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47話 最終決戦

「か、カッコいい……。これはちょっと、ときめいちゃうかも……!」

「し、しっかりして緋乃ちゃん!? 目を輝かせてる場合じゃないよ! あれ敵だからね!?」

「ああうん、緋乃ってああいうスタイリッシュな戦闘メカ好きだもんね――じゃなくて! あれが次元の悪魔……?」


 ゲルセミウムのその姿を見た後、確認を取るかのように犬飼へと目をやる明乃。

 しかし、主に緋乃のせいで緩い雰囲気を纏う三人の少女たちとは裏腹に大人二人の表情は非常に暗かった。


「ああ、そうだ。昔見させられたご先祖サマの記憶そのままだぜ……!」

「ぐぅ、なんというプレッシャー……。なるほど、これを見せられたから我が祖先は彼らを……!」


 額に汗を滲ませ、緊張した面持ちで次元の悪魔――ゲルセミウムを睨む犬飼と樹。

 一方、そんな人間たちの事情など知った事かとばかりにゲルセミウムは己の拳をその横一文字に赤く光る目で見つめていた。


『「壁」の破壊は不能……。大規模捕食が行えない以上、地道にエナジーを吸収するしかないか……。まあ贅沢の言える立場ではないか。復活できただけでも良しとしよう……』


 己の能力についてブツブツと独り言を呟いていたゲルセミウムは、ふとその顔を上げて自身の目の前に立つ5人の人間――その中でも特に緋乃へと目線を向けた。


『ホゥ……。人間にしてはなかなかの生命力だな、小娘。普段ならばお前のような美しい娘は愛玩動物ペットとして飼ってやるのだが……運が悪かったな。その生命いのち――我に捧げるがいい』

「来るぞ! 備えろ!」


 ゲルセミウムの背から生える、先端に鋼色のやじりが付いた細いワイヤーが一斉に緋乃へと狙いを定めたかと思った次の瞬間。

 音を置き去りにして、それらのワイヤーが一斉に撃ち出された。


「――ッ!? てやああぁぁぁぁぁぁ!」

「うおおぉぉぉぉぉぉ!?」

「きゃああぁぁ!?」


 緋乃は必死にその場から飛び退くことで撃ち出された6本のワイヤーのうち4本の回避に成功。そのうち避けきれないと判断した残り2本に関しては拳で迎撃を図り――それ自体はなんとか成功した。緋乃の両拳を犠牲にして。


(痛い!? あんな手抜きの攻撃でこの威力だなんて!?)

「緋乃ちゃん!? その手――!? くっ……! 癒しの光よ!」


 緋乃の拳には深い傷跡が刻まれており、その痛みから緋乃は目に涙を滲ませる。

 怪我自体は理奈がすぐ直したのだが、メンバーの中で一番の防御力を誇る緋乃でも防ぎきれないその破壊力を目撃した全員に驚愕と緊張が走る。


「ちょ、ちょっと! 復活直後だから弱ってるなんて言ったの誰よ! めっちゃ強いじゃない!?」

「るせぇ! 本来なら世界ごと喰われて終わってたんだ! それに比べりゃまだマシだ……!」

「これは、不味いな……!」

『ほう、今のを防ぐか。人間にしてはやるではないか……。ふむ、興が乗った。少しだけ遊んでやろう……』


 攻撃の為に伸ばしたワイヤーを本来の長さへと戻しながら、ゲルセミウムは今の攻撃を防ぎ切った緋乃へと賞賛の言葉を贈る。

 そうして再びワイヤーを持ち上げ、先ほどと同様に緋乃へと狙いを定めようとしたその時。理奈が動いた。


「城塞の加護よ! 癒しの風よ! 鷹の目の加護よ! 光の祝福よ――! お父さんと犬飼さんはいても役に立たないから逃げて! 邪魔! 私と明乃ちゃんは下がって緋乃ちゃんの援護! いいね!?」

「これは!? ありがと理奈! これなら――!」

「っしゃあ! こうなったら覚悟決めたわ! 援護は任せろ!」

「待て理奈! いくらなんでもお前たちだけでは――!」

「うるさい! いいから逃げて! いても邪魔だってのがわからないの!?」


 防御力大幅強化に持続回復リジェネ。更に動体視力の強化に全能力強化。緋乃と明乃、そして自身へととにかく補助魔法をかけまくる理奈。

 補助魔法というのはかけたらそれで終わりというものではなく、解除するまで精神力を消費し続ける上に、その維持のために意識も割かねばならぬという非常に「重い」魔法である。

 それを三人もの人数に同時にこれだけの量をかけるというのは高い才能を持つ理奈にとってもかなりの負担であり、賭けにも等しい。

 もし途中で重い負担に耐え切れず補助魔法を維持できなくなれば、待っているのは全員の死なのだから。

 故に理奈は足手纏いと判断した大人二人に対し、必死で暴言にも等しい言葉を吐いてこれを逃がそうとするのだが――。


「クソが! ガキにそこまで言われて――そこまでさせといて逃げれるか! いくら最強の悪魔とはいえ、今は復活直後でガス欠寸前! 今なら俺たちにだって――」

「待ってオジサン!? うかつに突っ込んじゃ――」


 理奈の言葉を受け、逆に奮起した――奮起してしまった犬飼が、明乃の忠告を無視してその肉体を限界まで強化してゲルセミウムへと駆けだした。だが、しかし……。


「うおおおぉぉぉー! ――ガッ!?」

『フン。我も甘く見られたものだ……。人間風情が、身の程を弁えよ』

「お、おじさん!? おじさぁぁん!」


 ゲルセミウムは緋乃を狙っていたワイヤーのうち、4本の狙いを犬飼へと即座に変更。冷静にこれを迎撃した。

 雄たけびを上げながら突進していた犬飼は撃ち出されたワイヤーのうち2本を回避することには成功するものの、残りの2本は胴体と左脚に直撃。その身体を貫かれてしまうのであった。


「グウゥ……ちく、しょ……!」

『愚かだな。そこの魔法使いの小娘の言う通り、素直に逃げていればよかったものを……フン!』

「ぐあああぁぁぁぁ!?」


 ゲルセミウムは血反吐を吐き、地面へと倒れた犬飼を再度ワイヤーの先端に存在する鏃で突き刺す。するとその直後、犬飼の身体が光に包まれ――影も形も残さず、消滅してしまった。


『フム。エネルギー量も大したことがない……。質も微妙だ……。お前たち人間風に言えば、「不味い」と言った感じか?』

「そ、そんな……」

「う、嘘……。まさか……食ったっての……?」

「即死攻撃ってことだね……! これは厄介……!」


 突然の犬飼の死に衝撃を受ける理奈と明乃。

 その驚愕から立ち直れない二人をよそに、緋乃は敵の攻撃手段の一つを暴いてくれた戦友へと感謝の祈りを内心で捧げ――勢いよくゲルセミウムへ向かい突撃した。


(先端の鏃が刺さると不味い! 距離を離されたらあの突きの乱舞が始まるから駄目……! 接近戦でべったり張り付く!)

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