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世知辛い世の中だ


朝の陽ざしで目が覚めた。

背伸びをして体をほぐし、頭が回り出したことで、ふと気が付いた。

なんと、ポケットに入れていたお金が無くなっていたのだ。


「まさか、スリにでも会ったのか!?」


一応確認のために、すべてのポケットをひっくり返して確認してみたが、コインの1枚も持って無かった。

どうやら寝ている間に盗まれてしまったみたいだ。


「なんてこった…」


大した金額では無かったのかもしれないが、一生懸命稼いだお金が無くなってしまったことによる怒りが沸いたが、不用心にこんな所で寝ていた俺も悪かったのかもしれない。

次からはもう少し気を付けることにしようと思った。それにしても、ポケットを漁られたのに全く気が付かないとは、どんな技術なんだ!?

改めて異世界は怖いなと思った。とりあえず殺されなかっただけでも良しとするしかないな。


「よし、昨日の分も取り戻すぞ!」


俺は朝の水分を補給し、気合を入れて街の外へ向かうことにした。



・・・・



街の外へとやって来た。今日は薬草を中心に採取していくつもりだ。

確か薬草の形は…一番採取出来たのが毒草で、次に多いのが腹草、一番少なかったのが薬草だったな。よし!

薬草は数が少ないとは言え、5mに1本くらいは生えていたので、草の形も特徴的だし、それほど苦労はしなそうだ。

俺は薬草だけに絞って採取していく。


途中で3回ほどスケルトンに遭遇したので戦闘になったが、必殺パンチとキックで問題無く撃破することができた。

相変わらず目の前で枯らされる行為をされないと発動しない必殺技だったのは謎だけどな。

俺がやった戦闘とは別に、所々で戦闘跡(枯草)を見かけることがあったが、その度に治して行ったので、折角増えた回数も残り15回まで減ってしまったのはご愛敬である。


「ん?」


向こうに青くドロドロとしていた塊が有った。アレは何だ?

そいつを観察していると、突然ブルブルと震えたと思ったら、液体を周りにバラまいた。


「なっ!」


ばら撒いた液体が草にかかると、その草が煙を上げて溶けて行った。


「酸か!?」


もしかしたら酸で溶かしてから食事をするのかもしれないと思ったのだが、単に溶かしただけみたいだ。


「自然を破壊する奴は許さん! 変身!」


俺はベルトへアタッチメントを装着した!


カッ! 


まばゆい光を発し、戦闘員へと変身する。


「キー!(とぅ!)」


俺は怒りを込めて、ジャンプキックを繰り出した。


ぽよん♪


「なんだと!?」


俺のキック怒りを込めたにも係わらず、何も起こらなかった。

普通のキックとなったためか、風船を蹴ったような感じで、弾き返されてしまった。パンチを繰り返しても同様の結果だった。

謎の物体は、俺を嘲笑うかのように、再びブルブルと震えて、液体を周りに飛ばした。


「キキー!(危ない!)」


俺は間一髪でその液体を避けることに成功した。

そしてその液体は、再び周りの草を溶かして行った。


「ウキキッ!(ゆるさん!)」


俺は怒りのパワーを右足に込め、必殺キックをお見舞いする。


ドカーン!


見事、謎の物体を倒すことが出来た。

この戦闘でひとつ分かったことが有る、同じ敵にも係わらず、変身前の自然破壊に対する怒りでは、俺の必殺技が発動しなかったことだ。

変身してから自然破壊をされると、怒りが爆発し、必殺技となるみたいだ。と言うことは、自然の無い場所では発動しないってことになるのか!?

何とも使い勝手が悪い必殺技なんだ…


謎の物体が爆破した後には、やっぱり魔石が落ちていた。ただ、スケルトンの魔石より一回り大きい気がした。

俺が魔石を掴むと、やっぱり輝いて、ベルトへと吸収されてしまった。


『25』


「ウキ?(ん?)」


今数字が25になったよな、もしかして謎の物体を倒すと10増えるのか? これは良い敵かもしれない。

俺は変身を解いて落ち着いた所で、溶かされた草のことを思い出した。

別に忘れていた訳では無いのだが、さっさと治してあげないと可哀相だ。俺は溶けた草の所へ向かい、力を使った。


『24』


だが、溶かされた草は戻ることが無かった。どうやら完全に溶かされてしまった場合は、復活することが出来無いみたいだ。


「そ、そんな…」


俺は膝からガックリと崩れ落ちた。


「あれ?」


そこで気が付いた。あの液体で草は勿論のこと、土まで駄目になっていたみたいだ。でも、草は駄目だったが土は復活したみたいで、ふかふかの黒い土へとなっていた。

これならば、時間が経てば元通りになるのかもしれない。俺は一安心した。もう1ヶ所の溶かされた所へ行き、力を使った。


『23』


「これで良し!」


ふかふかの黒い土になったことを確認して、俺は満足するのだった。

その後も薬草の採取を続け、そろそろ日も暮れそうなので戻ることにした。



・・・・



冒険者ギルドに向かいながら、今回採取した薬草を数えてみた。


「全部で153本か、1本鉄貨1枚だから、銅貨1枚と中銅貨5枚、鉄貨3枚だったかな?

 6日同じ数だけ撮れるとしても、銅貨9枚と中鉄貨2枚くらいか? ってギリギリ足りないじゃん!!」


これは本格的にマズイかもしれない。街中の野宿は危険も有るし、いっそのこと夜通し採取をするのも手か?

俺は改造人造兵器だ、眠ると言う行為も嗜好なだけで、別に眠らなくても平気な体に改造されている。

昨日の夜寝たのは、人間だった時からの習慣だったからだ。


「そうだな、寝るのはお金に余裕が出来て、安全に寝れる場所が出来てからにしよう。」


そうと決まれば、冒険者ギルドへ行ってさっさと売ってくることにしょう。



・・・・



冒険者ギルドへ到着し、納品カウンターの列へと並ぶ。

俺の前の人の買取をボーっと眺めていると、査定金額が聞えてきた。


「魔石が5個、薬草が10本だから、銅貨5枚と中鉄貨1枚だな。」


ん? 銅貨5枚? 魔石ってそんなに高く売れるのか!? マジかよ…

俺には出来ない稼ぎ方に愕然とするのだった。


「次!」


前の人の会計が終わり、俺の番になった。

カウンターに薬草を置いた。


「買取を…」


「なんだ、元気ないな。どうしたんだ?」


「ちょっと現実を突きつけられて、ショックを受けているだけだよ。」


「まぁなんだ、頑張れよ?」


慰められてしまった。


「今日も薬草か、今回は全部薬草みたいだな。」


男はそう言って状態を確認しつつ数えている。


「全部で153本だな、銅貨1枚と中鉄貨5枚、鉄貨3枚だな。」


俺はお金を受け取った。

用が済んだので離れて良いのだが、ちょっと聞いてみることにした。


「ちょっと聞いても良いか?」


「何だ。」


「魔石って幾らで買い取ってもらえるんだ?」


「魔石も持って居るのか? なら出すと良い。」


「いえ、持ってないです。」


「何だ、持ってないのかよ。まあいい、この辺で取れる魔石なら、スケルトンは銅貨1枚、ホーンラビットなら銅貨2枚、スライムだと銅貨4枚だな。」


何てこった、もし魔石を持ってこれたのなら、俺の今日の稼ぎは魔石と薬草で、銅貨8枚と中鉄貨5枚、鉄貨3枚になったのか!

昨日の分も合わせたら今日で借金が返せる計算になったのか……今更だけどな。


「そうだったんですね、ありがとうございます。」


「お、おう。」


俺のショックな顔を見て、男は少し気の毒そうな顔をしていた。

用事も済んだので、俺は冒険者ギルドを後にすることにした。


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