2.無二の親友
イタイイタイイタイイタイ
クルシイクルシイクルシイクルシイ
なんでこんなことするの?
私たちが何をしたというの?
私たちの声は誰にも聞こえない。
怨嗟の声は私たち仲間にだけ聞こえる。
その声が私たちの憎しみを、憎悪を膨らませる。
《 ……! ………! 》
この場にいない、私がバカだから……はぐれてしまった。
いつも私を助けてくれた、一番大切な、親友。
なにを言ってるの?
声が聞こえない。
ねえ…………泣かないで…………
私は、死、なな……い、よ…………
たった、ふたり、き……り、の……く、らや……み…………
曖昧だった意識が一気に浮上した。
まるで星の綺麗な夜に、風の妖精の生み出した風にのって遠くまでとんだときのように。
ああ、私の親友。
いつも怖がりの私の手を握って《 大丈夫だよ 》って言ってくれた。
あの頃はまだ仲間たちが一緒だった。
なんで明るいの?
私は…………な、ぜ…………光ってるの?
私、は…………
《 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!! 》
私は暗の妖精!
ちがう、ちがう!
私は光の妖精じゃない!!
ちがうわ!
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう…………
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ…………
だれか、たすけて……!!
《 お、……て…… 》
かすかに親友の声が聞こえた。
弱々しいその声に一瞬、呼吸がつまった。
光が、私の放つ光でまわりが見えない。
《 おち……て 》
私を、誰かが、だきしめて、い…………る?
この温もりは、私が一番安心できる親友、の…………
我にかえると共に、さぁぁぁっと青ざめていく。
暗の妖精にとって、対極に位置する光の妖精が放つ光は身を焼く苦しさ。
親友が大ケガをしたのも、私たち妖精を捕まえようとした人間にうまれたばかりだった光の妖精が最大限の目くらましをお見舞いしたからだ。
私は親友が見つけた木の洞に運良く逃げ込めたから助かった。
洞の中で2人、身を寄せ合い、息を潜めて隠れ続けた。
外では仲間の悲鳴が響き続けていたから。
静かになって、それでも親友が《 でちゃダメ 》って言ったから出なかったの。
そうしたらまた悲鳴が聞こえた。
怖くて耳を塞いだら、親友が抱きしめてくれた。
外から聞こえる……「隠れて待っていれば出てくると思ってたぜ」という言葉。
静かになれば出てくる…………私も、そう。
親友が止めてくれなければ《 もう大丈夫 》って飛び出して捕まってた。
《 ちょっとだけ 》って外を覗きに行ってたかもしれない。
でも、親友はケガしてたの。
私をかばって、洞の中に飛び込んだときに。
手足も背中の火傷も、少しでも動けば痛いのに。
運良く洞の底に溜まった樹液がゆっくり傷を癒してくれている。
私は親友が抱きしめて飛び込んでくれたから……服の端っこがちょっとだけ焦げちゃった。
でもそれで済んだのは、親友が代わりに強い光から盾になってくれたから。
ずっと、ずぅっと。
私たちは洞の中で隠れていた。
親友の傷が痛まなくなったみたいで、呻き声は聞こえなくなった。
それに安心しちゃったんだ。
だから…………親友の言葉を忘れちゃったんだ…………
꒰ঌ♡໒꒱
私たちは暗という種族らしい。
夜、草木も生き物も睡る。
その時間を穏やかに過ごせるように安らぎを与える。
そんな妖力が備わっているそうだ。
そんな私は、親友とは生まれたときから一緒だった。
私たちが生まれた200年前。
魔導具の発展と共に夜は薄れていった。
そのころ、夜を司る聖霊のひとりが死を迎えた。
何があったのかはわからない、だって私たちに寿命はないのだから。
夜が薄まったために弱ったのが原因とも言われている。
昼(光)と夜(暗)の均衡が魔導具によって崩れたからだと。
私たちは、その聖霊から生まれたカケラらしい。
妖精は最初、神や聖霊から生まれる。
そして何らかの理由で死を迎えたら、生まれかわる環境にあった妖精となる。
「四大元素の妖精が多いのはそのせいね」
のちに出会った聖魔師がそう納得していた。
そのときの説明で、暗の妖精は同じ妖精に生まれ変わるのが難しいことも知った。
光の妖精は雷、主に落雷から生まれるのに対し、暗の妖精が誕生する条件の『真の暗闇』はどこにも存在していない。
洞穴や土の下、室内や木々の暗がり。
そこには必ず四大元素が共にあるそうだ。
落雷に生じる暗闇ですら、空気という風が共にある。
そのため、風の妖精が生まれる可能性が高い。
……私たち暗の妖精は、夜を司る神や聖霊が死なない限り増えることはない。
そのせいで、ほかの妖精よりは少し頑丈にできている。
そう先輩の妖精たちに教えられても、理解できなかった。
それを実感したのは、暗の妖精たちが住む里から旅立ってから。
私たちは種族が少ないから、世界に広がって生きていかなくてはならないらしい。
…………親友は広い世界に夢見ていたけど、私にはそんな気楽な夢や思いはもてなかった。
《 妖精は、そこに存在することで周囲に恩恵を与えられる 》
私たちの役目は『安らぎを与えること』。
目に見えて発揮される妖力ではない。
だから、ほかの妖精たちから蔑まれることもある。
私と親友は移り住むたびに周りから蔑みの目で見られるようになった。
《 暗くなったら寝るだけ。疲れは寝たら取れるでしょ。安らぎなんて本当に与えてるのー? 》
目に見えないからこそ理解されない、分かってもらえない。
無関心で心ない周囲の言葉に親友は心を病んでいく。
その度に、私たちは風にのって新たな地へと渡っていく。
そしてたどり着いた、緑豊かな国。
そこには妖精たちの集落があった。
差別もない、私たちのことも暖かく受け入れてくれた。
穏やかな日々は、親友の心も癒してくれた。
《 ねえねえ、昨日雷が落ちたところまで行ってみようよ 》
前日の豪雨で、近くの森に落雷があった。
今朝から、妖精たちが落雷痕を探しに行っている。
そこに何かがある、というのでもない。
ただ、《 面白そう 》なだけ。
親友も多分、そんな感じだったんだろう。
だけど……
《 やめた方がいいよ、人間が集まってる可能性があるから 》
止めた私に親友は不満顔。
でも《 人間が集まってる 》との言葉に表情が暗くなる。
人間が妖精たちを捕まえている話を聞いている。
……捕まった者たちは誰も戻っていない。
私たち妖精を殺せばただでは済まない。
傷つけても国単位で神の罰が与えられるという。
だからと言って自衛は大切だ。
それを私たちは誰もが知っている。
この集落は、傷ついた妖精たちが集まってできた場所なんだから。
……だから、親友の姿が見えなくなって慌てて森の中へ向かったんだ。
森の奥を目指して、でもどこにもいなくて。
涙が溢れた、最悪な結果が脳裏をかすめる。
泣きそうになりながら、それでも泣いている暇はない。
急に大きな妖力を感じた。
……光の妖精の妖力の暴走!
私たち暗の妖精にとって、対極に位置する光の妖精の強い妖力は全身を焼くくらい強力で、下手したら消滅するか。運が良くても〈妖精のたまご〉まで戻ってしまう。
親友を残して死ねないし、親友を喪いたくない!
光の熱源から少し離れた位置に親友の姿を見つけた。
光の輪は確実に広がっているのに親友は、ううん、ほかの仲間たちもその場から動けなくなっていた。
人間が持つあれ…………何かわからないけど、それが人間共々光の中にのみこまれた。
それと同時に私の《 逃げろ!! 》の声に反応したのか、みんなが一斉にその場から逃げ出した。
親友は振り返って、私の姿に驚いた顔をして止まったままだった。
腕を引いて、木の洞の中へと飛び込んだ。
…………背中が熱い。
洞の中は深くなっていて、底に樹液が溜まっていた。
正確にはこの樹が地下から吸い上げた水分に樹液が混じったのを溜めていたのだろう。
その樹液の中に落ちた私は、ゆっくりと癒されていく。
親友はどこも痛いところはないようだ。
ずっと私につきっきりで隣にいてくれている。
最初は静かになったから外に出ようとしていた。
集落に戻って、誰かを呼んでくるつもりらしい。
でも、さっきの人間たちがどこかに隠れていて、私たちが出てくるのを待っているかもしれない。
そう言って止めたら、泣き顔で隣に戻ってきた。
安心させるように抱きしめたら、親友は疲れていたのかすぐに眠った。
……私はずっと痛みが脈を打つように押し寄せるから眠れなかった。
《 行ってはいけない 》って言ったのに。
怖がりだからひとりで行かないって思ってたのに。
なんで、あなたはケガひとつしていないの?
なんで、私がこんなに苦しまなければいけないの?
痛いのに……私は寝られないのに…………ナゼ、アナタハ……
そんなときだった。
外から叫び声が響きわたった。
悲鳴が轟く。
飛び起きた親友が私にしがみつく。
…………その痛みで我に返った。
私は親友を恨んでなんかいない。
洞に飛び込んだときに傷だらけの私を見て、一生懸命に妖力を使って癒そうと頑張ってくれた。
眠っていたのも、妖力を限界ギリギリまで使って疲れたから。
人間が何らかの魔導具を使ったんだ。
でも、疲れて眠っていた親友には影響が出なかったみたいだった。
親友は外にでたいなどと言い出さなくなった。
痛みのひいた私の手をいつも握りしめて離れなかった。
それでも、少しずつ。
繋いでいた手を離すようになった。
少し広い洞の中で、幹をのぼる水の音を聞いたり、何かが地下へ流れていく不思議な感覚を味わったり。
いままで知らなかったことを感じて、新しい遊びを楽しんでいた。
ときどき外の様子を伺い、木々のざわめきに怯えて私の腕の中へ飛び込んでくる。
そんなある日…………
少し深く眠っていた私が目を覚ますと……
親友はどこにもいなくなっていた。
꒰ঌ♡໒꒱
動けば痛む身体で、必死に集落へと戻った。
…………ううん、そこにあったはずの集落はすでに壊されてなくなっていた。
気力をなくした私は、そのまま地面へと落下していった。
ここに戻ったのは、親友が私の助けを求めて戻った可能性があったから。
その可能性は、どこにもない。
親友を探す手掛かりも……ない。
ぽよん。
ぽよん、ぽよん。
小さなスライムが近寄ってきた。
魔物にしては、小さい。
敵意のないそのスライムの1体に、私は…………丸呑みされた。
ここはどこなのか。
全身傷ついてたまま無理矢理飛んで帰った私は、どこにも痛みを感じていなかった。
焼け落ちて失った手指は元に戻っている。
帰る途中でぶつかってできた切り傷も消えている。
まるで夢だったようだ。
「あ、起きた? 痛いところとか、ない?」
不意に聞こえた人間の声。
飛び起きた私から離れた場所に女性が座っている。
そのまわりには……集落に住んでいた妖精たちが敵意のないまま思い思いに過ごしていた。
ぽよん。
ぽよん、ぽよん。
意識を失う前に見た、小さなスライムたちが私の前に出てきて左右に揺れる。
この人は信じていいよ。
私たちを守るために聖魔師になってくれた人。
「ピピン、リリン。どこか痛いところないか聞いといて」
女性の言葉にスライムたちは返事をするように上下に揺れる。
《 ねえ、エミリア。私も話していい? 》
オレンジ色の髪の妖精、たぶん火の妖精の中でも上位種の女の子が女性から「起きたばかりだから疲れさせないでね」と言われて近寄ってきた。
火の妖精は、自分が助けられたときの話をしてくれた。
そのときに捕まった妖精たちを助けてほしいと頼んだこと。
それに協力するためにここまできてくれたこと。
この火の妖精は私と親友が来る前に集落に住んでいたらしい。
そのため、女性を集落まで連れてきたそうだ。
《 ここはね、エミリアのテントの中なんだよ 》
人間のテントには『来客用』という部屋があり、そこなら誰でも自由に出入りできるらしい。
その部屋を、集落を破壊された妖精たちに解放してくれているそうだ。
《 ここは洞窟でね、そこにテントを置いているの 》
洞窟の入り口にも結界石で結界が張られているらしい。
魔導具は妖精には効かないものの、結界など一部のものは弾かれるらしい。
だから洞窟に出るのは可能だけど、洞窟からは出られない。
結界が張られていても外からは中が見えるため《 洞窟に出るときは気をつけてね 》とのこと。
目隠しがわりに荷物が置かれているため、そこに隠れて周囲を確認するように注意された。
《 ねえ……私も連れて行って 》
親友がいなくなったことを話したら、捕まって王都にいる可能性が高いと返された。
だから、私も行きたいと頼んだ。
《 親友なんだ。捕まっているんだったら早く助けてあげたい 》
回復してもらえたけど、すぐに動けない身体。
それでも、親友を助けたい。
足手まといになるのは分かってる。
ここで待っている方がいいことも。
でも……!
「何が待ってるかわからない」
その覚悟はある?
女性にそう言われて、まっすぐ見返した。
《 ある 》
女性がたてた計画は『真っ正面から乗り込む』というものだった。
鳥籠の中に私たちが入っていれば、調べられても「妖精を捕まえてきた」と証明できる。
……体力が戻っていない私でも、横になったまま連れて行ける方法を考えてくれたんだってすぐに分かった。
ぱったーん。
女性が倒れた。
慌てるスライムたち。
女性は記憶をなくし、その弊害で長く起きていられないらしい。
私が戻る前にも8日間、眠り続けていたらしい。
…………このときは数時間で目を覚ました。
「やることやってから寝る」と言って。
꒰ঌ♡໒꒱
人間たちの前で、私たちは泣きまねをする。
心配で本当に泣いている子もいるし、怯えて抱き合ってる子たちもいる。
見られている、その視線は男の人間からだった。
どこかの部屋に入れられて開口一番、私たちを何故連れてきたのかと声を荒げていた。
私たちが内側から開けて外に出ると、ぽかーんとした表情で固まったけど。
人間の中にも、妖精の味方がいる。
この人もそうだったらしい。
助けてほしい、と訴えた妖精たちが、男を妖精の輪で安全な場所へと送った。
そこは、女性が一瞬思い浮かべた場所が安全と思われたから。
ここで二手に分かれることになった。
私が親友に似た妖力を感じたから。
《 こっち 》
あの男から助け出された妖精が、自分たちが閉じ込められていたという部屋に案内してくれるらしい。
女性たちは多くの気配がある塔へ向かうそうだ。
《 あああああああああああああああ!!!!!! 》
全身が震えるような叫び。
《 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!! 》
親友?
ううん、違う。
でも…………気配は違うけど、間違いなく親友だ!
部屋に飛び込もうとしたものの、部屋は固く閉ざされていた。
《 開いてっ!! 》
扉を叩いても開かない。
そのときだった。
部屋の中から、光の妖精の妖力の暴走する兆候を感じた。
《 みんな、隠れるよ! 》
叫んだ風の妖精が私たちを風で吹き飛ばす。
さっきまで私たちがいた部屋だ。
一瞬の静寂のあと、空気が震えると同時に大きな爆発音が聞こえた。
《 ……だい、じょぶ? 》
私たちの逃げ込んだ部屋は天井が崩れた。
でもそこは重力を使える私がいるし、風や地の妖精がいるからケガはしていない。
ただ、砂ぼこりが舞い上がっているため、視界が塞がれているだけ。
それも風の妖精が吹き飛ばしてくれた。
そぉ~っと、みんなで扉が吹き飛んだ部屋の外を覗く。
叫び声は続いている。
…………暗の妖精の気配ではない。
でも、間違いない……………………親友の気配だ。
近づくと、さっきよりもハッキリ聞こえる叫び声。
扉が内側から吹き飛んでいた。
中で叫んでいたのは……種族はかわっているけど、私の大事な親友。
怖がりで、泣き虫で……いつも、私じゃないと落ち着かせられない。
天井に近いあかりの器具だったと思われる、割れて砕けたその中で怯えて泣いているのは……色がかわっても変わらない、いつもの親友の姿。
《 おちついて 》
いつものように抱きしめて宥める。
それでも全身の震えは続いている。
《 おちついて 》
何度も声をかける。
心の底から搾り出すように聞こえ続ける《 たすけて 》の声。
光の妖精の妖力は、対極に存在する私にとって生命を削る危険なもの。
《 あぶないよ 》
《 離れて! 》
みんなの声が聞こえるけど、混乱している親友を救えるなら……私はどうなってもいい。
ずっと抱きしめて声をかけ続ける。
どれくらい経ったんだろう。
悲鳴は消え、啜り泣く声と謝罪だけが聞こえていた。
《 ごめんなさい、ごめんなさい 》
落ち着いたことに安心した私は親友を抱きしめたまま……意識をうしなった。
꒰ঌ♡໒꒱
我に返って謝っていた私に、親友は安心したように微笑むとそのまま目を閉じてしまった。
《 イヤッ! 起きてっ! 目を開けて! 》
叫んだ私に知らない妖精たちが《 落ち着いて 》と口々にいう。
《 大丈夫 》だと、《 一緒にきた人間が助けてくれる 》と。
《 人間なんか信用できない! 》
そう叫んだ私に、その人は聖魔師だと教えてくれた。
ここへは私たちを助けるために一緒に来たのだと。
そして、傷だらけだった親友を癒してくれたのも、その聖魔師なのだと。
《 たすけ、て……くれ、る? 》
親友にしがみつく私に、全員が頷く。
さっきまで傷つけられていた仲間たちにも、助けてくれると安心させている。
信じてみよう。
そう思えた瞬間、私たちは淡い光に包まれた。
閉じていた目を開くと、そこは異常な状態だった。
人間たちが庭から伸びた土の手に掴まれて空にいた。
ぽよん。
ぽよん、ぽよん。
ハッとしたら、小さな魔物が……!
《 助けて! 》
《 この子が一番ひどいキズなの! 》
一緒に光に包まれた仲間たちが、魔物に向かって口々に救いを求める。
私が支える親友を一番先に助けてほしいと訴える子もいる。
……何故?
敵じゃないの?
そのスライムたちは器用に瓶を傾けて、傷ついた仲間たちにかけていく。
ドボドボドボ。
親友にはこれでもか、という量を頭からかけ続けた……
《 ちょっっ! 》
慌てて止めようとした私の腕の中で、親友が虹色に輝く。
……私がつけてしまった(と思う)親友のキズが、火傷が……癒されていく。
驚きからか、感動からか。
震える私の耳に、その声が届いた。
《 ない、て、る、の? 》
向けられる、かわらない優しい目。
その瞳に映る私の姿は、もう…………
《 これからも、ずっと、親友、だよ 》
どんなに姿がかわっても。
꒰ঌ♡໒꒱
私たちはエミリアと共に行くことを決めた。
集落で一緒に暮らしていた白虎も一緒に。
集落を失って、白虎の行き場もなくなったから。
地の妖精が世話をしていたから、離れたくなかったらしい。
聖魔師の庇護に入れば、いままでみたいに逃げ暮らすこともない。
集落は、落雷直後にたくさんの妖精たちが捕まったため、近くに集落があると気付かれたらしい。
…………全部、あの日《 行っちゃダメ 》と言われたのを聞かなかった私たちのせいだった。
私たちは……罰を受けたんだね。
私たちがいた国は滅びていく。
犠牲になった妖精が憎み、怨んでいるから。
その思いは……ある妖精ひとりが集め続けている。
あの感情を胸に生まれかわれば、妖精は瘴気の核となり、世界を呪う存在になるから。
…………きっと、もうすぐ。
そこに、私たちを助けた聖魔師を巻き込むことはできない。
だから、私たちをつけて隣国へと逃す。
ここに残るみんなも、あとから脱出する。
あの妖精は、私たちを襲うことはしない。
でも……寄り添うことを拒否している。
ここの集落は、あの妖精に少しでも寄り添うためにつくられた。
それが壊されたいま……国の崩壊まで時間は残されていない。
送られた国にある特殊な町。
神の眷属に守られた、平和な町。
さまざまな人たちと出会った。
神獣たちとも出逢った。
この出会いが妖精の存在が世界に知られると同時に、信頼されて高い位置に押し上げられるようになるとは思わなかった。
アラクネとの出逢いから、私たちに『簡単に死なない妖精服』が出回って、作業着などに着替えたりオシャレしたりという楽しみも知った。
私たちが見えるようになる前から仕事を任せてくれ、気がついたら姿が見える魔導具が出回って、責任のある仕事まで任せてくれるようになった。
それも、エミリアやダイバとの出逢いがあったから。
瘴気の核になりかかっていた妖精も救われた。
あの集落で別れた仲間たちとも再会した。
私たちはもう、『儚い存在』ではない。
〈余談〉
「名前、何にしよっか。ヒカリ、ライト」
《 ひ、か、い? あ、い? 》
「あれ? 『ラ行』が言えない? 言いづらいのかな?」
《 泣きすぎてアゴが疲れたんだね。そのうち言えるようになるよ 》
「じゃあ、言いやすいように『アイちゃん』にしようね。愛や私にも通ずるし。『私を愛する』って意味も込めて」
新しい名前をもらって、みんなと仲間になれたけど……
その名のとおり、私はいつか自分を愛せるだろうか。
親友を二度も傷つけた、私を。
《 アイちゃん、これからもよろしくね 》
《 うん、クラちゃん 》
ギュッと抱きしめてくれる親友、クラちゃん。
クラちゃんのこの腕が私を包んでくれるなら、私はいつか愚かだった自分を許しても良いのかな。
いつの日にか、きっと……
〈了〉




