇っているのかわからない感覚の中で、白い光の中へ私の全てが同化していく──それが知覚できた新咲の意識の最後の光景だった。