目覚めたら、女神様の胸の中 110
「それでは、新咲と新たな約束も結べましたことですし、次なる付与へと話を進めることにいたしましょうか。確か先程、新咲が望ましいと伝えて下さった付与数は三つでしたね?」
「あ、はい…そうです、ね。勢いついでで伝えてしまいましたが、私としてはそのくらいで…」
「そうですか。……そうしますと、大変悩ましい所ではありますね…」
「え、悩む?…ですか?」
「ええ」
女神様の何かを考え込むような声音とともに口元へと添えられた片手と少し下がった眉毛、さらには若干鋭くなったように見える彼女の目付きに、それほど考え込むような出来事があっただろうかと幾分悩んでみたのだが、こちらで思い付く事が出来る筈も無く。
暫く、彼女の次の言葉を待つことにしてみたのだが──結果は、なんて事ない彼女特有のたいへんな熱の入れようによる不具合と言うべきか。
それとも、彼女本来の性分とも言うべきなのか。
要は、授ける筈だった本来の特典が私の発言によって三つへと激減してしまった為、候補を絞ろうにも選べない状況につい苦悩が口を衝いて出てしまった…というだけの事だった。
「え、えぇと…」
「私の思い付く出来る限りの中で細かく用意してしまったのですが、そのどれもが新咲には必要だと思うばかりの物でして。私にとっては全てが渡すに値する特典だと思うのですが…新咲はいかがでしょうか?」
「う、うーんと、えーと、た、例えばどんな物でしょうかっ!?」
再び、距離を詰められる気配を察した私は、美人さんのアップと勢いに弱いと自覚があった為にじりじりと距離を空けたら、今度は気付いて貰えたらしい。
「焦りは禁物ですわね…」と呟いたかと思ったら、それ以上動く様子もなくこちらに渡してくれる筈だった特典の内容をピックアップしてくれている様子に切り替わったので、私としては安心して身構える必要も無くなったと喜んで身体の強張りを解いたのだが、まだまだ油断は命取りだったらしい。
彼女の次に伝えられた言葉にびっくりした私は、思わず咽せてしまっていた。
「例えばですが…私の星には魔物も当然おります。その脅威に新咲が脅かされないよう万全を期して守る力を授けるのと同時に、攻撃の手段も与えなくてはと思っておりましたので、一切の慈悲を与えることなく確実に葬れる力を与えるには、何をどうするべきかと考え抜いておりました。そうして思考し抜いた結論、生命に必要な空気を自在に操る力を与えれば良いと気付きまして。これなら武器や体躯に比率が足りずとも新咲の指一本で、容易くその他大勢を葬ることができ、且つ効率が良いと思ったのです!」
「っげほ!ま、げっほ、そ、無慈悲な…っ、げっほげほげほげほ!」