第1話
頭上に広がる白い銀河。
唯一無二の時間が僕とあいつの間で流れる。
あいつは僕の顔を見てこう言うのだ。
「ねぇ。○○○。」
❛ ❜
五月蝿いほどの朝日が僕の顔を照らす。その眩しさにたまらず僕は目を開けて時計の方へ目を移した。
時刻は8:00。
いつも通りの時間に目が覚めた。目覚まし時計で起きるよりも朝日によって起きるほうが体に良いとされているらしい。科学的には良い目覚め方とされている目覚め方を毎日しているが、僕の中では目覚める事自体があまり嬉しいことではないのでどちらでも良かった。
重たい体にムチをうち、1階のキッチンへと足を運ぶ。
僕の住んでいる家は2階建てで1人で暮らすには持て余すほど大きい家だ。僕の能力を国が研究しているらしく、研究に手を貸す代わりにこのデカい家と毎月100万円が支給されている。この家は一級建築士が20年かけてデザインした家らしく、現代アートが散りばめられたとても洒落れで、なおかつとても便利な家だ。
キッチンについた僕はIHのコンロに火をかけ、フライパンに油を引いた。
満面なく油を広げた後、冷蔵庫から卵を2個ほど取り出しフライパンに卵の中身を生み出す。真ん中から少々ずれた黄身と炎が卵をいたぶる音が僕の食欲を増加させる。もうすぐ、目玉焼きが完成する。その瞬間、僕の食欲を遮るように邪魔が入った。
ピンポーン
チッ‥思わず心の中で舌打ちをしてしまう。急いで未完成の目玉焼きをお皿の上に移し、ドアの方へ進む。
ピンポーン
厚かましいやつだ。少し遅れたからって2度も押すことはないだろ。そう心の中で呟く。
ドアの前に立ち止まり、ドアについている小さい窓から外を見てみる。厚かましいやつの正体はあいつだった。
ガチャ、ドアを開けた。
「遅いよー!1回目で出てよ!」やつは元気な声で言った。
「仕方ないだろ!朝ご飯を作ってたんだ。それに、朝なのに声がデカい‥」
「おっ、私の為にはご飯作ってくれてたんだぁー。ちょうど今日は食べてないんだぁー。」そう言いながらやつはズカズカと家の中に入ってくる。
別に君のために作ってるわけじゃないよ。と、言おうと思ったが、朝から口論はしたくなかったので言うことをやめた。ズカズカと家の中に入っていくやつのあとを追いかけて僕はリビングに行った。
「ふぃ〜。疲れたー。」そう言いながらやつは家のソファーに深く腰を落とした。
「いやー。いつ見てもこの家いい家だね。こんな家に将来住んでみたいなぁー。あっ、私珈琲ね。」笑いながら言う。
「ったく、わかったよ。」
僕はそう言ってからキッチンについているカウンターの下の引き出しから珈琲の粉をコップに入れ、お湯を沸かそうとポットの中に水道水を入れ電源を入れる。他の環境音が聞こえなくなるほど大きな音をたてながら、ポットは自分の役目を果たそうと働いている。その大きな音は割と嫌いではなかった。
パンッ、ポットが役目を果たした音がなった。
珈琲の粉を入れた2つのコップに、お湯に入れながら僕はやつにこう言った。
「高畑の仕事は順調なの?」そう、やつは高畑と言うのだ。
「あー、ふふっ。私の仕事知ってて言ってんの?私はあなたの能力に迫るジャーナリストなのよ?九条くんがどうなるかによって私の仕事の進展具合は変わるのよ。だからすべては九条くん次第なの。」
「僕次第って…」そう言いながら僕は机の上に珈琲をのせた。
「おっ、ありがとう。どれどれ今日の珈琲はどんな味かな?んー、100点!いつも通り美味しい!」笑顔で僕の方を見つめながら言った。
「まぁ珈琲だけは自身があるからね。」誇らしげな顔で僕は言った。