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28話 少女たちの戦い

「何、貴様は──」

「潰れろぉーッ!」


 理奈に事前に説明された通り水城邸の玄関前へと転移した明乃は転移完了と同時に気を開放。更に不躾な侵入者たちへと向け念動力の異能(サイコキネシス)を行使した。

 ターゲットは前衛(自分)を無視して後衛(理奈)に攻撃できるライフル持ちの男と、ついでにその側にいた警棒二刀流の若い女の二人であり――明乃の鮮やかな赤色の髪が輝きを放つと同時に、不可視の力場がその二人を押し潰さんと牙を剥く。


「んぎぎぎぎ……ちゅ、ちゅぶれりゅう……」

「ド阿呆……! 少しは耐えろ、バカ女……!」


 自分たちを押し潰さんと、上方より加えられる強烈な圧力。

 それに対抗すべく、男と女は全身に巡らせる気の量を増加させることで、身体能力を更に引き上げた……のだが、明乃の念動力の出力は男たちの予想の上を行く。

 念動力のプレスを受けた男と女は、立つことすらままならずその場に膝をつき、歯を食いしばりながら圧し潰されないよう必死に耐えていた。

 

(とりあえず二人足止め! 残った敵は……)


 そうして二人の敵を行動不能に追い込む明乃であったが、しかし敵は確認できるだけでも五人はいるのだ。二人を行動不能に追い込んでも、まだ三人の敵が残っている。

 そのうちの一人はマリオネット兵と射撃トラップにかかりきりなので除外するとして、これで残りは二人。


「セイヤァ!」


 そうして残った二人のうちの、その一人。

 青龍刀を持った派手なジャージの男が、現在進行形で追い込まれている仲間を救出する事で、戦いの趨勢を決めるべく。

 明乃目掛けて一気に踏み込み距離を詰めると、その勢いのまま青龍刀を袈裟懸けに振り下ろす。


「危ない――わね!」


 しかし明乃は体を捻ることで、紙一重でその斬撃を回避。そのまま反撃として捻った体勢を利用し、大きく踏み込みつつ強烈な肘打ちを繰り出した。


「ムゥ……!」


 ジャージの男はこの攻撃に対し、引き戻した青龍刀を刃を立てた状態で割り込ませることで対抗。攻撃してきた肘を逆に破壊せんとする、カウンター狙いの一手である。だが……。


「馬鹿なッ、D1合金だぞ!?」


 明乃の繰り出した肘はあっさりとその刃を粉砕し、それを見たジャージの男が悲鳴を上げる。

 しかしそれでも、驚いて動きを止めるような愚は決して犯さず。即座に飛び退いて仕切り直しを図ろうとするあたり、このジャージの男も只者ではないのだろう。

 ないのだろうが――やはり、相手が悪かった。


「なっ――!?」

「甘いってのよ!」


 その動きは読んでいたと。足を止めての迎撃ではなく、一度距離を取ろうとするのは見えていたと。飛び退くジャージの男を追いかけるように、明乃は前方へと向かって跳ぶ。

 結果として、明乃と男の距離が離れることは無く。仕切り直して立て直すどころか、むしろより不利な状況下に追い込まれた。

 そんな己の失策を悟り、男は驚愕の後、悔しげにその顔を歪める。


「寝てろっ!」


 そんな男に対し明乃は容赦なく、渾身の飛び後ろ回し蹴り(ローリングソバット)を叩き込む。

 まだ明乃が武術に興味を持っていなかった頃。蹴り技を得意とする緋乃から、明乃は破壊の喜びを知るべきだと。鍛え上げた五体を以て頑丈なものを打ち砕くのはとても楽しいし、嬉しいものだという持論のもと教え込まれた、思い出の蹴り技だ。

 

「見事……ウゴッー!?」


 もはや打つ手なしということを理解したのだろう。

 男は諦めたかのような声色で、明乃に対する賞賛の言葉を口にし。その直後、勢いよく繰り出された明乃の足が男の胸部へとめり込んで、声にならない悲鳴を上げさせる。


(よし、決まった!)


 流石に怪物じみた気の保有量を誇る緋乃には及ばないものの……世間一般の基準で見れば明乃もまた、間違いなく天才と呼ばれる部類の人間。

 その才能に裏打ちされた大量の気に加え、攻防力強化のために展開していた念動力の()。それらが組み合わさった一撃を、マトモに受けてしまったのだ。もはや二度と立つことは叶うまい。


「いやった、まず一人!」

「お……おの……れ……」


 蹴られた勢いで大きく吹き飛び、力無く地面を転がるジャージの男。

 それを見て快哉の声を上げる明乃に対し、スカジャンの男が怨嗟の声を上げる。

 まあ明乃の念動力に押し潰され、身動きが取れないうちに目の前で仲間を沈められたのだから、当然と言えば当然の反応だろう。


「も、もうダメ……マジ折れるぅ……死ぬぅ……」


 ちなみに女の方は限界が近いのか、俯いた状態のまま荒い息を吐いていた。


(さて、さっさとこいつらを片付けて理奈の応援に行かないとね! ええと、理奈の方は――)


 しかし、いくら才能に満ち溢れていても所詮は経験の浅い子供ということか。

 敵の一人を片付けたことに対する喜びからか、明乃はついつい無力化したと、そう思い込んでいる二人の敵から注意を逸らし、理奈の方へと意識を割いてしまう。

 その千載一遇の好機を、スカジャンの男は見逃しはしなかった。


「死……ね……!」


 最後の力を振り絞りでもしたのか。念動力のプレスに耐えながら、男は震える銃口を明乃に向け――。


「〈雷よ(ライトニング)〉!」

「ギッー!」

「ぶぎゃー!?」


 遠距離より飛来した雷が発砲直前だった男と、ついでとばかりにその横にいた女の二人を撃ち抜いた。

 理奈の指に嵌められた指輪型の魔法発動媒体。そこから放たれた雷が、明乃への逆襲を狙っていた男たちを襲ったのだ。


「油断大敵だよ!」

「サンキュー理奈!」


 理奈からの援護射撃によって意識を失った二人の敵が、地面へと倒れ伏す。

 それを確認した明乃は、それまで発動し続けていた念動力を停止する。

 自身もまたスーツの男と激しい戦いを繰り広げている最中だというのに、援護をしてくれた理奈へと感謝の声を上げると――今度は自分が理奈を助ける番だと、その頭脳を高速で回転させる。


(けっこー攻防の入れ替わりが激しいし、砲撃は当てにくいわね……。だからと言ってプレスじゃ範囲が広すぎるし、カッターは周辺被害が……なら!)


 軽く見たところ、理奈と男の戦いは近接戦を挑む男と、それを防御魔法で防いでは隙の少ない魔法で反撃し、相手が怯んだ隙に距離を取ってはまた別の魔法を叩き込む理奈――という形のようだ。

 二人とも激しく動いているため、何も考えず遠距離攻撃をぶち込んでは当たらないし、逆に理奈の邪魔になってしまう可能性もある。

 ならばと明乃が取った手段は、目標の周囲に力場を発生させ、その動きを封じることだった。


「止まれーっ!」


 明乃はスーツの男に右手を向けると、相手の周囲の空間を押し固めるイメージの元、異能を行使。事前にチャージをする余裕が無かったため、発現した力場の強度には不安が残るが――ないものねだりをしても仕方ない。

 なんにせよ、一瞬だけでも動きを止められれば、それで良かったからだ。


「グッ……! 小癪な!」


 果たして明乃の目論見通り。男は自身にまとわりつく力場を前に、ほんの一秒ほどではあるがその動きを止め――全身から気を勢いよく噴出させることで、不可視の力場による拘束を振り払う。

 拘束から抜け出した男は、明乃に殺意の籠った眼差しを送りつつ、戦闘中であった理奈に改めて飛び掛かる。だが、しかし。


「明乃ちゃんナーイス! これで――」


 一秒、そう一秒だ。男は明乃の拘束を抜け出すのに、それだけの時間を使ってしまった。

 未熟者(アマチュア)同士の戦いならいざ知らず、ある程度熟達した者同士の戦いにおいて一秒という時間はもはや致命的と言っても過言ではない。

 現に理奈は今、明乃が稼いだその一秒を以て、強力な魔法(おおわざ)の発動準備を完了していたのだから。


「方陣展開、隔離完了!」


 地を蹴った男の足が、宙に浮くのよりも早く。

 理奈が指先に挟んだカードが光を放つと同時に、男を囲い込むかのように透明な壁が現れる。一辺が3mほどの大きさをした、立方体型の結界だ。


「消し飛べぇ! 〈エクスプロージョン〉!」


 そうして外界より隔離されたその結界の中央部に存在する、光り輝く小さな球体。

 理奈が術式の名前を叫ぶと、その球体から周囲へと眩いばかりの光が溢れ出し。

 結界の内部が白い閃光で満ち、次いで轟音が響き渡った。

この世界、生体技術についてはやけにハイレベルなので俗に言う嘘発見機的なアレも進化しています。

どうしようもない時は脳に電極ぶっ刺して直接情報引っこ抜くという荒技もあります。

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