目覚めたら、女神様の胸の中 10
それならば、私の返事は決まったも同然だ。
「…わかりました。では、お願いしても大丈夫でしょうか?お世話をおかけしてしまうのですが」
「新咲、そこは気にせずとも良いのですよ。私は貴方が健やかなれば、と思っているだけなのですから」
ふわり、と慈愛とも感じさせる笑みで優しげに言葉を紡がれ、知らず知らず強張っていた体が徐々に和らいでいく。
──何故だろう。
彼女の雰囲気が、そうさせるのだろうか。
目の前の女性を見ていると、何故か全てを許されて暖かい何かに包まれているような安心感を覚えている自分がいて、その感覚に内心驚きが勝っていた。
(ううん、営業の身から言ったら羨ましいこの空気感!初対面で警戒されずにすむから切り口がスムーズにやりとりできそうだし、何より話しを最後まで聞いてもらえそうだし…!)
この人が作り出す雰囲気だから無理ではあるのだが、営業初期の頃の自分、もとい、今の自分にも何割かこの空気を分けて欲しい──などと、非日常的な空間にいるせいか、自分にとっての現実的な思考に意識が逸れ始めたが、彼女がこちらをまっすぐ──まぁずっと対面して手も握られたままだったのだが──見て、にこりと笑ったので。
改めて、お願いしますの意味も込めて彼女に開始の合図となる言葉を口にした。
「…それでは、また思い出してみますね」