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46話 復活

「えっと……。とりあえずこれで終わり、なのかな?」

「う、うん。相手のリーダーは倒したし……多分これで終わりだと思う……よ?」

「なんか拍子抜けな気もしなくはないけど……とりあえず、みんな無事でよかったわね!」


 倒れ伏す鷹野と、ついでに気を失った鶴野へと応急処置を行う樹を見ながら、緋乃たち三人は話し合う。

 最初は困惑した様子の緋乃と理奈であったが、明乃の明るい声を聞いているうちに喜びの感情が上回ってきたのだろう。緋乃と理奈の顔からも笑顔がこぼれ出す。

 そんな三人を横目で眺めている犬飼の元へ、茶色いスーツを着た男――鼠野が頭から血を流し、片脚を引きずった状態で姿を現した。


「……ぐっ、犬飼。貴様――」

「ああ、そういえばまだ一匹残ってたな……。今頃何の用だよこのクソ雑魚が」

「雑魚、だと……?」

「ああ。真正面からろくに戦うこともできねえ腰抜けの雑魚共。俺たち戦闘班がいなきゃなんもできねえ能無し集団。てめーらの事だよ。まったく、情報収集なんて誰にでもできるカスみてえな仕事でハシャぎやがって……。弱っちい癖に態度ばかりデカくて本当に目障りだったなぁ」

「テ、メェ……」


 その顔に嘲笑を浮かべながら鼠野を煽る犬飼。

 二人の話し声が聞こえてきたことで緋乃たちも鼠野の存在に気付き、最後の敵幹部を拘束しようと動き出す――が、それを犬飼が制した。


「まあまあ落ち着けや嬢ちゃんたち。こいつはコソコソ隠れるしか能のねえ雑魚だから、ちょっとぐらいいいだろ? もうコイツらの悪巧みは終わったんだしな……」

「もう終わった……だと? ふ、ふふふふふ! ふはははははは!」

「ん、どうした頭でも打ったか? いやさっきお前をぶん殴ったの俺だったな! わはは、すまんすまん!」


 突然、気でも狂ったかのように笑い声を上げる鼠野。それを犬飼はただの発狂と捉えて更に鼠野を馬鹿にする言葉を吐くのだが――。


「ちげえよ馬鹿! お前は本当に馬鹿だな犬飼! もう終わった? 馬鹿が! まだ終わっちゃいねえよ! もうあのお方に捧げる分のエネルギーは溜まってんだぜ!? そこのチビがドカンドカンと盛大にやってくれたおかげでな――!」

「え、わたし? えっと、よくわからないけど……やっちゃった系?」

「違うからおろおろすんなや。ただの苦し紛れさ。復活ラインには結構ギリギリだが……まだ足りねえよ。足りてたら俺も樹サンももっと慌ててらあ」


 突然鼠野から名指しにされたことで、不安そうに理奈と明乃を見やる緋乃であったが犬飼がそれを否定。

 胸ポケットから出した煙草に火をつけ、のんびりと一服しながら緋乃を諭す。

 それを受けたことで、緋乃も落ち着きを取り戻した。

 しかし、犬飼のその指摘を受けても鼠野はその自信に満ちた表情を覆さない。

 それを見て、流石にこれは何かあるなということに気付いたのだろう。犬飼が鼠野へと動き出そうとするのだが――鼠野の動きの方がほんの僅かに速かった。


「ギリギリ足りない? いいや、逆だ。ギリギリ足りてるんだよ! ――こうすることでなァ!」

「てめェ……一体何を――なっ!? これは……! てめ、いつの間に!」


 鼠野が指を鳴らした瞬間。樹による応急処置が終わり寝かされていた鷹野と、鼠野自身の足元へ魔法陣が展開される。

 そうしてその魔法陣から発生した光の柱へと飲みこまれる二人。


「ヒャハハハ! 馬鹿が! なんでわざわざ俺がテメエ等の前に姿を表したと思う!? (こっち)に注目を集めるために決まってんだろ! まんまと引っかかりやがって、バーカ!」


 突然のことに慌てる犬飼と緋乃たちを目に、光の柱の中から愉快そうに口を開く鼠野。

 その鼠野の体をこれ見よがしに一匹の小さな鼠が駆け上がり、その肩へとちょこんと座る。それを見て、犬飼が呻き声を上げた。


「そうか、使い魔に術式を仕込んで……!」

「そういうこった! 鷹野のジジイと俺自身を贄に――あのお方は復活する! 褒美を貰えねえのは残念だが……まあ、ここで捕まって全てを失うよりかはよっぽどマシだ! てめえらも道連れにしてやんよ! 俺って実は寂しがり屋でねぇ!」

「やらせるとでも思って――グッ! 硬いなオイ!」

「せやぁ! ――むぅ……!」

「どいて二人とも! こんなもの! はああぁぁぁ! ――嘘、効いてない!?」

「イヒヒヒヒ! イーッヒッヒッヒッ!」



 大慌てで光の柱へと拳と脚を叩き込む犬飼と緋乃に、念動力を撃ち込む明乃。しかし、三人の攻撃を受けても光の柱はビクともしない。

 そのまま鼠野の高笑いが響き――中身ごと光の柱は消失した。


「……ねえ理奈。これ、不味いんじゃない?」

「や、やっぱりあのジジイはさっさと始末しておくべきだったー!? もうおしまいだよ緋乃ちゃん! せめて最後に――ぎゃん!?」

「ええい落ち着きなさいこの馬鹿! あれよ! ギリギリで復活ってことは、復活しても本調子じゃないはず! そこをみんなで叩けば――」


 大声で喚いた後、緋乃へと飛び掛かる理奈。しかし、それは割り込んできた明乃によって阻止された。

 そうしてそのまま明乃に諭されたことで冷静さを取り戻したのだろう。理奈の瞳に理性が戻り、覚悟を決めた様子で鼠野がいた地点へと向き直る。


「あー、悪いなあ。のんびりお喋りしてねえでさっさと潰すべきだったわ……。いやほんとスマン。マジ反省だわ」

「ホントだよこの戦犯! 大戦犯!」

「死んだら呪う」

「全部終わったら殴らせなさい」

「うーん、俺様の評価ボロボロ。悲しいねえ」


 流石にこの状況に対し申し訳ないとでも思ったのか、緋乃たちに向け謝罪の言葉を口にした犬飼。

 しかし、それに対する三人の反応は冷たく。理奈、緋乃、明乃の順で次々に怒りの言葉を貰うのであった。


「すまない、鷹野から目を離した私の落ち度だ……。理奈、それに緋乃君と明乃君も。本当に済まないと思うのだが、今一度だけ力を貸して欲しい。とりあえず、仲間たちに連絡は取ったが……はっきり言って、誰も彼も君たちの力量には遠く及ばない程度のレベルなんだ……」

「お父さん……」


 緋乃たちの前にやってきた樹が、頭を下げてこれから始まるであろう戦闘への協力を改めて依頼する。

 樹の言葉を信じるのならば、ここで自分たちが闘わないと大惨事になるらしい。それを聞いた緋乃は明乃と目を合わせて頷き合う。


「任せて! ここまで来たらもう、乗り掛かった舟ってやつよ! 最後まで手伝うわ! ねえ緋乃?」

「うん。さっきまで休憩してて回復したから、まだまだ気は残ってる。大丈夫、戦えるよ」

「明乃ちゃん……緋乃ちゃん……。ありがとう! 私も戦うよお父さん!」

「すまない……。本当にすまない……!」


 目頭を押さえ、申し訳なさそうに謝罪の言葉を吐く樹に対し笑顔で返す三人。

 そうして犬飼と樹に、緋乃たち三人を加えた五人が戦闘準備を整える目の前で――空間にピシリと罅が入った。


「来るぜ……覚悟はいいな嬢ちゃんたち!」

「これが終われば、ようやくこの騒動も終わりなんだよね……。ん! 頑張る!」

「そういえば……コイツ倒したら、国から報酬とか出ちゃったりするのかしら?」

「ふふ、上に掛け合ってみるよ。一般には知られていないが、妖魔やら悪霊の退治を専門にする部署があるからね……」

「私、ちょうど新しいパソコン欲しかったんだよね~。サクっとやっつけて、報酬で買っちゃおっと」


 明乃の軽口に対し律儀に答える樹。それに理奈が乗っかったことで5人の間に小さな笑いが走る。そうしてそれから間もなく――。


「来たッ!」


 空間に入った罅の量が次々と加速度的に増えていき……その最後に、空間が砕けてその中から漆黒の闇が覗く。

 そうしてその闇の中から姿を現したのは――。 


『フム。活動限界ギリギリと言ったところか……。使えないと唾棄すべきか、それともよくやったと褒めるべきか――貴様等はどう思う? 人間よ……』


 およそ、全長3m程だろうか。まるで人型の戦闘ロボットのようなスマートなフォルムをし、背中から翼のように6本のワイヤーを生やした――人型の異形だった。

ついに一章ラスボス登場です。

ゲルセミウム君はオー○タルフレームみたいなスタイリッシュメカな感じ。

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